第299話 新しい仲間

トールの嫁が増えて何日か経った。


夜の自由は相変わらず無さそうだけど、二人増えた割にはそこまで負担が増えた様子はない。


無論、毎朝戦士の顔をしてるのは間違いないけど……慣れかはたまた進化かそれはトールのみぞ知ることだろう。


「殿下、紹介したい者が居ます」


だからこそ、俺はそう言ってトールが男を連れてきたので思わず口にしてしまった。


「そうか……ついに同性も……」

「違いますよ。おかしな勘違いをしないでください」


いやぁ、だってトールから誰かを紹介される時って大抵新しいお相手だし、好色家が新しい刺激を求めてか、はたまた嗜好が変わって別ジャンルに行くという話もよく聞くしついね。


「誰が好色家ですか誰が」

「でも、世間一般ではそうカテゴライズされてそうだけどね」

「それ、人のこと言えますか?」


まあ、四人も婚約者が居る俺も内情を知らなければ好色家にカテゴライズされるのかもだが、目の前の天然タラシに比べたら可愛いものだろう。


「いえ、殿下の方が遥かに天然ですよ」


そんな不毛なやり取りをしてから、トールは仕切り直すように咳払いをするとその人物を紹介した。


「新しく屋敷に雇い入れる人材を連れてきました。名はリドイム。強さも申し分なく、背景も問題なさそうなのでご許可を頂けますか?」

「お初にお目にかかります。リドイムと申します」


……うん、デケェなぁ。


それが第一印象だった。


背丈的には180センチ後半くらいで、成長期のトールやレオニダスより少し低めに思えるけど、バルバンのように筋肉質で横幅があるから大きく見える。


いや、180センチ後半って十分大きいんだけど、俺の周りは高身長イケメンが多いからねぇ……低い俺がレア度高いくらいだ。


しかし、こうして直に紹介してきたということは……


「信頼できる逸材ってことでいいんだな?」

「ええ、バルバンさんからもお墨付きを貰ってます」

「なら、俺から文句はないよ。よろしくね、リドイム」

「……ええっと。雇ってもらう身で聞くのもあれですが……こんなあっさりいいんですか?」


俺があっさり許可を出したので、むしろ困惑気味なのはリドイムだ。


まあ、その疑問は当然といえば当然か。


素性の知れる人をこうもあっさり受け入れると言うのは不用心かもしれないけど、このイケメンはそこを間違えたりはしない。


「トールが直接連れてきてるからね。バルバンも認めたとなれば文句はないよ」


それに、俺を通してリドイムを見ている植物の精霊のリーファと火の精霊のフレアも問題ないと言ってるしね。


「それとも俺に牙を剥くために来たってことにしておく?」

「いやー、それはちょっと。せっかくの再就職先を追われるのは勘弁したいですね」


ごほんと、姿勢を正してリドイムは再び自己紹介をした。


「改めまして、リドイムと申します!前の職場でやらかして、路頭に迷ったところをスカウトされてやってきました!そばかすの似合う可愛い子がタイプです!」


ほほう、そばかすかぁ。


「何人か心当たりあるけど……紹介しようか?」

「是非とも!ちなみにそれは貴族のお嬢様……とかでしょうか?」

「いんや。肩書き的には平民の普通の女の子」

「お相手がいたりは?」

「しないと思うよ。ちなみにその子たちは筋肉質な人がタイプって言ってたっけ」


お忍びで出かけて知り合った子の中に該当しそうな子が数人居るので思い出しつつそう言うと、リドイムは実に嬉しそうに頭を下げた。


「それなら是非ともお願いします!」

「うん、空いてる時に連れてくよ」


というか、リドイムの容姿と体格なら普通に向こうも普通にOK出しそうだな。


俺の周りのイケメン達に比べると顔面偏差値では劣るかもしれないけど、普通に容姿は良い方だし、何よりも親しみやすさというか……愛嬌がある気がする。


大型犬のような感じといえば分かるだろうか?不思議と相手に愛着を持たせる要素を持ち合わせてそうだ。


無論、それだけでトールが連れてきたわけも無いだろうし、リドイムの実力も相当なものなのだろうが……そんな人材をどこから連れてきたのやら。


「時にリドイム、年齢はいくつ?」

「25歳です!」


なら大丈夫かな。


俺の周りは童顔な人も多いから、実年齢に近い感じなのも条件的には悪くなさそうだ。


後日、候補のお相手の元に連れていくとしよう。


そんな風に新しい仲間が増えた訳だけど、後で話を聞くに、どうやらリドイムは前のトリア絡みでトールが裏で暴れた件に若干関係のある筋から拾ってきたらしい。


何かと実力もあって、人柄も悪くないけど運に恵まれてないのか冷遇されてて、くだんの件で冤罪を被せられて職場を追われたのだとか。


本当にトールは面白い人材を見つけてくるよね。


悪くないけど。


ちなみに、屋敷にいる女性の中にも当てはまりそうな候補が居たんだけど、ほぼお相手が居るようで紹介することは出来なそうだった。


流石にラブラブカップルや夫婦の仲を引き裂いてまで紹介するような鬼畜な真似はしたくないし、そちらよりも脈のある方を紹介するに限るよ。

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