第8話 真実①

1週間ほどこの世界で過ごしている内に色々なことが分かってきた。


まずこの世界はかっちゃんの引越し先で東京だということ。

そして転校先の小学校には同級生として、僕も知ってる夢がいたということ。


ちなみに僕はここでは健ちゃんということになっている。


ここにいればなぜかっちゃんが急に引っ越したのか分かるかも…。


しかし夢…この頃は今と全然キャラが違うじゃねーか。

割とおとなしめというか、男子が話しかけると伏し目がちだし…こっちの方がいいな。

現世に戻ったらからかってやりてー。


しかしどうせなら二人ともっと親しい人物に転生してくれたら良かったのに。


健ちゃんは少し距離があるようだ。


しかし距離を縮める機会はすぐにやってきた。


休み時間に、次の時間に提出しなければいけない宿題をかっちゃんがしていると、不意に消しゴムを落としてしまった。


それを僕が拾うのだが、自転車の絵がプリントされた消しゴムだった。


成田自転車にはこれがたくさんあって、店を訪れたお客さんに配っていたのだ。


「珍しいね。そういえば家が自転車屋なんだっけ?」


僕が聞くと、僕から見てかっちゃんの奥にいた夢が僕をジッと見ながら「それは言っちゃダメ!」という表情をしてきた。


「う、うん…」


と、かっちゃんは言葉にならない声を発しながら僕の方は見ずにうなずいた。」



次の休み時間、廊下で会った夢は僕に事情を説明してきた。


かっちゃんの父が元々千葉で自転車屋をしていたこと。(これは知ってる)


しかし経営が上手くいかなくなり、赤字続きで父が外へ営業に行ってくると言ったきり蒸発したこと。


その後、母と共に母の実家があるこの街へ引っ越してきたこと。


急にいなくなったことも、先生からこれといった説明がなかったことも納得がいった。


それにここでのかっちゃんは以前より笑顔が減った気がする。



「ゴルフクラブはまだあるの?」


「えっ!?」


かっちゃんの驚く表情を見て僕はしまったと思った。


「いや、前の学校の友達とそんなことしながら遊んでたのがいい思い出だーみたいなことを夢ちゃんと…。」


「そんな話したかな…。」


「…してた、してた!!オレ聞いてたもん。」


かっちゃんがいぶかしそうな表情をしながら


「あるけど…それがどうしたの?」


「オ、オレも結構できると思うよ。かっちゃん最近なんか元気ないし、裏山で久しぶりに…。」


するとかっちゃんはますますいぶかしそうに


「健ちゃん…最近とか久しぶりとか…なんか昔からの知り合いみたい…。」



結局夢も誘って、3人で学校から500メートルほど離れた山道で、山頂(といっても100メートルほどだが)に置いた空き缶をゴールにゴルフコンペが開催された。


そういえば健ちゃんはこの2人とそんなに仲がいいわけではないので出だしは少し盛り上がりに欠けた。


まずは未経験者の夢からスタートした。

(健ちゃんもだと思うが…)


短いコースだがデコボコ道なのでボールが予期せぬ所へ飛んでいき、なかなかゴールに近づけない。


特に夢は何度も同じ木に当て続けて全然前に進めないでいた。


かわいそうなので僕とかっちゃんの同意のもと、一旦ボールを開けた道に戻してあげた。


とはいえ僕とかっちゃんもそんなに進んでいない上に途中カラスに襲われて、クラブを振り回して追い払ったものの、ボールをスタート地点付近まで戻されるハプニングもあった。


僕とかっちゃんがゴールの空き缶までお互い10メートルぐらいのところまで迫った頃にはもう結構日が暮れていた。


「どっちが勝ってもいいから早く終わらせて帰ろー。」


夢は途中で嫌になって観客になっていた。



コツン…。


先に当たったのは僕のボールだった。


「負けちゃった…。」


かっちゃんは口ではそう言っているものの、やっと終わったというような安堵あんどの表情だった。


「よっしゃー!地元でのリベンジを果たしたぜー!!」


と心の中で叫びながら僕はクラブを天にかざした。


かっちゃんはクスッと少しだけ笑った。


次の瞬間、僕の目の前の景色は波打って、僕はどこかに飛ばされるような感覚に陥った。


気付けば僕は自分の部屋のテレビの前に戻っていた。


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