第291話 2カ国で開催
マルクス兄様から武闘会の話を聞いた翌日、今度はシュゲルト義兄様からダルテシアでも武闘会をやる事にした旨と協力要請が来た。
意外なことに大国ダルテシアでは武闘会やそれに準ずるものはやってない。
演舞の披露とかならあるけど、純粋に強さを競うものはあまりなかったりする。
「昔はあったらしいけどね」
義父様の前の前の前くらいの頃の話らしいが、当時のダルテシアと親交のあった国のやんごとなきお方がお忍びで出場して、不慮の事故で亡くなったそうな。
「まあ、暗殺だのなんだのと色々厄介なこともにもなったんだけど、何かと前々から問題が多かったようでね。丁度いいから金のかかるだけの大会は辞めようとなったらしいよ」
どれだけ気をつけようと、事故というのは起こってしまう。
例年、人死が多かったこともあって賛成に持っていきやすかった世情もあるのだろうとシュゲルト義兄様は付け加える。
「最もその次の国王が暗君だったから止めて正解だったとも言えるかもね」
暗黒期を経て、今のダルテシアはあるらしい。
「偉大な父を持つと苦労するけど、頑張らないとね」
「ですね。でもシュゲルト義兄様なら問題ないと思いますよ」
王太子として既にかなりの功績を上げてるし、次のシンフォニアの国王であるマルクス兄様とも密に連絡してるようだし、本当にやり手だと思う。
「優秀な義弟くんのお陰だよ。ところでエルダート君。今日はいつもの騎士くんは居ないんだね」
「ええ、休みなので娘を可愛がってる頃かと」
代わりに今日はレオニダスを護衛として連れてきてるけど、まだまだ甘いと判断されてるのかバルバンもそっと控えてる。
レオニダスの補佐のためだろう。
力は強いし人格も問題ないんだけど、護衛としては経験不足が目立つ……というのがバルバン評。
プロの世界も大変そうだけど、頼れる護衛二人なら特に問題ないだろう。
「初の子供ならそうなるのも仕方ないね。武闘会については話したの?」
「まだ話せてませんが、多分勘づいてます」
「勘づいてる?」
「ええ、そういう奴ですから」
誠に不本意ながら、ツーカーの仲というやつだろうか。
「なるほど。まあ、あの騎士くんはエルダート君を裏切らないだろうし問題ないかな」
「敵になったらこの世の終わりですよ」
敵に回したトールほど嫌な相手もいない。
どう考えても勝てないし、被害を最小限に減らせるように努力するしかないだろう。
「だろうね。そういえばこの後時間はあるかな?」
「多少なら」
「そっか。なら、父上に会っていてくれるかな?ここの所何かと気苦労が多かったようだから、エルダート君に会えば和らぐだろうし」
「レイナの方が効果がありそうですけどね」
愛娘に勝るものなし。
「娘婿殿もお気に入りのようだからね」
「光栄です」
丁度差し入れも持ってきてるし後で寄るとしよう。
「武闘会の時期はシンフォニアとは少しずらすことになると思うけど、諸々の準備は間に合いそうかな?」
「ええ、問題なく」
武闘会の準備と言っても、マルクス兄様やシュゲルト義兄様ほど俺はやることは多くない。
トールとフレデリカ姉様が万が一全力でバトった場合のための観客席用の防護系の魔道具もすぐに出来るだろうし、見せ物の魔法もいくつか候補があるのでそこまで練習も必要ない。
スケジュールを開けるのを忘れなければ特に問題ないだろう。
「頼もしいね。いつもながら」
「義兄様達には負けます」
その後、シュゲルト義兄様と軽く話してから、義父様の元に差し入れをして屋敷に戻る。
義父様や父様的にはどうやら武闘会のほとんどは跡継ぎであるシュゲルト義兄様やマルクス兄様主体でやる様に見守る姿勢の様子。
既に内外に次の王として知られてる二人だけど、泊をつける意味でも、次の王としての振る舞いなども見たいのだろう。
うん、そういうのを見るとやっぱり俺には王様は無理だな。
頼れるお兄様達が居てくれて本当に助かるけど、家族と婚約者に誇れる自分であらるように上を目指すちょっとの気合いと無理し過ぎないでのんびりまったりするという絶妙なバランスも忘れないようにしよう。
(しかし、優勝賞品か……)
昨日今日と兄様と義兄様と話して、二人とも優勝賞品について少し悩んでたみたいだ。
武闘会とは名乗ってるけど、優勝するのはトールかフレデリカ姉様のどちらかでほぼ確定。
別に商品が欲しい二人でもないだろうけど、金一封なんて与えてもそんなに喜ばないのは想像出来てしまうし、金一封以外に何かしら副賞あるいは選べるようにしたいご様子。
(トールも子供が増えて物入りなのに余裕だからなぁ)
それ相応の給料を払ってるからか、浪費癖などなく貯めてたからか、あるいはその両方か。
まあ、トールの場合副業でちょっと出掛けて高値の素材を狩ってこれるしお金に困ることはそうそうないだろう。
(少し考えてみようかな)
外向けと内向けで商品が違くなりそうな気もするけど、トールやフレデリカ姉様が欲しがるものなら何とかなるかも。
相談された訳じゃないので、あくまで作ってみて提案が妥当かな。
うん、そうしよう。
余計な気遣いだろうか?まあ、無駄になったらなったでどうとでもなるしあくまで念の為ということで。
何にしても武闘会が二回あるのだから、きっとトールとフレデリカ姉様も少しは落ち着いてくれるはず。
そうなったらいいなぁ。他力本願だけど出来ることはしようかな。
大きなイベントなら婚約者達と楽しめるし、家族との時間も出来るかもだしね。
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