1. New Year's Eve

 いよいよ、ガトリング砲が除夜の鐘を打ち鳴らす。外からは凄まじい音が響き渡った。

 ゴンゴゴゴゴンゴゴゴゴゴンゴゴゴゴゴン!!!

 新年のおごそかさもクソもない上にやかましくて仕方ないが、僕はそれどころではない。

 固まらないのだ。

 ソバの生地が。

 あまりにも固まらないので「どこで間違えたんだろうなぁ」と呟いた。すると間髪入れずに、万能アンドロイドの電子音がささやく。

「そもそもソバは、ソバ粉だけでなく、いくらか小麦粉も混ぜるんですよ」

「マジか」

「知らなかったんですか」

「知ってたら最初からこうならないんだよな。うわマジか。一気にやる気が無くなった」

 もう蕎麦なんて完全にどうでもいいし、煙草が吸いたい。

「そら。後、頼んでいいかな」

「わかりました」


 そらの返事を確かめて、キッチンを後にする。

 良い時代になったものだ。アンドロイドが年越しそばを作ってくれる。科学技術の発展が目覚ましいのは、良いことだ。


 外に出て煙草に火を点けると、いよいよガトリング砲の音をやかましく思った。まったく、どうせならもう少し威力の低いやつを装着ければよかったと後悔するが、後の祭りだ。

 住職が「右腕をガトリング砲にしてくれ!」と言い出した時は何事かと思ったが「除夜の鐘をガトリング砲でやったら楽しいだろ!?」と言われてしまえば「そうですか…」としか言えない。


 要するに、あのハゲは馬鹿で世も末ということだった。


 そう、文字通りの意味で、世は末だった。


 この五年で地球上の人間が八割以上死んでいる。



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