#3

「「「おおおおおおおお……!」」」


 洞窟を見つけて、ぼくらは、驚きすぎて立ちすくんでしまった。

 何だこれ。こんな場所が、婆ちゃんちからほんの数分の場所にあったのか。

 三人とも、口をぽかんと開けている。


 これはアレだ。

 興奮しすぎて、かえってはしゃげなくなってる状態だ。


「ぼくらの……秘密基地だ」


 ケンゴが感動に震えている。


「最高だ」


 ぼくも震えてる。


「これは……すごいね」


 コータの声も震えていた。


「い、行くか」


 想像を超える光景に、僕たちはなぜか恐る恐る洞窟に近づく。

 洞窟の横には、小さな祠があって、そこにはタッパーに入った饅頭が供えてあった。


「この饅頭、婆ちゃんが作るやつだ」

「ということは、婆ちゃんはここのこと知ってるってことか」

「そりゃあそうじゃない?だってお婆ちゃんの山なんだし」


 とりあえず、三人とも祠に手を合わせる。

 秘密基地を見つけてくれて、ありがとうございます。


「なんか、封印されてるぞ」


 しめ縄を見て、ケンゴが言う。


「封印じゃなくて、『しめ縄』っていうんだよ、ケンゴ」


 コータが説明する。


「入ってもいいのかな」

「バチとか当たらない?」

「でも、婆ちゃんは祠の話はしてたけど、洞窟のことは言わなかったぜ」

「婆ちゃんなら、入っちゃダメならダメって言うと思う」


 ゴクリ。


「こ、ここまで来て、中を見ずに帰れねぇだろ!」


 ケンゴが意を決したように言う。


「だね。お婆ちゃんがこの場所を知ってるのは間違いないし、止めなかったってことは、入って良いんだと思う」

「子供の守り神だって婆ちゃん言ってたじゃん。大丈夫っしょ」

「行こう」


 ぼくたちは恐る恐るしめ縄をくぐる。


「失礼しまーす……」

「おじゃましま~す……」


 コータが挨拶するものだから、ぼくとケンゴも慌てて挨拶した。

 その声が洞窟に響く。

 中からひんやりした空気が漂ってくる。

 少し怖いけれど、わくわく感のほうがずっと強い。


 洞窟は、自然にできたものではないようで、床には石が敷き詰められている。

 ジメジメしているけれど、平坦なので歩きやすい。

 壁も石積みで、石と石の間から緑の植物がチラチラと生えている。

 この光景、何処かで見たことがあると思ったら、ゲームに出てくるダンジョンだ。


 ここが――――ぼくたちの秘密基地。

 

 興奮で息が詰まる。

 隣を見ると、ケンゴとコータも似たような表情をしている。


 さらに少し奥へ行くと、真っ暗でほとんど何も見えない。

 さすがにすこし不安になって、進んでいいかどうか迷うと、コータが「ねぇ」と声をかけてきた。


「洞窟入って、遭難でもしたら大変だよ。一度戻って、準備しよう」

「え、もう少しだけ……」


 渋るケンゴに「ダメだよ」と言って


「もし迷ったら大人たちが探しに来て、秘密じゃなくなっちゃう」

「そ、それもそうだな……」

「ぼくも同感」


 ぼくがが同意すると、ケンゴも渋々納得したようで、「戻るか」と答える。

 ひょっとすると、ケンゴも内心怖かったのかもしれない。


「この洞窟、危なくはないのかな」

「わかんねぇけど、周り全部岩じゃん。そう簡単に壊れないだろ」

「中で道に迷ったら、戻ってこれなくなるかもしれないけどね」

「いや、裏山そんなでっかくないし、そんな大きな洞窟じゃないだろ」


 言いながら、僕たちは洞窟……秘密基地から脱出する。


「「「はぁ……」」」


大きく息をはく。


と、


「ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 ケンゴが、ギュッと目をつぶり、手を握りしめてしゃがみ込み、


「いやぁっほぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」


 テンションが振り切れたようで、飛び上がって大声で叫んだ。


「いぃやっふぅーーーーーーーー!!!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ぼくとコータも叫んだ。


「何だこれ。何だこれ!何だこれ!!!!!」

「すっげー!すっげー!すっげー!」

「やべー!やべーって!」


 ようやく実感が沸いて、ぼくたちは叫んだ。


 こうして、ぼくたちは「秘密基地」を手に入れた。

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