四話 彼女の中で決まってるらしい

 僕は明美に変だと言われたのに、物凄く照れて言葉が出てこないでいた。


「ところで根暗くんの好きなのって何かな? 何が好きなんだろう!? 私根暗くんのこと色々忘失 ぼうしつしちゃってるみたいだから知りたいな」


 今度は明美が僕に聞いてきた。


「えっと……えっと……僕は、明美が好きです。大好きです」


 言えた! 言いたかった言葉をやっと自分の口から明美に言えた。中学の時から親友だったけど、多分ずっと好きだったんだと思う。それに気付いたのは明美が入院する少し前……そう、まだ最近の出来事なんだけど、ずっと伝えたかったのに陰キャな僕はこの気持ちを胸にしまい込んで直ぐに言えずにいた。


『気まづい関係』になったらどうしようと思ったら、言えないままどんどん時が過ぎて行ってしまい、僕は積もり積もって行く感情で胸が苦しくて押し潰されうになっていたのに、明美が入院するまで伝えることは出来ずに今日になってしまったのだから本当に情けない男である。


「えへへっ! 何だか恥ずかしいな。ありがとう」


「あの、僕と付き合って下さい」


 勇気を振り絞って更に自分の気持ちを伝えることにした。今回このタイミング、このチャンスを逃してしまったら何も伝えずに進んで言ってしまうだろう。


「ふふふふふっ……って言うか私達もう付き合ってるんだよ。残念でしたー!」


 んっと、何が残念なんだ? 意味が分からない残念を頂いてしまった。


「はははっ、残念だな!」


「根暗くんウケるー! 別に付き合ってるんだから残念では無いわよ」


「あははっ、そっか残念じゃないのか……?」


 明美の言ってる事はよく分からなかったので、僕の頭の中は混乱する。


「私入院しちゃって記憶を忘失 ぼうしつしてることもあると思うけど、私達は将来結婚するって約束もしてるでしょ。約束してることだけは思い出せたよ! だから嬉しい。其れにしても、やっぱり根暗くんとっても変なの」


 僕は真剣に告白をしているのに、明美は僕を見てめっちゃ声を出して笑っている。


 それにしても、僕達は将来の約束何か未だしていない! 好きだと伝えたのは今日が初めてなんだから……一体何をどう思い出せたと言うのだろうか? 婚約してるだなんて……。


 ✩


 それから数日して、明美は病院を退院することになった。退院当日、この日は日曜日で学校も休みだった為、母が用意してくれた花束を持って病院に向かった。


 ノックをして病室に入ると、そこには父親らしき男性がいるので挨拶を交わす。


「おはようございます。えっと……明美さんの親友の……根暗って言います」


 僕はとても緊張していた。父親であるだろう男性に、自分の存在を彼氏だと伝えることが出来ず親友と言ってしまった。


「うん、明美の父です! 根暗くんのことは知っているよ! 今明美から話を聞いていたところだからね。でも、親友では無くて彼氏なんだろ……別に隠すことは無いさ。それに婚約もしてるんだろ」


「こ、婚約……!?」


 僕は思わず開いた口が塞がらない。

 お父さんは既に僕の存在を知っていたのは良い。僕の存在が彼氏であることも何も問題は無かった。ただ、明美が話して伝えたであろう婚約はまだ違う。まだ僕の口からは何も言っていないのだから。


「おいおい、何をそんなに|驚愕しているんだい?」


「あの、婚約の話が出てきたので……」


「未だ高校生かもしれないが、気にする事は無いぞ。約束するなんて素敵なことじゃないか……青春だな」


「あの、でも……」


 僕が訂正出来ないまま話は進む。


「だから、気にするな! それより、突然で申し訳ないんだけどね、僕達家族は離婚することになったんだ。お分かりの通り、母は真奈美しか可愛くないらしくて、一度も明美のお見舞いになんて行かなかった! まぁ、他にも理由は色々あるのだが……君に話すのはな……」


 ──と、突然過ぎる


「明美さんは何処で暮らすんですか!?」


 僕は心配そうに伺う。


 きっとお父さんと暮らすのだから、明美は今迄通り元の家に住むのだろうと、思っていたのだけど……。


「明美はだな……根暗くんの家で一緒に暮らして貰うことになったので、これから宜しく頼むよ」


「ん!?」


 何故突然そんなことになったのか、僕にはさっぱり分からなかった。急に頼むと言われても、僕一人で何か決められる理由が無い。両親に聞かなくては!


「あの、僕の両親に聞かないと……」


「大丈夫! もうこの事は伝えてあるから」


「そ、そうなんですか」


 僕には状況がよく分からなかった。


「うん、実は根暗くんのお母さんは僕の実の姉何だよ。今まで隠していてすまないね」


 僕は突然過ぎる内容を聞き、驚きすぎてしまい何も言葉が出て来ない。でも、どうしてそもそも一緒には暮らさないんだろうか疑問である。


「あの、何で一緒には住まないんですか?」


「残念ながら、仕事の関係で海外出張になってしまったからなんだ。他の人にお願いしても良いんだがね……是非私にと先方からお願いされてしまって、断れなかったんだよ」


「出張なんですか……成程です」


「明美を連れてっても良いんだけどね! ロンドンに一年出張何だよ。そのことを今話して伝えたところなんだけど、やっぱり行きたくないって言われてしまったんだ。彼氏である君と離れたくないってね」


「そ、そうなんですね……」


「だから、頼んだぞ! 明美に何かあったら根暗くん……君の責任だからね。将来結婚してくれるんだろ。約束してるって明美から聞いてる」


「はい。でも……まだ分かりません!」


「…ん!?」


 僕はまだ約束何かしていないんだ。それだけははっきり否定しなくてはいけなかった。


「そうだよね! 根暗くんまだ分からないんだよね。その、国内で挙式するか……海外で挙式するか」


 明美は悪気もなく、笑顔で話してくるけど、僕達そんなこと話した覚え無いよね。記憶喪失ならともかく……何その話? 僕はまた戸惑とったいた。


「なーんだ、そんなことか。根暗くん、それなら両方したら良いぞ! お金なら心配するな。娘の為なら出してやってもいいぞ。任せてくれ」


 明美の父さんは何故かのりのりだ。

「わーいやったぁ。良かったねぇ、お金の心配要らないよ根暗くん」


「うん……」


 嫌、まだお金の心配はしてませんけどってか、まだ考えたことが一度も無いですから……それなのに、記憶喪失? 明美と物凄くのりのりな明美のお父さんのせいで、話が訂正出来ずに先へと進んでいっている。


 僕は、この際訂正はせず、このことに関しも僕の口から明美に話して、きちんと約束したら良いのだろうと思った。


 この日、退院した明美はお父さんと一緒に帰って行った。明美が僕の家に住む為の引越し等は一週間後らしく、それ迄の間はまだ暫く学校も休むとのことらしい。


「先に荷物持って受け付け行ってるから」


 そういうと、明美はのお父さんは先に病室を出ていった。二人きりになった病室、明美は僕の方を見るなり、目をパチクリさせる。


「根暗くん、また背が伸びたでしょ!」


 明美は何時も病室にくる僕を見ていたくせに、急にそんなことを言ってきた。


「えっ、そうかな? まぁ、そういえばそうかもしれないけど!」


 明美は何だか嬉しそうだ。


「退院の日も来てくれてありがとう。朝からずっと会いたかったんだよ! だから来てくれて嬉しかった。お花もありがとう」


「……だって明美が好きだからだよ」


 ギュウッ……。


 僕はそう言うと、肩をグッと引き寄せて明美のことを抱きしめる。その間、時間が止まった。


「えへへっ! 根暗くんのこと私も好き」


 明美もそう言ってくれた。僕は嬉しすぎて、何にも言えず、ただずっと抱きしめた。


「じゃぁ、そろそろ下に行こうか。お父さん待ってるでしょ」


「うん……でもちょっと待って」


 明美はトイレに行くからと居なくなってから数分経過しても戻ってこないので、大丈夫なのかと僕が心配し始めた頃、ようやく戻ってきた。


「ふふふ、待たせてごめん。あのさ、お願いがあるんだけど、メール沢山するから、 根暗くんも私に沢山メールしてよね」


「あ、うん、わかったメール沢山するよ」


「えへへっありがとう」


 本当に嬉しいのか、明美が涙を流す。入院してる時は看護師さんに連絡をしないよう言われていたので、目が覚めてからメールはし一切しないようにしていたから、明美はずっと寂しかったのかもしれない。


「もう泣かないで、明美を悲しませたりしない。これからは僕が笑顔にしてあげるから」


 そう言って、明美の頭に僕の手を乗せると、明美はニコッと笑顔になって笑ってくれた。


 それから、僕は病院の入口を出ると、明美とは別れて一人で家に帰った。


「ただいま。あのさ、母さん一つだけ聞きたいことがあるんだけど?」


 母さんは頷く。


「どうぞ……一体何かしら?」


「あのさ、明美のことなんだけど……僕の家で暮らすって話は知ってるんだよね」


 そのことを確認したかった。


「そうよ。一緒に暮らすことになりました。明美のお父さんが、私の弟だってこと隠すつもりは無かったんだけど、弟は両親と色々あって縁を切ってるの! だから言いづらくてね」


 成程、やっぱり一緒に暮らすことになっているわけか……。


「それで、明美ちゃんが来てからなんだけど、二人は親友なんだと思っていたら恋人同士って言うじゃない!?」


「ぐはぁ……」


 僕はもう母さんも知っていることに驚く。とりあえず僕からも明美に気持ちを伝えているので、恋人同士なのは間違いないが……。


「隠さないで、早く教えてくれたらよかったのに」


 母さんはにやにやと笑みを浮かべながら僕に近づくと、僕の耳元でそう言った。


 べ、別に隠していたわけじゃない! 明美から彼氏だと言われて、急遽告白したのだから……でも、僕も明美を好きになっていたので、記憶忘失した彼女が突然僕を彼氏だと言い出して良かったのかもしれない。でなければ、まだ自分の気持ちを伝えられずにいたのだろうから。


「あははっ、そ、そうだよね」


「それに、さっき弟から教えて貰ったんだけど、二人は将来結婚する約束してる仲なんでしょ! 全く、母さん驚いちゃったわよ」


 僕の予想通り、母さんは僕達の将来のことも知っているらしい。


「……嘘だろう!? そんなことも知っているんだね……でも、それに関しては……」


 僕は母さんだけには訂正しようと思った。頭を抱えながら、伝えようとしている僕に対して、母さんが微笑む


「大丈夫よ。未だ先の話でしょ! 働くようになったらお金貯めなさい。さっきお父さんにメールで伝えたら、お父さんも結婚式のお金に関しては出してくれるってメールがあったわよ」


「……は?」


 話を訂正する以前の問題が発生していた。というか、している。


 既に父さんもこの事を知っているし、何故かお金を出してくれる話も聞いてしまったのだから……。


「それで、明美ちゃん引っ越してくることになったけど、二人で一緒の部屋使って貰えると助かるの。だから、根暗の部屋来週迄に綺麗にしといてね」


「ふぇ!」


 マジかー! 嫌、隣の部屋が空いてるじゃないか……物置き場的になってる部屋を片せば良いだけなんじゃ無いだろうか!?


 僕は母さんの発言を聞いて、未だ高校生である僕達に対してその考え方は可笑しいだろと思った。


「あらヤダ! 何か可笑しなことでも言ったかしら?」


 母さんは全く気づいていないらしい。未成年同士……それも高校生である男女が同じ部屋で寝ることになるというのに……大丈夫なのか?


 色々問題あり過ぎて一緒の部屋を使うことに嬉しさ半分、心配半分。そもそも明美は僕の部屋を一緒に使うことに問題無いのだろうか!?


「母さん明美はこのこと知ってるの!?」


「知ってるも何も、さっき明美ちゃんから根暗と一緒の部屋が良いってお願いされたのよ。 だから、隣の部屋は明美ちゃんの荷物置き場と二人の勉強部屋にしたらいいと思って、早速ラグマットにテーブル注文したの。だから私もお部屋片さなきゃ!」


 ……隣の部屋は明美の荷物置き場と二人の勉強部屋になるのか……成程。


 …… って嫌々……一瞬納得してしまったじゃないか。隣の部屋片すんなら部屋別々にした方が良いんじゃないだろうか!?


 それにしても、一緒に寝る僕の部屋にあるのはシングルベッドのみ。


「あのさ、母さん……僕達寝る時はどうするの?」


「そうだったわね。言うの忘れてたんだけど、来週の土曜日にベッドが届くことになってるんだったわ。早速ベッドも注文しちゃったの」


 ベッドが届くのなら特に何の問題も無いか……まさか二人で寄り添って寝るのも可笑しいから、二段ベッドかシングルベッド二つとかなのかな?


「それで、ベッドは届くんだけど、注文したのはお父さんなのよね! 私が注文するって伝えたら、自分がするって言い出して……だからお父さんにお願いしたんだけど、間違えてキングサイズのベッド注文しちゃったらしいのよね。ふふふっ」


「ん!?」


「根暗ったら、何でそんなに驚くのよ!」


 普通に考えて、驚くに決まっている。結婚してるわけでも、これから同棲する訳でも無いんだから……僕はてっきり二段ベッドとかかと思っていたんだから……。


「まぁ、大したことじゃ無いんだから驚くことも無いでしょ……私はダブルベッド注文してねってお願いしといたんだけど、注文した後確認したらサイズ間違えたんですって。お父さん昔からそそっかしいのよね。ふふふっ」


 そもそも、間違える前のベッドがダブルって……! そこから驚きなんですけど。


「でね、どうせならキングサイズの方が寝やすいだろうからね。そのままにしてあるわよ!」


「マジか……」


「……何よ、また大袈裟に驚くんだから! あのね、明美ちゃんも広くて寝やすいだろうからきっと喜ぶわよ」


 まぁ、明美がベッドが広くて寝やすいってことだけでなく、僕と一緒に寝るってことを喜んでくれるなら嬉しいんだけどね。僕は喜んでくれることを信じながら、母さんが作ってくれたシチューと手作りパンで少し遅めの昼食を食べると部屋の片付けに取り掛かった。


 と言っても、僕の部屋は案外綺麗にしている。意外と僕は几帳面なのかもしれない。大好きな本は整理整頓して管理しており、大好きなゲームは蓋付きのクリアケースの中にきちんと並べて保管しているのだから。それに、良く明美が遊びに来るから、掃除だってしていた。無論明美が入院中もである。


 だから片付けると言っても、ベッドを退かす作業と、その床の掃除といった感じだろうか……。


 片付けを開始すると、結局父さんが仕事で居ないこともあってか隣の部屋の片付けも手伝わされることになり、時間はあっという間に過ぎて行った。


「ふぅ! ようやく片付けも終わったわね 根暗に手伝って貰ったから早く終わって良かったわ」


「うん、綺麗になって良かったよ。隣の部屋って意外といらないもんばっかだったんだね!」


「私も、要らないものばかりあったなんて知らなかったわ……ふふふっ」


 呑気に笑っている母さんを見て、もし引っ越してくる話が出て来なかったらずっとこのままだったんじゃないかと思ったら、ちょっとゾッとしてしまった。今回片付けが出来たのは良い事だったのかもしれない。 隣の部屋には結構なゴミ袋の山が出来ていた。


 今日は疲れたから早く寝とこう……そう思った僕は早く風呂に入ろうと思い、未だ十七時になる前に風呂を掃除してスイッチを押すと、風呂が出来る迄の間、部屋に戻ってゲームでもしようと思いスマホを手に取る。


 片付け中放ったらかしにしていたせいか、メールが十数件も届いていることに驚き早速見ると、全て明美からのメールだった。


『 根暗くんただいま』から始まって、『 今部屋着に着替えたところだよー! 』と着替えた姿の写メ入りや、『今からお昼だよー!』とお昼ご飯と一緒にの写メ等……今日の明美がしてることが事細かに送られてきていた。


(おっと危ない! 今からメール返信しとかないとな……そのうち怒られちゃうよ)


 根暗は明美にメールの返信をする。


『沢山メール送ってきてくれてありがとう。部屋着凄く可愛いね。それにご飯も美味しそう。僕は、明美がこの家で快適に暮らせるように、今日は帰宅してからずっと部屋の掃除をしてたんだよ。だから今メール見たところ。返信遅くなってごめん』


 すると、即既読され即で返信が来た。前はそんなにすぐ既読も返信も無かったから、正直驚いてしまった! やっぱり今の明美は昔の明美とはちょっと違うのかな? でも今の方が嬉しかったりして……一人でニマニマしながら、明美のメールを読む。


『わぁーい、根暗くんからメールきてめっちゃ嬉しい。何も返事こないからどうしたのかなってちょっと心配してたんだよ。私の為にお掃除してくれてたんだね。根暗くんお疲れ様。後でご褒美あげちゃうね。何が欲しい?』


(ご褒美かぁ……)


『迷ってるのかなぁ? 根暗くんが決めたのなら何でも良いよ! 本当に何でもOKだよ』


 何でも良いよと言われても、今こうしてメールで会話してるだけですっごく幸せなんだから、特に何も思いつかないでいた。


『うん、正直迷ってる。だって今メールしてるだけで幸せだからね。さっき沢山明美の写メも見れて嬉しかった。なら、今の写メ送ってよ』


『良いよ! ちょっと待っててね』


 それから直ぐにメールが来たので確認すると、そこには下着姿の明美の姿の写メが届いていた。


 思わず普段見ることの出来ない写メだけに、彼女の美貌と、胸の大きさに興奮してしまった。


『凄く可愛いです。でも、何で下着姿なの?』


『えへへ、今からお風呂入ろうとしてたからだよ。ねぇ、根暗くん私で興奮した?』


 図星だった。興奮してしまい、なんだか股間の辺りに違和感が生じている。


『うん、やばいくらい興奮してる』


『根暗くん家に引越したら、一緒にお風呂入ろうね』


『うん』


『引越しが楽しみで待てない! えへへ』


 思わず『うん』と返信してしまったけど、未だ高校生なんだからそれは無理だよなって後から思ったのに、明美は本当に入ろうと思っているらしい。


(ま、まぁいいか!)


 楽しみに思ってもらってる方が幸せで良いに決まってるのだから。


『そういえば僕もお風呂入るんだった!』


『そっか、離れてるけどお風呂に入るの一緒なんだね。何か嬉しい。またね』


『うん、またね』


 それから一人でお風呂に入りながら、さっき見せてもらった下着姿の写メを思い出し、更に、勝手に明美の裸姿を想像をして興奮してしまった僕は、湯船に浸かりすぎてのぼせてしまった。


 こればなりは自業自得であるが、風呂から出ると、気持ち悪くて自分の部屋に直行するなり、ベッドに寝転んだ。


 それから暫くしてから、気づくと目の前には下着姿の明美がいる。何で此処にいるんだろうと思っていると突然自分の下着を脱ぎだし、突然卑猥な姿になったので、自分の身体が熱くなるのを感じた。


 そのうち、抵抗しようとしてるのに身体が動かせないでいると、僕の服を脱がし裸にするなり、彼女が弄んできたので、僕の呼吸が荒くなり、次第に僕の小さかった物が大きくなってきた。


 なんだか気持ちが良いなと思っていると、ちょうどそのタイミングで、階段を上がってくる母さんの足音が聞こえてきた。


「根暗、ご飯にするけど寝ちゃったの?」


 そう言っているのが聞こえできたので、これは確実に僕の部屋に向かっているらしいことがわかった。


 やばい、今二人が間違いを起こしてはならない。高校生であるにも関わらず、そんなことがあればどうなることか想像できる。なぜ彼女がいるのか説明できないが、間違いは無いと信じて貰うために急いでパジャマに着替えなくては。


 急げと思ったら、身体がすんなり動いたので急いで布団から出てパジャマに着替える。着替えながら、彼女にも早く服を着てもらう為にあちこち探して見たが何故か彼女の服だけが見つからない。


(ヤバい! どーすりゃいいんだよ)


 ドアノブが回っている、もう駄目だ中に母さんが入ってくる……。


 ──汗をかきながらガバッと目が覚めた。


(何だよ! 夢かよ)


 ──ホッと溜息をつき一安心する。


 ベッドの辺りを見回しても、明美は何処にもいなかったが、僕の身体の大きくなったものだけはそのままだった。仕方がないので処理してからリビングに行く。


「根暗、遅かったわね……具合でも悪かった?」


「ん……ま、まぁ……」


「もう大丈夫なの?」


「うん、まぁ、少し寝たから大丈夫だよ」


「良かったわ、ご飯出来てるけど食べられそう?」


「うん」


 テーブルの上にはサラダに、肉料理が並んでいる。僕は早く明美と一緒に食べたいなと思いながら目の前に並んでいる料理をほ奪った。


(明日は学校か……)


 リビングの壁に掛かっているカレンダーを眺めながら、次の日曜日迄明美に会えないんだなと思うと少し寂しくなる。


 疲れてるせいか、さっき寝ていたはずなのにまた眠気に襲われウトウトし始めた。


「根暗、明日学校あるし早く寝るといいわね」


 母さんに言われてふっと目が覚めた僕は、歯磨きを済ませ自分の部屋に向かう。


 とりあえずメールを確認してから寝ようと携帯を確認すると、そこにはまた数十件のメールが明美から届いていた。


 昔の明美は滅多にメールは送って来なかったのに、この変化は凄すぎる。


 メールには、明美がお風呂出てからした行動が送られて来ていたが、途中からは僕が生存してるか問いかけているルメールになっていた。


 そんなに僕のこと好きになってくれているということなんだろう。何だか可愛い。


『大丈夫、生きてるよ』


『良かった。心配して泣いてたのよ』


 直ぐに既読されて返事が戻ってきた。


 常に携帯を持ってるんだろうか? 泣いちゃうなんて今の今迄一度も無かっただろうに……。


『ごめんね』


『うん、寂しくさせないでよバカ!』


 彼女は寂しがり屋さんになってしまったらしい。


『あの、明日は根暗くん学校だよね?』


『そうだけど、どうかした?』


『お願い事があるんだけどしても良い?』


『良いよ!』


『根暗くん、私以外の他の女の子と話しちゃ駄目だよ』


『うん、了解』


 明美は、僕が明美以外の女の子と話さないことをすっかり忘れちゃっているらしい。


『絶対だからね。嘘ついたらお仕置だよ!』


『はいはい、絶対大丈夫です』


『だって、根暗くん女の子から人気者だから』


 人気者では無いと言いたかったけど、明美が学校に来るようになればどうせわかる事伝えないで終わらせた。


『大丈夫! 安心して。明美おやすみ』


『根暗くんのこと信じてるね。おやすみなさい』


 次の日学校に行くと、もしかして人気者だったりして……なんて思ってみたけど、そんなはずあるわけ無かった。


「おはようさん。何時もより遅いぞ! 根暗」


 教室に入るなり、話しかけてきてくれるのは唯一僕なんかと仲良くなってくれた、勇だけである。


「お、おはようございます」


「なんだよそれ? 俺達親友何だからかしこまらないで言えよ。はい、やり直し」


 何故かやり直しさせられてしまった。


「勇おはよう!」


「OK、OK。次からもこんな感じで挨拶しろよ」


「あ、うん、そうするよ」


 勇はクラスで友達沢山いるくせに、仲良くなってくれてからはずっと僕かと一緒につるんでくれている。


 僕なんかと一緒にいても、面白そうなことも何もないだろうに……勇はちょっと変わり者なのかもしれない。


「根暗、明美昨日退院したんだろ! 調子はどうだった? 告白できたのか?」


「うん、元気になっていたよ! それから一応告白してきた」


「何だその一応告白って……」


 目覚めた時から彼女の中で僕達は付き合ってることになってるらしく、最初彼氏でしょって突っ込まれたことを話す。


「でも実際はまだ告白何かして無いから、付き合ってるって言われても可笑しいだろ! だから僕はちゃんと告白したんだ。まぁ、明美にはもう付き合ってるでしょって笑われちゃったけどさ」


「何だそれ! でも良い感じの記憶喪失だな」


 勇は以前告白したこともあってか、明美の僕に対する扱いを聞いて羨ましそうにしている感じがした。


「おいコラっ、根暗そんな顔すんな! 心配何か要らないよ。 俺はお前を応援するって決めたんだからさ」


 心配してるのが伝わってしまったらしい。直ぐに大丈夫だと言い返された。寧ろ応援してくれていると言ってくれたので優しい奴だなと思った。


「勇ありがとうう」


 僕は勇なら全部話しても大丈夫何だと確信すると、他にも、明美が将来僕と結婚の約束をしていると話したことや、性格が変わって寂しがり屋になり、一日にメールが何十件も届くようになったこと、家庭の事情とやらで一週間後に僕の家に引越してきて一緒に暮らすことになるという事も伝えた。


「そんな素敵なことになってるのか! 将来のことまで決まってるなんて凄いじゃん。根暗おめでとう」


 これっておめでとうなのかな……。思わずおめでとうと言われて喜んでしまった僕がいる。


「でも、明美の中では将来結婚することになってるけどさ、そもそも告白してもなかったんだからそんな約束もしてるわけないんだよね」


「なら、さっさと告白同様早く将来の約束もしちゃえばいいじゃんか?」


「うん……そうかもしれないけど、その、重みが違うんだよ! そっちは覚悟が必要になるって感じでさ、まだ心の準備が整ってないんだ」


「根暗なら大丈夫だよ。自信もって早く言わなきゃ! 今なら彼女の中で将来のことまで決まってるんだろ。なら上手くいくって」


「うん……」


 勇に応援されているけど、僕の心の準備は未だもう少し時間が掛かりそうだ。


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