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マドカ
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私は優秀な研究者と呼ばれ続け、無論結果も出してきた。
しかし、どう足掻いても私の残りの寿命に対し
今後研究し、開発したい事柄への時間が足りない。
今65歳だ、長生きしたとしても
私は自分の脳が老化することには耐えられない。
そこで私は、不死の薬の研究を始めた。
理論上は可能なはずなのだ、老化細胞の増加を止め、
細胞の劣化を阻止する化合物を作る。
ならば今現在65歳で私は私の老化を防ぎたい。
不死の研究を始めよう。
、、、、、、、、、、、、
完成した。
私は今73歳となった。
マウスでの実験は完了している。
マウスの平均寿命は約5年。
投薬したマウスはもう7年生きている。
尚且つ老いることはない。
あとは倫理の問題にもなってくる。
何事もそう、人体実験をしなければいけない。
自らの体を使うというのはリスクが高い。
飲んだ瞬間に何かしらの発作が起こる可能性はゼロではない。
何か手立てを考えねば、、
私はこの研究に関して世に公言するつもりはない。
自分のためだけの実験なのだ。
、、、、、、、、、、、、
「君が、36人を殺害し、死刑判決を受けた真下くんかね?」
「なんだてめぇ、、? あぁそうだ。 幸せそうに俺の目の前通り過ぎてたからよ。 目障りでしょーがなかった、爽快爽快」
ふむ、、、
特別なルートを使い、死刑囚で一番悪質な人を、と頼んだのだが
これは確かに人権の無駄遣いではあるな。
「後悔は?」
「ねぇな!!! 強いて言うなら下手こいて捕まったのが後悔さ!」
なるほど、、、
この男を実験体にしよう。
「わかった、君の見た目は30代後半かな?」
「おう、39だ」
「仮にもし、そこから老いることなくずっとそのままの体力で生きられるならどうかね?」
「はあ?何言ってんだてめえ、頭沸いてんのか?」
「そういう薬を開発していて、今ここにある。 もう実験は済んでいる。 どうかね? 何十年も老いながら死刑を待つよりも、健康に暮らしたくはないかね?」
「まぁもしそうなるなら、そうだなぁ、、、病気にはなりたくねぇし、何よりもシャバに出てえよな」
まぁここは嘘を重ねればいいだろう。
「飲むのなら私の権力を使い、君を外に出してあげよう」
「、、! おいおいマジかよ 飲む! 貸せ!!」
「すまんがこれを彼に渡してもらっていいかね? 上に話は通している。」
嫌な顔をしながら看守が
「先生の言うことなので、、仕方ないですが、、私は基本的に反対だと思っていてくださいね、、ほら、飲め」
「よーし、ん?これ全部飲めばいいのか? やたら多いな」
「作用が強い分そこはどうしてもな、、。 まぁ飲みたまえ。」
「うーし、ゴクンゴクン」
さぁここから経過観察だ。
どうなる?
「うっ、、、!!! 全身が痛てぇ!! ぐああああ!!!!」
目は血走り、体は真っ赤になり、失禁と脱糞をしている。
細胞の劣化を阻止する初期段階だ。
なるほど、順調ではある。
細胞分裂は毎秒起こる人間の生理現象。
それらを止めるのだから、人体が入れ替わることに近い。
「うああああああああ!!!!!」
「先生!?大丈夫なんですかこれは!?!?!?」
「静かにしてくれないか、私が一生をかけた薬の実験なのだ」
悲鳴と怒号が止み、気絶した。
脈を測る、ふむ、想定の範囲内だ。
重要な確認事項として
3点がある。
薬後に記憶を保っていられるか
人体への影響は何が起こるか
廃人になっていないか。
彼が起きるのを待つ。
、、、、、、、、、、、
「うーうーだーだー、うーうー!!」
目は天を向き、舌はだらしなく伸び
知能が著しく低下している。
そしてこれは副作用として想定外だったが、
39歳の年齢が
見た目が0歳の赤子になっている。
細胞の劣化を阻止する=若返りだったとは。
マウスが若返らなかった理由は?
そうか、投薬量の差。
ならば、ふむ、、、
40錠飲ませた計算がおかしかったな。
なるほど、私の場合は8錠飲めばいいな。
そして、この研究内容と実験結果を残せばいい。
この繰り返しが不死ではないだろうか。
神の領域に私は達した。
ありがとう、真下くん、いい実験結果だった。
塀の外に出すことは出来ぬが、成人するまで清く正しく生きたまえ。
、、、、、、、、、、、、
『世界的研究者、藤木雄大(享年73)突然死』
第一発見者である助手が研究室に入出すると
不整脈で既に死亡していたとのこと。
研究者故の苦悩があったのか。
人類にとっての大きな損失である。
故人が残した功績、研究結果は未来永劫語られることだろう。
、、、、、、、、、、、
藤木は気づくべきであった。
ことは単純であり、とてもシンプルである。
39歳の年齢の男が
目は血走り、体は真っ赤になり
あまつさえ失禁と脱糞をする苦しみに駆られるのだ。
73歳が耐えられるはずもない。
藤木の研究結果は誰にも見られぬよう、
彼が厳重なセキュリティをかけた彼にしか知らない金庫に眠っている。
盲点。
藤木は頭が良すぎて気づけなかった。
投薬の後の肉体負担を。
自分の体力を盲信していた。
あるいは
そういった研究自体が
もしかすると
神への冒涜なのかもしれない。
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