第3(♂)話 この再会は間違っている。

「やべ〜! 生徒手帳落とした!!」

「桜条⋯⋯お前さっきの⋯⋯」

「いやそんなことより生徒手帳落としたんだって!」


 なんとなくどこに落としたかは分かっている。

 絶対窓から落ちた時だ。

 そして、嫌なことを考えてしまった。


「王子に拾われてるかも⋯⋯」

「マジ?」

「まじマジよ⋯⋯」






「さっきの人は⋯⋯1年3組か、だが二ノ舞か⋯⋯どこかで聞いた事ある名前だな」

「姫野様〜! 大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫さ」

「にしてもさっきの女⋯⋯思い出すだけで腹が立つわ!」

「⋯⋯さっきの人は男の子だよ⋯⋯」

「え、男!?」

「あ! 私それ知ってるわ! 確か……」


 学校一の美少女……ただし、男。

 確かに、言ってしまたら悪いが、この学校の女子よりとてーもかわいい。

 まるでアニメや漫画のキャラクターのような見た目をしている。

 しかし、荒っぽい性格から女人気はない。代わりに、男人気のほうがあるようだ。


「男なのに女のような見た目をしていて、同性にモテモテか……あれ? 私と似てないか?」


 私は女だが、男のような見た目をしていて、同性にモテモテ……。

 って、そうだ!早く1年3組に行かなくては!


 ガラララッと教室の扉が開けられた。


「二ノ舞桜条君はいますかー?」

「……ってやっぱり来た!!」

「生徒手帳落としてましたよー!!」


 ダッと席を立ち、気まずいなーと思いながら生徒手帳を取りに行った。


 スタスタ


「なんかさーせん⋯⋯」

「私は構わないよ、はい、次は落とさないようにね!」

「あざま――」


 その瞬間、ガクッとこけてしまった。

 そして、そのまま王子の方へ倒れてしまった。

 バッタン!!


「いって……あ、大丈夫っスか!?」

「……あの……ちょっと……」

「え、はい?」

「……手……どけてもらえますか……?」


 俺の両手は王子の胸に触れていた。それも結構ガッシリ。

 てかこれあれだ、こけた拍子に胸触っちゃう、ラッキースケベだ。

 ……じゃない!手ェどけないと!!


「あ!! マジすいません!!」

「い、いや……大したことじゃ……ある……」

「ほんっっっとすいません! 殴って下さい!!」

「な、殴るって!? そんな大げさなことじゃないよ! それに事故だし!! ⋯⋯」

「あの⋯⋯」

「⋯⋯それじゃあ! ⋯⋯」


 王子は何事も無かったかのように、爽やかに去って行った。


「やっちまった⋯⋯」

「桜条⋯⋯お前やらかしたな、通報案件だぞ」

「やべーって! 俺学校生活終わったかもしれん!!」

「⋯⋯いや、それは大丈夫だと思う」

「え? なんで?」

「いや、俺たちからしたらさ⋯⋯女が男の胸に触ったっていう訳の分からない状態だったからさ」

「⋯⋯そうか⋯⋯」


 改めてこの見た目で良かったと思ったわ。

 すると、友達が眉間に眉を寄せ、問いかけてきた。


「それよりも⋯⋯"胸の感触"はあったのか?」

「⋯⋯は、胸ェ?」

「あれでも女だろ? 胸の感触はどんなだったのかなーって!!」

花礫がれき⋯⋯お前きめぇな⋯⋯」



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