夢の隙間

春嵐

第1話

 起きて、仕事の準備。いつも通りの日常にするための、いつも通りの動き。

 彼がいなくなってから、3日目。ずっと一緒にいて、突然、いなくなるなんて。

 彼がいなくなってから、はじめて、自分は彼のことを全く知らないのだなと思い知らされた。名前も。所属も。連絡先さえも。


「食べ物の好みとかは分かるんだけどな」


 彼は料理が得意。好きな食べ物は海産物系。

 なんとなくつけたテレビ。

 大写しになる大きな魚と、なぜか彼。


『釣りましたあ』


「え。なんで?」


『恋人に内緒で、大物が釣れたら告白しようと思ってたんですけど』


 アナウンサーの中継。では、テレビ越しの彼女に向かって。告白を。


「えっ待って」


『好きですっ』


 録画しそびれたじゃないの。

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夢の隙間 春嵐 @aiot3110

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