六話 二人はスタイルが良すぎる
夕飯が食べ終わると、明美と桃花は後片付けを手伝うと言うので僕はその間に風呂に入り、歯を磨いてから二階の寝室に向かった。
これでもう後は寝るだけになり、ゲームをしながら二人が来るのを待つことに。
ゲームをしているとあっという間に時間が過ぎる。そのうち誰かが階段を登ってくる
足音に気が付き、僕は急いでエロゲのカセットを交換してバトル物に変更し終えると、ガチャりと部屋のドアが開いた。
(ふぅ、危なかったぜ)
ギリギリセーフである。
最初に部屋に戻って来たのは明美。
「何か隠してたでしょ」
来るなり早々に突っ込まれてしまった。
「べ、別にゲーム隠したりしてないから」
「ん!?」
なんてこったい、口が滑り、額に汗が出てきて止まらない。
「ふーん、この私がいるというのに、やっぱりエロゲしてたわね! どんなのしてたのか見せなさいよ」
要求されたけど、そんなもん見せられる訳が無い。僕だって恥ずかし過ぎる。
すると、暫く迫ってきた彼女は要求するのを辞めたかと思うとパジャマのパーカーのチャックを握り、ファスナーを外して脱ぎ出した。
「オイオイ、突然何やってるんだよ!」
「決まってるでしょ! 私のこと見せてるんじゃない。前持って襲うって宣言していたでしょ……もしかして根暗くん忘れちゃったの? 私絶対エロゲなんかに負けないんだから」
そういえば……そんなこと言ってたことを思い出す。
(全く……可愛いな……何でそんなに必死なんだよ)
僕は思わずニヤけてしまった。
暫くニヤケたままでいたが、前を見ると、僕の目の前には明美のブラしかつけていない下着姿が露出する。
目のやり場に困りながらも、明美の豊乳が視界に入り高鳴る胸の鼓動を僕は感じながら、落ち着かなくなったままベッドに腰かけていると、明美がくるなり僕の膝の上に乗っかり、向き合うように座ってきた。
「明美……?」
「……」
「明美聞いてるか?」
「……」
「なぁ、明美、桃花もそろそろ部屋に来るんじゃないのか?」
僕の頭ん中には、そのことが気になりだして、嬉しい反面、今はこんなことしていたらヤバい状況なんじゃないかって思えていた……。
「平気よ! 桃花は近くのコンビニに買い物行っちゃってるから少しくらいなら。それに、この部屋内側から鍵出来るようになってるの知ってるから掛けといたよ……えへへ」
彼女は気が利いているというのだろうか、よく遊びに来ていただけあって、僕の部屋の構造を知っていたらしいが、僕は普段鍵何か使って無いので、明美が知っていたということに感心する
「そ、そうか、それならひとまず安心だね。ありがとう」
鍵さえしていれば、戻ってきた桃花には怪しまれるだろうが、この状況を見られなくて済む。
それにしても、今の僕のこの状況は、心臓が飛び出るんじゃないかってくらMAXにドキドキしているのだけれど……。
目の前に座る彼女は目を閉じ無言のままだ! 僕はそんな明美をずっと見つめているけれど、彼女がドキドキしてるのかどうなのかさっぱり分からなかった。
(どうなんだろう?)
そんなことを思ってると、明美が急に抱きついてきた。
「あっ……」
僕は思わず抱きつかれて声が出てしまった。その後、僕も彼女の体に腕を回してきつく抱きしめる。
──数秒……数分こうしていたであろう。僕の中で時間が止まった感覚だった。
その間、明美の頭からシャンプーのいい香りがしてきて、僕はとても心地よく、喜びと同時に幸せに包まれる。
と、明美が僕の唇を少し乱暴に奪い取るようにキスをしてきた。しかもまた舌まで入れてくる。
僕はそれを受け入れ舌と舌を絡ませる。
「ん……」
彼女から声が漏れた。
僕は堪らず彼女をベッドに押し倒すと、そのままキスを続ける。
暫くそうしてから唇から舌を出すと唾液が絡まっていやらしい糸を引いた。
目の前にいる彼女はキスの後、目をとろんとさせうっとりしてる。
そんな彼女を見て僕はドキドキしてきてしまい、思わず下着をつけている彼女の胸に手を当てる。もっと感じさせたい、イジワルをしてやりたいという気持ちになった。
僕はSなのかもしれない。
でも、僕の頭ん中にそろそろヤバい時間だという理性が働いて、それ以上のことは何もしないで終わる。
明美が起き上がったのでもう一度抱きしめ「大好きだよ」と伝えると彼女はうんと頷いた。
「将来僕のお嫁さんになって下さい」
僕はまだ自分から言えずにいた言葉を口にする。明美は勝手に僕と将来のことを約束していると言っていたけど、やっぱり僕からきちんと伝えないとモヤモヤしてしまうからだ。
「えへへ……前に約束してるじゃない」
そう言いながら、明美は照れ笑いをしつつ、とても嬉しそうにうんと頷いた。
そんな彼女を見て、僕はまた幸せに包まれる。
「ほら、風邪引いたら困るから早く着替えよう。そろそろ桃花も戻ってくるんだろうからさ」
そう言って乱雑に床に置いてあるパジャマを拾って明美に手渡し着替えさせると、部屋の鍵を素早く解除した。
──ガチャり
僕が解除した数秒で桃花が部屋に入ってきた。
「私お邪魔だったかしら?」
二人の空気を感じ取ったのか、直ぐに聞いてきた。
「全然大丈夫よ」
明美がにこやかに応えると、桃花は嬉しそうに僕の隣にやってくる。
その時、明美がムスッとしているのを僕は見逃さなかった。
(嫉妬していて可愛いな……)
僕はニマニマが止まらない。
「なんでにニヤけてるの?」
桃花に突っ込まれてしまった。ニヤケ顔を見られてしまったらしい。
「あっ、嫌々…別になんでも……」
「あらそうなの」
納得いかない感じになっていたが、「明美が可愛くて」なんて伝えたら、今度は桃花が嫉妬してしまうだろうからあえて何も伝えないようにした。
「そろそろ寝ようかな! 僕と明美は明日学校あるし……」
まだ部屋に来たばかりの桃花は起きていたそうだったけど、寝ると伝えると分かったと言って布団に入った。
三人で寝るベッド、僕が真ん中に寝ると直ぐに両腕に絡まる二人。
両隣に華で嬉しくもあるが……少し寝ずらいような感じてはあったのに、豊満な胸を押し当てているのかその感触が腕に当たり気持ちよくて僕は気づけば深い眠りについていた。
✩
次の朝、目を覚ますと二人が両隣りで寝ていない!
(やっべ、寝坊したのか)
そう思いながら部屋の時計を確認すると全然違った。
「おっはよー根暗!」
そう言って部屋まで起こしに来たのは何故か桃花の方だった。しかも何故か僕と同じ高校の制服を着ている。
(桃花が学校!? それも僕と同じ制服!? 違うよな! 桃花は家出して此処にいるんだし、後三日で終わる学校も休むんだったはず)
「うん、桃花おはよう」
桃花は僕のところまでくるなり、顔を近づけてきたけど、僕は顔を逸らした。
「少しくらいいいじゃん……」
「あっ、ごめん」
桃花は不満そうに僕を見つめる。
「……ごめん……明美がいるから」
もう一度謝ったけど、何故か桃花のことを抱きしめてしまった。
直ぐに離したけど、桃花は気恥しいのか赤面している。
そして、もじもじしながら喋り出す。
「えへへ……根暗ありがとう。私まだ諦めてないからね」
「……」
「今の聞いてた?」
「うん、あ、まぁ」
「なら良かった。朝ごはん用意してあるから、早く着替えて下においで」
桃花はそう言うと、部屋を出て先に下に降りていった。
僕も急いで着替えて下に降りていく。
「根暗おはよう」
キッチンに行くと明美がすぐ僕に気付いて抱きついてきた。
「明美おはよう」
「ねぇ、さっき桃花が部屋に起こしに行ったけど、その……何もして無いわよね?」
「う、うん」
何故なんだろう、僕はつい嘘の返事をしてしまった。
「本当に? だって桃花が嬉しそうに戻ってきたから」
「そ、そっか……」
さっき抱きしめてしまったからだって思ったけど、内緒にしとくべきか悩む。
もしかすると、桃花がそのことを明美に話してしまう可能性だってあるからだ。
(やっぱり隠し事は良くないよな)
「ごめん……実は桃花に迫られて拒否したんだけど、つい抱きしめてしまったんだ」
僕は自分に嘘をつくのが嫌いだ! だからこのままじゃ良くないので明美に謝ることにした。
後からバレるのだけは避けたい。
「酷い! 何それ」
「だからごめんなさい。でも直ぐに離したよ。だって僕が好きなのは明美だけだから」
「じゃぁ何で抱きしめたのよ」
突っ込まれてしまったがご最もである。
「ちょっと可哀想な気がしてさ……」
僕は馬鹿正直に話す。そんなこと話さなくても良かったのかもしれないのに、怒られることを覚悟して伝えた。
「まぁ良いわ! 根暗は誰にでも優しいもんね。私が好きになった理由の一つでもあるからね。今回だけは許すわ」
明美は優しかった。抱きしめてしまったのに許してくれたんだからら。
「明美、本当にありがとう」
「うん、いいよ! でも、今回だけなんだからね」
「大丈夫、もうしないから。明美のこと悲しませないって約束するよ」
それから、僕は明美と桃花の用意してくれた朝食を食べる。
ベーコンエッグに味噌汁、鮭も焼いてあって僕の好きな和食だ。
「美味いな! これって二人が作ってくれたのか?」
「えへへ、そうだよ。根暗のお父さんは食べずに仕事行っちゃったけど、普段食べないの?」
「あぁ、そうだよ! でも、せっかく作ってくれたんだから食べていけば良かったのにな」
「リズムがあるからね……気にしてないよ。えへへ」
それにしても、桃花が見当たらない。
「ところで、桃花が僕達と同じ制服を着ていた気がしたんだけど……」
さっきから見当たらないので僕は明美に質問する。
「うん、何かね、実は転入することになってたらしいわよ」
「えっ」
僕は思わず驚かされる。だって昨日は学校休むとかなんとかって聞いていたから。
「実は桃花のお祖母さんが色々動いていたみたいなの。今朝早くに荷物が届いて、その中に制服やら色々入っていたわ。その後にお祖母さんから連絡があったのよ」
「そうなんだ! で、桃花は何処にいるの?」
「もう家出てったよ!」
どうやら今日はお祖母さんがこっちに来てくれて、桃花と一緒に学校に行くことになったらしい。
桃花は待ち合わせ場所迄早めに行ったというのだ。
「じゃぁ、私達も早く学校行きましょう」
まだ時間もあるし、僕は食べ始めたばかりだというのに明美に急かされる。
「僕達は急がなくても平気なんじゃないのかな」
「うん、そうかもしれないけど……何故か桃花のこと気になるのよね」
そう言われ、僕も何だか気になりだしてきたので、急いで支度をすると明美と一緒に学校に向かった。
でも、向かう途中で桃花に会うことはなく、校舎の中でも会うことはなかったのだから、桃花は何処か別の教室にでもいるに違いない。そのまま僕達は教室に向かうことにした。
「おっす! 根暗おはよう」
「勇おはよ!」
結構早く来たはずなのにもう勇がいる。
(いつも早いな! 学校が好きなのかな?)
そんなことを思ってしまった。
「明美久しぶりじゃん、おはよう。明美が入院中に根暗と友達になった勇です。やっぱりお前らお似合いのカップルだな」
お似合いのカップルという声に反応して、クラスにいる男子が此方を睨んだ。
まぁ睨まれたからって、僕は何するでもなく普通に過ごすだけだけど、悪いことをした訳じゃないんだから大分不愉快ではあるが、根暗過ぎる僕は言い返せなかった。
「何だよ! お前ら何か文句でもあるのか?」
勇がこの状況に気づいて、睨んでる男子達に向かってそう言うと、あっさりと睨むのを辞めてくれた。
勇は凄いなと思う。クラスの男子共を静かにさせちゃうんだから。
一体クラスの男子達にとって勇はどんな存在なんだろうか? 他の人とは話すことが無いから余りよく分からないのだ。
「勇くんおはよう。根暗と仲良くなったのね! お、お似合いって言ってくれてありがとう。えへへ」
勇は強いなと思う。僕なら告白断られた相手にそんなこと言えないと思うから。
お似合いだと言われて隣ではにかむ彼女を見て僕の心臓がグーンと跳ね上がった。
なんてこうも可愛いんだろうか……。
彼女は照れながらそっと僕の背中に隠れて僕の服を摘む。
制服がはち切れんばかりに豊満な胸が押し当てられているのが触感で分かり、僕まで恥ずかしくなってきた。
正直、今迄だってずっと明美とは親友だったんだから常に毎日一緒にいたと言うのに、今は隣にいるだけで胸がドキドキしてしまう。
不思議なものだ。
「なーにー照れてんだよ二人して」
顔にでも出てるんだろう。バレバレらしくて勇に突っ込まれてしまった。
その時、ちょうどチャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。
「ええ、皆さんおはようございます。今日はこのクラスに転入生が来ています。どうぞ入ってきて下さい」
そう言われて中に入ってきたのは桃香である。
「自己紹介どうぞ」
桃花は緊張しているのだろう、足が震えていた。
「ええっと、
桃花が頭を下げると、今度はクラス全体がざわざわしだし、男子も女子もわざわざ俺の方をチラ見して睨んできた。
桃花は誰がどう見ても凄く美少女である。明美に劣らず可愛すぎるのだ。
そんな彼女が、自己紹介で僕の家にお世話になっているなんて言ったから皆嫉妬しているに違いない。
「何だよ! 皆して何か文句あるのかよ? 何か文句あるなら俺に言え! 良いか、分かったな」
勇がこの異様な空気を感じ取り一言発する。たったそれだけなのに、お陰でクラスは静まり返り、睨んでくる人は誰一人として居なくなった。
(でも、本当は明美も一緒に暮らしているんだよなぁ……それはバレませんように)
桃花と勇が話さなければ、其れはバレることは無いだろう……でも、うっかり二人に口止めするのを忘れている。
少し不安になり落ち着かなくなっていた。
ホームルームが終わると、直ぐに窓側の一番後ろの席に座る桃花の所へ向かう。
「あのさぁ、桃花悪いけどちょっとお願いがあるんだよね」
「ん?」
「ここじゃちょっと……」
僕はももかの事をわざわざ廊下に連れ出して、廊下の奥まで連れていきながら話をする
「ちょっと根暗なんなのよ!」
「あのさ、ええっと、桃花が僕の家にお世話になっているって話したじゃん。でも、クラスの皆は明美が僕の家で暮らしていることはまだ知らないままなんだよ。唯一友達の勇は知ってるんだけど、内緒にしていて欲しいんだ」
僕の話を聞いてうんと頷く。
「あははっ、いちいちそんなこと話さないから大丈夫よ」
「そっか、サンキューな」
話終えると、僕は先に教室に戻った。
直後、明美がそばに来るなり、ムッとした表情をしている。
「根暗くんさっき二人で何話してたの?」
気になって仕方ないらしい。やっぱり教室では話せないので、明美も廊下に連れ出すと、桃花同様に廊下の奥まで連れていきながら話をする。
「さっきは、明美が僕の家で暮らしてることを桃花に口止めしてたんだよ。皆にバレると面倒だから」
「ふふふっ、何だそんなことかぁ、それなら私も仲間に入れてくれたら良かったのに」
「うん、ごめん」
僕は直ぐに謝る。
後は勇にお願いするだけなんだけど、お願いできないままチャイムがなってしまった。
まぁ、勇なら後でのんびり言っても大丈夫だろう……こんなこと他の人に言いふらすような奴では無いと分かっているから。
次の休み時間、僕は急いで勇の席に向かう。すると、直ぐに直感でわかったのか、僕に「大丈夫だ! 安心しろ」って言ってきた。
「お、おう……サンキュー」
「俺は口が堅い! 別に何も言わないよ」
そう言われた。
☆
──昼休み──
今日も勇は僕のところにやってきた。あと三日で学校が終わるのに何故か午後もあるせいで弁当が必要な日だった。
(やばい忘れちゃった。購買に買いに行かなきゃだな)
珍しく弁当を持ってきている勇。どうしようかと思っていると、明美が来て僕の手のひらにぽんと置かれたお弁当袋。
「根暗の分もちゃんと作ってきてあげたわよ! えへへ」
「明美ありがとう」
「おっと、お二人さんラブラブですね。夫婦かよ!」
勇が手渡された弁当を羨ましそうに眺めながら、静まり返った教室でューヒューと茶化してきた。
その声が余りにもデカいもんだから、クラスメイト全員の注目を浴びることになる。
そこにもじもじしながら桃花がやってきた。
「わ、私も皆と一緒にお弁当食べても良い?」
「お、根暗の親戚だっけか、オーケイオーケイ! 一緒に食べようぜ」
勇がOKしてくれて、お昼は珍しく四人で食べることに。せっかく天気も良いので、僕達は中庭にあるベンチで食べることにした。
今日は珍しく中庭には誰もいないので、貸切状態である。
「それにしても、お前ら三人で暮らしてるんだろ! 桃花だっけ……恋人同士のところに住むって気まづく無いのか?」
「へへへ、 そりゃ気まずいですよ。慣れませんからね。でも私も根暗のこと好きなんです」
まだ諦めていなかった。
「何だよ! 根暗モテモテじゃんか」
「辞めてくれよ! まぁ、何でか好かれてますけど、桃花にはもっと素敵な人が現れると思うよ、ここにいる勇何かどう? 僕の薦めだけど」
「……」
スルーされてしまった。
「良いのよ! 私は根暗の第二候補でいさせてさえ貰えれば今は幸せだから」
そう言うと、僕に向かってニコッっと微笑見掛けてきた桃花
「そ、そうか……」
「あのねぇ、候補って言い方辞めてよ。根暗は候補何て要らないんだから。 私だけで十分なのよ。何も無くても満足できるならそれでもいいけど」
「ふふふっ明美さんそんなに根暗が好きなんですね。でも、好き同士でもチャンスはあるかもしれないですよね! 勇くんもあると思いませんか?」
突然話を振られた勇はあわあわしている。
「俺にはわかんねえな!」
「そうです、未来なんて分かりませんよね……ふふふっ」
桃花はそう言ってから、自分の弁当箱とは違う、容器を取り出すと、その中に入っている卵焼きを僕の弁当箱の中に入れてきた。
「せっかく何で、私が作ってきた卵焼きも食べて見てください。沢山あるので明美さんも勇くんもどうぞ」
桃花は明美にも勇にも配った。
……ハムっ
明美が口に入れるのを見てから僕も勇も卵焼きを頬張る。
「この卵焼き中々いけるじゃない! 中にチーズ入ってて美味しいわね」
「テヘへ、美味しいって言って貰えて嬉しいです。根暗はどう? 口に合わなかったかしら?」
目をうるうるさせながら聞いてくる。
「嫌々、美味いぞ」
僕は素直に伝える。
「てへへ」
「うん、美味しい! 桃花は料理上手なんだな」
「勇くんそんなことないよ! この卵焼きはおばあちゃんから教わったんです。余りにも美味しいから何度も教えて貰いました。また皆に作ってきてあげますね てへへ」
「あのさ、私にも作り方教えてくれないかしら?」
明美が桃花にお願いしている。
「根暗が美味しいって言ってたから、私も美味しいのが作りたいの」
「はい、良いですよ。作り方教えてあげますね」
負けず嫌いな明美! 明美の弁当に入っていた卵焼きも美味しかったけどな……。
僕は桃花にお願いしてる明美を見て可愛いなと思った。
「ねぇ、そろそろ夏休みですよね。何処か皆で行きませんか? もっと皆さんと仲良くなりたいんです。私の思い出にもなるんで!」
桃花が皆に話を振る。
「おお、良いねそれ、せっかくだから泊まりで行こーぜ!」
勇が泊まりで行くことを提案した後、顔がニヤニヤしている。
「私、海に行きたいな!」
弾むような透き通ったソプラノの声で明美が言う。僕には明美が嬉しそうなのが直ぐに分かった。
それにしても、泊まりで旅行に行くなんて父さんも母さんも許してくれるんだろうか?
何しろ、明美と桃花は家で預かってるようなもんだ。それにお金の問題だってあるのに。楽しそうに話しているが僕だけが不安になる。
「桃花も海行きたいです! ふふふっ水着用意しないとですね」
「うほぉ、水着、こりゃ楽しみになるなぁ」
桃花も勇も楽しそうに今からはしゃいでいる。
「根暗も海で賛成かしら?」
不安そうにしていたら明美が聞いてきた。
「うん、賛成だけど」
「わぁーい! やったー」
明美が飛び跳ねて喜んでいる姿を見ていたら、僕も何だか楽しくなってきた。
「でも、お金の問題が?」
僕は気になって仕方が無かったのできいてみる。
「俺はたまに学校が休みの日にバイトしてるから心配無いぞ!」
勇がニヤリとしている。
桃花と明美は今迄貯めた小遣いを持ってきているから心配無いらしい。
それなら問題なのは僕だけか……でも、僕もたまに親戚の叔父さんがやってる喫茶店で教えて貰いがてら働かせてもらっていたから、幾らか持っているのを思い出す。
良し! お金の問題はクリアしてるなら、夏休みに泊まりで旅行に行く許可を両親から絶対貰おうじゃないか。僕だけ凄く気合いが入る。
「ねぇ、皆で帰りに水着見ていかない?」
桃花が嬉しそうに言うと、勇がのりのりで即OKする。明美も賛成して、放課後僕も行くことになった。
──学校近くにあるデパート。
皆、小遣いを持ってきているので水着を買える位の金額はあるらしい。
水着売り場は三階にあると、入口付近に置かれていたフロアガイドに記載してあるので、一直線でエレベーターに乗り向かう。
到着すると、丁度目の前が水着売り場になっていた。
「わー凄い! このデパート水着売り場めっちゃ充実しているじゃないですか」
とても広い水着売り場をキョロキョロと見渡しながら、目を丸くして驚く桃花。
「どれにするか迷っちゃうわね」
明美も到着したばかりなのにめっちゃ幸せそうだ。
「ねぇ、根暗くんはどんなの着てもらいたい!? 出来れば選んでもらいたいんだけど……えへへ」
いきなりお願いされたけど、頭の中で無理という二文字がおどる。お、女の子の水着何て選べないよ。
「ど、どれでも明美には似合いそうだけど……」
(そ、それにしても、目のやり場に困るな!)
僕は水着何て自分で買いに来たことなんて無かったこら、売り場にある女子の水着を見て鼻血が出そうになる。
どっからどう見ても下着みたいじゃないか。嫌々、下着だろ! 僕にはエロ過ぎて刺激的だ。
「そっかー、なら、何着か選んで試着してみるね」
そう言って明美は自分で選びに行った。
(ふぅ、助かった!)
僕はクラクラしながら、ホット溜息を着く。
辺りを見渡し勇を探すと、勇は桃花にくっついて水着売り場をウロウロしていた。
何だか変態に見えてきてしまったので、勇のことを呼び止めると、こっちに誘う。
「勇、こっちこっち!」
「何だよ根暗……目の保養だったのに」
変態発言をしている。心の底から勇に呼びかけて良かったなと思った。
「僕達は此処にあるベンチで休んでようよ。どうせ選ぶのに時間掛かるんだろ」
暫く経過したけど、まだ水着を見ている明美と桃花。
僕は勇にトイレ行ってくると伝えると、ついでに自販機でジュースを買い、勇にも渡した。
「おっサンキュー! それにしても女子ってこんなに選ぶのに時間掛かるんだな」
「そうだよ! 勇は母さんと買い物行ったことないのか? 服を買いに行くと待たされまくって地獄みるんだよな。ガキん時の
思い出だけど……」
「俺はそんな経験無いかな!? ん……あったのかもしれないけど忘れちゃった」
買ってきたジュースが飲み終わる頃、ようやく二人に呼ばれる。
「どっちがいいか見てくれない?」
明美と桃花に二人して言われた。
試着室の目の前で待たされる僕と勇。
さっきまでは沢山人がいたのに、時間が経過したからなのか、幸い僕達のグループしかいないので、待たされていても恥ずかしく無い。
少しすると、二つの試着室のカーテンがほぼ同時に開き、
「すっげー似合うじゃん」
ジロジロ下から上を舐めずり回るように勇が見てからそう言った。
ビキニの水着姿で、豊かな胸の谷間をみせつけられ僕は刺激が強すぎて鼻血が出そうになりながら、明美が巨乳だったことを思い出す。
(そういえば、直接見たわけじゃないけどデカかったよな)
それに負けず、桃花も巨乳だったので、目のやり場にめちゃくちゃ困り、思わず目を逸らしてしまった。
「ねぇ、根暗くん私の水着似合ってるかな?」
逸らした途端明美に聞かれたので、僕は焦りつつ、うんと頷く。
「なら良かった! これにするね」
未だ慣れない僕を知り目に、明美は嬉しそうにすると、桃花も同じような水着を買うことに決めたらしい。
またカーテンが閉まり、着替え出した。
「すっげーな! 二人共モデルみたいに細くてクビレがあってしかも巨乳で、ボンキュッボンじゃんか。俺達こんな美人と一緒に出掛けるなるて幸せだな」
勇が想像してかまたニヤケ顔になっている。
明美の彼氏は僕なんだから、あんまりジロジロみんなよと言いたかったけど、僕はドキドキしてしまいそれが言えなかった。 そのことが悔やまれて仕方なく、何だか心の片隅がモヤモヤしていた。
「何だよ! 根暗何か不満なのか?」
「あ、嫌々別に……へへへ」
そうこうしてると二人が会計から戻ってきた。
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