第10話

 ライブ。


 それは生きること。


 ライブ。


 それは自己の表現。


 ライブ。


 それは……。



『今、走り出したこの気持ち届け。

 そう、これが私達の始まりの歌』




 何も知らない学生達にとっては、突然に始まったワンマンライブ。


 鳴り響くBGM。


 煌めくステージ。


 そこから始まる澄み渡り音響く第一声。

 遂に解き放たれる歌姫の透き通る歌声。


 1度惹き付けられると目が離せなくなる存在感。


 人は圧倒的なものを見るとその人の世界が止まるという。


 今、ここは正に息を吐くのも忘れる程の圧倒的な世界。



『貴女が居たから私は笑える。

 貴女が居たから私は歌える』



 グランドの前にはどんどんと人が集まってくる。


 熱量が膨れ上がる。


 歌いながら揺れる身体とアシンメトリーの衣装。


 想いが溢れる。

 楽しいが溢れる。


 間奏曲で魅せるダンス。

 煌めくステージの上でアリサちゃんは妖精だった。


 笑顔が零れる。

 感謝が零れる。


 そして、その歌はラストの大サビに入り一気に駆け抜ける。



『貴方とならば、いつまでも進んでいけるこの道。

 歩み始めたあの日を、私は決して忘れないよ〜』



 一瞬の静寂。

 その後に起こる怒号の様な歓声。


 私達はやり切った。

 この日の為に悩んで悩んで悩み尽くして。


 この賞賛を…

 この歓声を…

 浴びる為にここまで来た。


 やったよアリサちゃん。

 やっとこれからアリサちゃんは報われるんだよ。

 頑張ったよね。


 毎日毎日。

 頑張ったよね。


 でも、アリサちゃん。

 これは、始まり。

 始まりの歌だよ。

 アリサちゃん。

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