n+1人目

 私は、もともと日本一正義感の強い警察官と言われていた筈だ…。それが、どうしてこんなことに…。

 これは、ある事件の容疑者が所持していた。明らかに金を持っていないそいつの住んでいる部屋の中で、これだけが異質だった。

 これだって、大事な証拠物件の筈なのに私はどうしてもこれを隠さなければならないという衝動にかられた。そのときから、私はこれの支配下におかれた。捜査資料によると、これの前の持ち主である男は自分のワープロにわけの分からないことを書き残していたようだ。男は薬物乱用の疑いがあったため、署ではまともに取り合わなかったようだが、今の私にはすべて分かる。なぜなら、同じことをこれに指示されているからだ。この男も私と同じようにこれに支配されていたのだろう。

 私はこの男が書いたことを参考にしようとしたが、警察官という仕事を辞めたくはなかった。辞めないで、人を切ろうとするのは、とても難しかった。この男のように全国を回る訳にはいかないからだ。必然的に同じところで何回も人を切ることになった。だから、私はもうすぐ捕まる。前の男に比べて随分と速い。まあ、いいだろう。これの代わりに罪を被ろう、そして前の男のように願おう。これが、このナイフが……。

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