第11話  Ⅱ-①

 救いがあるかどうかは分からないが、それでも救われると信じたかった。

信じること、それに付随して行動を起こすことに意味があると信じたかったから。


 2015年5月

 今日は日曜日だ。

私は週末の過ごし方の定型パターンである図書館に恵と一緒に来ていた。そして数時間書籍を物色し、限度まで本を借りた。恵の限度と私の限度、二人合わせて10冊だ。もちろん恵の分の本も一緒に借りた。

恵の読む(見る)本は主に美術、芸術の本だ。ただし対象年齢はさまざまで、幼児向けのものから、印象派の絵画の画集などまで彼女の興味はとても幅広い。

一方私も負けてはいない。何せお金をかけずに過ごす趣味と言えば読書ぐらいしかないので、私もこれまでに実に沢山の本を読んできた。ミステリー、私小説のような娯楽小説はもちろん、数学や音楽の理論、その歴史などまで幅広く読んできた。

私は高校を卒業する時、お金が無い、お金を稼がなければならない、という家の都合で大学には行けなかったけれども、沢山本を読み、自分で勉強してきたので、知識は同じ年の大学生に負けないくらいある自信がある。まあ、行っていないのだから正確な大学生の学力は把握できてはいないのだが。

そんなわけで、今回は恵が2冊、私が8冊の本を借りた。10冊も借りると帰り道荷物が重いのだが、恵は借りた本がとても気に入っているようで、早く家に帰って読みたいのか、私の分の本も入れて5冊入ったカバンの重さなんかものともせずスキップしながら小走りになっている。そんなところも可愛いな、と思いながら恵の後を追って歩いていると、

「あれ?北原さん?」

突然後ろから声をかけられた。聞き覚えのある声だった。

 

「ここのパスタ、本当においしいでしょ?」

春川君がシーフードスパゲティをほおばりながら、まるで自分の作品のように嬉しそうに言った。

「ええ、そうね。」

できるだけ嬉しそうな顔を作って答える。

私はとてもおしゃれなレストランに来ていた。

図書館からの帰り道、声をかけたのは春川君だった。

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