一話 二人は親友④
その光景を見て、陰キャな僕はどうせまた友達なんかできっこないんだと勝手に思ってしまっていたのだが……。
だから、その時の自分は絶対『 友達』を作るんだなんて意気込んではいなかったけど、出来れば仲間が欲しいなとは思って多少の期待していたはずが、どうせ友達なんか出来っこないやと諦めモードに突入してしまったのである。
結局、休み時間になっても、既に仲間同士のグループが出来ていたので、入り込みづらい雰囲気があり、自分から声を掛ける事が出来ずにいた僕は、友達なんか作れなかったのだった。
(ちくしょう……なんなんだよ!)
僕は少しばかりイラついていた。環境が変わったのに、状況は変わらなかったからだ。
そもそも、陰キャな僕はコミニケーションが大の苦手である。
そんな僕はやっぱり友達作りが上手くいかず、結局クラスメイトに話し掛けるタイミングも掴めないままお昼を迎えてしまったのだ。
何故か給食では無くお弁当を食べる中学だった為か、友達同士で食べることになっていたのだけれど、自分から友達が作れないでいた僕は転校して新しい環境になったばかりだというのに結局一人で食べることに··········。
ひとりで食べることに抵抗は無かったけど、それでも男のくせに少し寂しい気持ちにはなりつつ……でも、ひとりぼっちで食べるしかないので、鞄の中から弁当箱を取り出して机の上にそっと置いた。
ふぅ··········と溜息をつき、またひとりぼっちなのかと思いながら、更に弁当袋から取り出そうとしているそのときだった。突然僕の後ろの方から声を掛けられたのだ。
「あのさ、お弁当ひとりで食べるんだったら、私と一緒に食べない!?」
「えっ··········」
僕は戸惑いながら声のする方に振り向くと、声がした方の席に座っていたのはとても美人で、とても可愛いらしい女の子だった。
彼女は僕の方をニコニコと優しい笑顔で見ているので、僕は急に緊張し始める。
そんな彼女は色白の肌で、髪が長くて、まつ毛も長くとても綺麗なお嬢様風にも見える。何故そんな子が僕なんかに?
「えっと··········僕のこと?」
僕に向かって彼女がわざわざ声を掛けていることが分かりつつも、こんなにも可愛い子から話し掛けられるとは思ってもみなかったので、何だか違う様な気がして彼女に確認をする。
「当たり前じゃない! お弁当ひとりで食べようとしてるの陰堂くんだけだもの」
彼女は僕の目を真剣な表情で見つめながら、優しい笑顔でそう答えた。
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