第281話 マルクス兄様と釣り
なんちゃって王子な俺だけど、それなりに日々やる事とやりたい事が多かったりする。
未成年なので、多少は周りの大人達の手助けがあるからそれ程大変でもないけど、充実はしていると思う。
まったりマイペースに、でも日々精進も忘れない。
己の欲求に妥協はせず、それでいて婚約者達に惚れられるような己を目指すのは強欲だろうか?
うん、やりたいのだから仕方ないよね。
お仕事はきちんとして、それでいて今という時間を大切に。
そんな俺の仕事量を遥かに越える激務に居そうな我が兄のマルクス兄様なのだが、アマリリス義姉様という奥さんを迎えてから顔色が良くなってる気がする。
トールとはある意味真逆にも見えるけど、トールの場合は今くらいの方が無理せず日常を楽しめてるだろうし気にしない。
「悪いね、エル。付き合って貰って」
「いえ、久しぶりに兄様と遊べて楽しいです」
さて、今俺はマルクス兄様と一緒に釣りをしている。
放っておくと無理して働く我が兄の性質を的確に把握している義姉であるアマリリス義姉様の計らいによるものなんだけど、俺としては多忙なマルクス兄様と久しぶりに遊べてるので少し嬉しかったりもする。
ブラコンとシスコンを拗らせてると自負してるからね。
「エルの作った転移門で、前よりも家族で会えるようになったけど、こうしてエルとゆっくり過ごすのは久しぶりになっちゃったね」
「兄様はお忙しいですからね」
とはいえ、こうして遊ぶのが久しぶりなだけで、割と頻繁に会ってはいるはず。
たまに一緒にご飯も食べるし、仕事上の話とかだけじゃなくて空いてる時間に顔を出したりもしてたしね。
「お仕事の方は大丈夫ですか?」
「アマリリスのお陰でかなり楽になったよ。それに支えてくれる人が居るって安心感があるからね。前よりもやる気になってるよ」
お身体にはお気をつけください。
思わずそう言いそうにもなるけど、アマリリス義姉様がいれば心配無用かな?
「エルこそ大丈夫かい?色々と僕らが頼っちゃってるから大変じゃないかな?」
「大丈夫ですよ。それに頼られるのは嬉しいですから」
俺に出来ることで、家族の役に立ててると思うと悪い気になるわけが無い。
それに、やってる事もタクシーとかトラック(ちょっとした物資やちょっと重要そうな品の輸送)くらいだし、大変ということもない。
「エルは本当に優しいね」
「マルクス兄様程ではないですよ」
「僕は普通だと思うよ」
「じゃあ、俺も普通だと思います」
そう言ってからくすりと笑い合う。
「何かあったら遠慮なく相談してよ。僕は、エルみたいに魔法を使えるわけじゃないけどこれでもエルの兄だからね」
その優しいお言葉だけで俺としては報われた気がしますよ。
「あ、兄様。竿が引いてますよ」
「本当だ。久しぶりだから上手く釣れるかな」
そう言いつつも上手いこと釣り上げるマルクス兄様。
釣りは川に行けるようになってから、1度か2度ほどしかしてないはずだけど、全くブランクを感じさせない上に大物を釣り上げる辺り、基本スペックの差をヒシヒシと感じる。
まあ、今更だよね。
気にしない気にしない。
「良い場所だね。凄く釣れる」
「せっかくですし、少し食べますか?」
「いいね。手伝うよ」
川魚は塩焼きにすべし。
昔誰かが言ってた気がするけど、それとは関係なく鮎とかの塩焼きは美味しいので現地での楽しみにしている。
「エルは本当に昔から器用だよね」
「そうですか?」
「うん、多芸だし本当に自慢の弟だと思ってるよ」
……あの、そういう事言われると凄く照れるのですが……うーん、流石マルクス兄様。
本心なのがよく分かる笑みだ。
「やっぱり釣った魚をその場で調理して食べるのはすごく贅沢だね」
「釣った人の特権ですからね」
海とかだったら、もっと楽しいだろうけど川釣りも悪くない。
「エル。僕たちに子供が出来て大きくなってきたら、こうして遊びに連れてきてあげてくれるかな?」
「勿論ですよ」
まだ見ぬ可愛い甥姪に心が浮き立つ。
フリード、リルカと可愛い甥と姪がいるけど、レフィーア姉様のお腹の中にも新しい子がいるし、更にラブラブなご様子のマルクス兄様とアマリリス義姉様の子供まで出来たら絶対可愛がると思う。
甥や姪ってめちゃ可愛いからね。
「お願いね。エルも結婚したら難しくなるかもしれないけど、きっと僕らの子はエルに懐くから」
「そうですか?」
「うん、絶対そう。僕らの子だからね」
謎の確信を持った言葉だけど、本当なら嬉しいなぁ。
懐かなくても、構っちゃいそうだけど。
「今度は父上とも一緒に来たいね」
「ですね」
現実問題、現国王である父様と王太子のマルクス兄様が一緒に休めるかは微妙だろうけど、男家族で釣りも悪くないと思うので賛同しておく。
ジーク義兄様やシュゲルト義兄様、それに義父様もこういう事に誘いたいけど、忙しいだろうしそれはそのうち叶えばかな。
そんな風に兄弟で釣りを楽しんだのだけど、この後この事を知った姉様達から、同じように時間を作って欲しいと頼まれて何日か姉弟で過ごしたりもしたけど、俺得なので特に問題なかったりもする。
役得だね。
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