6人目

 僕は、危うくこいつに乗っ取られるところだった。だから、こいつの記憶を覗いてみた。こいつの一番最初の持ち主はやくざの下っ端だったらしい。そいつは、金持ちの次男坊で欲しい物があればなんでも買って貰えたようで、こいつも買って貰ったものの一つらしい。そいつは、こいつを脅しにしか使わなかったから、こいつはずっとおあずけの状態だったようだ。そんなとき、内部で抗争があったらしい。そいつは、自分のリーダーを体を張って守ろうとした。いつもは見せびらかすだけだったこいつを使った。こいつはそうとう嬉しかったんだろう。そのとき、血の味と、魂の味を知った。血は敵の、魂はそいつの、だ。血もそれなりにおいしかったものの、魂は、別格だった。

 それから、こいつは四人の手に渡った後に、僕のところに来た。僕のところに来るまでに出会ったやつには、血を吸いたいと言っていたようだが、本当の目的は、持ち主の魂だったようだ。他人の魂よりも、持ち主の魂のほうが、よりおいしかったらしい。たしかに、僕より前の持ち主は全員、死んでいるようだ。最後の二人はこいつのことを書き残した後、死んだらしい。二人とも、まともに取り上げられなかったようだ。それはそうだろう。分かるのは、こいつの持ち主か、僕のような力を持ったやつくらいだろうから。

 あとは、こいつを、どうするか、だが、すべて、焼いて、溶かしてしまうか……。面倒だが、僕がやらなければいけないのだろう。僕はそれを分かり、できるのだから。この力を持つ僕が……。

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