一話 二人は親友③

 其れから、中学の一年間、月に一度父さんが家に帰宅して来ては、その時は一緒に沢山遊んで貰った。僕はスマホもあったので、毎日のようにメールで挨拶していたから、寂しさにも次第に慣れていった。


 ところが、冬になった頃、母さんが急に痩せだした……病気何じゃないかと心配した僕が父さんに伝えることで、母さんは父さんがいない寂しさから痩せてしまった事が判明する。


 僕ははとっくにこの生活に慣れることが出来たのに、母さんが慣れずにいた事にようやく気づいたのだ。


 其れからしばらくして、父さんと母さんは話し合いをして、持ち家である今の家を売る事に決めたらしい。そして、いつの間にか僕の意見は何も聞かずに、父さんの今住んでいる寮に引越しする事が決められていた。


「すまんな! 引越しする事勝手に決めちゃって」


 後から父さんに言われたけれど、僕は今の学校に友達と呼べる人は一人もいなかったので、特になんとも思わなかった。


 寧ろ、僕は引越し出来てまた父さんと一緒に暮らせる事が嬉しくて仕方なかったのである。


「僕は引越しする事全然平気だよ! 父さんと一緒に暮らせる事が嬉しい。母さんも寂しかったんだね! 早く元気になると良いな」


 そう伝えると、何故か父さんも母さんも泣いていた。


 こうして、四月から中学二年生になる僕は、丁度良いタイミングで三月下旬の春休みに引越しが決まったのである。


 そんな僕は転校して環境が変わることに少しばかり期待をしており、ワクワクしていた。其れは友達が作れるかもしれないからだった。


 ──転校──


「明日から、新しい学校ね」


 朝起きてから、キッチンに行くと、母さんがコーヒーを飲みながら僕に言った。


 父さんは仕事で朝早く家を出るのでもういなかったけど、引越してきてから母さんは凄く元気になった様に感じる。


 今も笑顔で僕に話し掛けてくれているからそう感じるのだけど、以前はもう少し暗く、明るい表情では無かった様に思う。だから、僕は引越してきて良かったなと感じていた。


「うん、でも、ちょっと緊張してるよ……」


 新しい環境になることに期待しつつ、不安も感じていた。其れは、前の学校では友達なんかいなかったせいでもある。不安を感じながら、この日は早目に布団に入った。


 次の日、学校に行くと担任の小林克典 こばやしかつのり先生から紹介される。


 僕のクラスは二年一組。紹介されてから教室に入ると、緊張からか、僕がコミュ障だからなのか上手く話せないでいた。


 僕は緊張しながら、ぎこちなくクラスメイトの前で自己紹介をする。


「えっと、その、陰堂根暗 いんどうねくらと言います。趣味はゲームとアニメです。えっと……み、皆さん……よ、宜しくお願いします」


 緊張しながら自己紹介をしつつ、目の前にいる生徒達を見ると、僕に興味が無いのだろうか? ちっとも此方を見てくれていないように感じた。

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