第4(♀)話 この待ち合わせは間違っている。

 胸の感触⋯⋯あン時は焦りで頭がパンパンだったから、あんま覚えてねぇ⋯⋯。

 だけど、確かに一つだけ覚えてる事がある。


 ⋯⋯本当に女だなーと⋯⋯。







「けつげぇ〜屁ぇ〜おならぁ〜」

「おい永谷、ふざけないでちゃんとやれ」

「⋯⋯気おつけ、礼、さよなら」


 今日はカオスなことがあったが、まぁいつも通り時間は流れて行った。


「ひ⋯⋯桜条〜帰ろうぜ!!」

「おい今言いかけただろ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「ジュース奢れ、そしたら許す」

「ったく、分かったよ〜」


 当たり前に学校は終わった。

 訳もなく、その矢先――。


『姫様! 姫様! ひーめ姫!!』

『姫様のお顔はいつ見ても絶品でやんす!』

「はぁ!? テメェらまた来やがったのか!?」


 こいつらは俺のファンだ。

 しかも勝手にファンクラブなんか作りやがったガチキモオタクだ。


「前やめろっつたよなぁ!? 部室崩壊させてやったのにまだやってんのかよ!」

『姫様の顔を拝めるのであれば、部室の1個や2個、おやすい御用ですよ⋯⋯!!』

「学校側がおやすくねぇだろ!!」

「なぁ桜条⋯⋯これ普通に学校に言った方がいいだろ⋯⋯」

「え? あ、あーとぉ⋯⋯そ、それはまだいいかな!!」


 いや、学校に言うとこいつらからカツアゲしたことバレそうなんだよな⋯⋯。


『何があろうと、我がファンクラブ、"マジカル・ラブ・オージョー"は不死身なのさ!』

「⋯⋯分かった⋯⋯お前らのリーダー誰だ?」

『そ、それは言わないように口止めされている!!』

「なら口切ってやんねーと分かんねぇなぁー!?」

永谷京平ながたにきょうへいです!!』


 永谷京平って⋯⋯さっきふざけてたやつか⋯⋯てかこいつら口柔らかすぎだろ!


「よし、俺は今から永谷をボコしてくるから待ってろよ?」

『ふぁ、ふぁい!! ⋯⋯暴言吐かれるのも気持ちいい⋯⋯』

「うわきも」

「なぁ桜条⋯⋯公園で待ち合わせの件はどうするんだ?」

「あ⋯⋯忘れてた」



 遡ること昼休み。



「桜条、生徒手帳胸ポケットに入れるから落とすんだよ」

「えー⋯⋯じゃあどこにしまうって言うんだよ」

「いやカバンに入れるとかあるだろ」

「⋯⋯お前天才か!?」


 さっさと胸ポケットから生徒手帳を取り出した。

 すると、フサッと何かが落ちた。


「ん? なんだこれぇ?」

「あ、うしろなんか書いてあるぞ」

「本当だ、これ⋯⋯手紙か?」

「どんな内容だ?」


 二ノ舞桜条さん、6時に滝海霧たきじり公園へ来てくれ。

 by姫野


 内容はこんなのだった。


「ひ、姫野って⋯⋯王子だよな?」

「返す前に挟んでたのか?」

「⋯⋯訳分かんけぇけど⋯⋯行くしかねぇのかぁ?」

「お前どうせ暇だろ、部活入ってないし」

「そりゃあまぁ⋯⋯」

「行ってみろよ、ついでにちゃんと謝った方がいいんじゃねーの?」


 ということで、公園へ行く事になった。

 そして現在の時刻を見ていると、6時11分。

 普通に寝坊した!!

 俺はただ、ひたすらダッシュをした⋯⋯。


「⋯⋯こない⋯⋯気づかなかったか⋯⋯」

「ぅぅううぉおおおおいいッ!!」


 めちゃくちゃ走った。

 そして今の時刻、6時23分!ふつーに遅刻!


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯悪い、寝てた!」

「いや、私の方こそすまない、突然呼んでしまって⋯⋯」

「⋯⋯で、用はなんスか?」

「えーと⋯⋯なんというか⋯⋯君、確か部活は入っていないよね?」

「え?あっはい」


 すると、ベンチに腰を掛けていた王子は立ち上がって、俺の方へ近づいてきた。


「えっな、なんスか!?」

「強制はしない⋯⋯だが、君の悩みも解決出来るかもしれない!」

「だからなに話てんスか!?」


 王子は俺の顔ギリギリまで来てピタッと止まった。

 そして、爽やかにこう言った。


「ラブコメ計画部に⋯⋯入らないかい?」

「おぉ⋯⋯ほへぇ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る