第2話 ステータス
『ニコ・オルライト』
Lv.5
力 11
防御 7
賢さ 8
敏捷 10
運 5
魔力 6
《スキル》 【ゾンビ使い】
『ゾンビ』
力 1
防御 1
賢さ 1
敏捷 1
運 1
魔力 1
「なんだこれ…………」
ニコは平原を歩きながら、いきなり布に浮かんできたこの文字について考えていた。
えらく無機質な字だ。スピカの文字でもない、機械的な字。
そんな文字が突然布の裏に出てくるなんて。
これは自分の今の状態について表しているのだろうか。
力は――多分そのまま力の強さを表しているんだろう。
防御は、体の強靭さみたいな? 賢さって……なんかよくわからないけど、かなり少なそうだぞ……まあ僕バカだしな……。
何より謎なのは「Lv.5」の文字だ。なんだ、レベルって。
自分のランクみたいなものなのか?
考えても何も分からない。それすらも、まだ『賢さ』が足りていない証拠かもしれない。
そう思ったニコは、もっと分かりやすい方を見る。
表の、スピカの文字だ。
『魔人族を倒して。そのために、まずは近くの村を目指すの』
魔人族というのは、《
強大な魔法量、翼をもち自由自在に空を飛ぶ、魔物を操るなどなど。とにかく強力な民族であることは有名である。
「その魔人族を滅ぼせって……」
一体どういう意味で言ったのかもわからない。そもそも、スピカが連れ去られたのは第三位のエルフ族のはずだ。
そもそもこれはいつ書いたんだ……? 攫われる前から、こうなることを予想して……?
何も分からないニコだったが、一つだけ確信できることがあった。
それは、これは確実にスピカの残したものであるということ。
「スピカ……生きているんだよな?」
たった一枚の布切れには温かみがある。
それはスピカのお母さんのもので、お父さんのもので、そしてスピカ自身のものだ。
錯覚かもしれないが、ニコにはそう思えてならなかった。
「なら、頑張るしかないよな」
布をお守り代わりに手首に縛っておく。
幸い、次に目指すべきところはスピカのおかげで分かった。
「近くの村だな……おっけー」
よし、進もうと思ったところで、ニコの足が止まった。
「近くの村って……アバウトすぎやしないか⁉」
前途多難なニコの冒険が、始まる。
ひとまず見えるところに村はないので、仕方なくではあるが森の中に入る。
この森は、平原よりも強い魔物がうじゃうじゃいる。
ニコが神官に見つかる前に戦っていた魔物はニコと同じくらいの強さだから、ニコのレベルが5であることを考えると魔物も同じレベルくらいなのだろう。
だがそれに対し、この森にいる魔物はその5,6倍は強いと聞いたことがある。
圧倒的にニコでは力不足だ。
だから見つからないように、慎重に行動する。
――が、しかし。
森に入って早々のことだった。
いきなり自分目がけて斧が飛んでくる。
「――っ⁉」
慌てて反射的に体を投げ出す。
するとついさっきまでいたところにズサっと斧が刺さった。
「キャキャキャキャキャ」
「ゴブリン、か⁉」
緑色の人型の魔物、ゴブリン。
大きさはニコの半分くらいしかないが、知性があり今のように道具を使って人を襲ってきたりする。
厄介な魔物だ。
「だが、一匹」
ふうっと息を吸うニコ。
ゴブリンは群れで行動する魔物だが、たまたま今は一匹。
戦うしか、ない。もとよりゴブリンより足の遅いニコに逃げる選択肢はなかった。
「やるしかないな」
震える声を抑えながら、パッと手を前に広げる。
すると、目の前に光が地面から湧き立ち、遅れて土がめくれ始める。
「来いっ、ゾンビ!」
ニコの声に呼応して一匹のゾンビが地面から姿を見せる。
緑色の死体。猫背でところどころ腐っていて、のろい。最弱と言ってもいい魔物だ。
これがニコに与えられたスキル『ゾンビ使い』
その名の通りゾンビを意のままに命令できるスキルだ。
「よし、いけゾンビ!」
ニコが言うと、のろのろと前進するゾンビ。まっすぐゴブリンの方に向かってはいるが、遅い。
だから、ゾンビのことは当てにしない。
「てやあ!」
ゴブリンの注意がゾンビに向かっている隙に、ニコがゴブリンの腹に蹴りを入れる。
「ギャアアアァアアア!」
ゴブリンは腹を抑えて悲鳴を上げる。
だが、その傷は致命傷には至らない。
「くそ、やっぱり力が足りないか!」
着地して口元に飛んだ土をぬぐうニコ。
平原の魔物ならこれで倒せたが、森の魔物はこれくらいじゃ倒れない。
そして今度はゴブリンの番だ。
「ギャッギャッ!」
手も使った4足で迫ってくる。
そのあまりのスピードにニコは木を壁にしながら逃げ回る。
「やっぱ速いなっ‼」
だが、距離はどんどん詰められていく。
――く、仕方ない。
「ゾンビ、僕を守れ!」
そう言いながらニコの方がゾンビに近づいていく。
ゾンビの速度は当てにしてはいけない。
ゾンビのほうまでゴブリンを寄せると、今度は飛び込んでくるゴブリン相手にゾンビが腕を振るう。
「ヴァー」
しかし、ゴブリンの勢いに負けたのはゾンビの方で、こてんっと転がってしまう。
ゴブリンの方は少し減速を強いられただけだ。
だが、その瞬間に。
「うおおおおぉぉぉぉおお‼」
ニコが木の枝をもってゴブリンの頭を殴りつける。
木の枝はゴブリンの目に刺さって今度はゴブリンも体勢を崩して転んだ。
「ギャヤヤアアアアアアア‼」
そしてそこをニコはたたみかける。
「うああああ!」
何度も何度もゴブリンを素手で殴って弱らせていく。不格好な戦い方だが、今のニコではこれが精いっぱいだった。
そして殴り続けること5分ほど、じたばたしていたゴブリンはようやく力尽きた。
「よしっ!」
脅威だったゴブリンを自力で討伐した。
その安心感から、ニコは尻もちをつく。
「はあ……はあ……」
ゴブリン一匹相手に酷く疲れる。これでは、2匹になった時点で殺されてしまうだろう。
その厳しい現実を受け止めながら、ニコはそれでも一匹を倒すことができてほっとしていた。
「ほら、ゾンビ。餌だぞ」
ゴブリンの死体をニコが無造作に放り投げる。
するとゾンビがゴブリンの死体を漁っていく。
皮を剝いで。その中にある肉をぐちゃぐちゃとかき回していた。
どういうことか、ゾンビは倒した魔物をこういう風に物色する習性がある。
「はあ……疲れた」
ゴブリンの肉を引きちぎるのに苦戦しているゾンビをなんとなく微笑ましい目で見ながら、ニコは一息ついた。
そこで安心しきってしまったニコは、最後の力を振り絞って木の葉を集めて周りからちょっとでも見えにくくすると、ゴブリンの死体から少し離れたところで眠りに入ってしまった。
ゾンビを近くの木の陰に隠れさせて、一応の用心をする。
夕日が沈む中、ニコは不安とほんの少しの達成感で眠りについた。
『ニコ・オルライト』
Lv.8(+3)
力 14(+3)
防御 9 (+2)
賢さ 10(+2)
敏捷 13(+3)
運 6 (+1)
魔力 7 (+1)
『ゾンビ』
Lv.1
力 1
防御 1
賢さ 1
敏捷 1
運 1
魔力 1
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます