第278話 リリ姉様の子

リリアンヌ姉様が女の子を産んだ。


知らせを受けて、落ち着いた頃にトールと様子を見に行くと元気そうな姉様の顔を見ることが出来た。


「リリ姉様、体調は大丈夫ですか?」

「……うん、もう平気。ありがとうエル」


リリアンヌ姉様が嫁いだのは、ダルテシアの隣国のマージリク王国のエスデリア侯爵家。


侯爵夫人となった姉様だけど、相変わらず本が大好きなようで変わりなさそうだ。


まあ、俺の本でいいのか疑問ではあったけど、喜んで貰えてるし良かったのかな?


「……絵本、ありがとう。リルカが分かるようなったら読み聞かせるね」


リルカというのが、リリアンヌ姉様の子供の名前。


早速顔を見せて貰ったけど、目元や髪の色なんか特に良くリリアンヌ姉様に似てる気がする。


まだ生まれたばかりだけど、俺には分かる。


きっとこの子は美人になるな。


「可愛いですね。姉様とよく似てます」

「……そうかな?」


少し嬉しそうな様子のリリアンヌ姉様。


「……でも、子供がこんなに可愛いとは知らなかった」

「そういうものですか」

「……うん。でも、私よりもフォージーの方がこの子にメロメロ。時間が空く度顔を見に来てるし」


フォージーというのが、リリアンヌ姉様の夫のエスデリア侯爵家の当主様。


姉様と同じように本が好きな人なんだけど、どうやら生まれてきた娘にすっかり心を奪われてるようだ。


「……ちょっとジェラシー」


そう言いつつも、愛おしそうに我が子を見るリリアンヌ姉様。


なるほど、夫婦揃って初の子に心を奪われてるのか。


いい事だ。


「あうー」


タイミングが良かったのか、俺たちが来た時にリルカは目を覚ましており、先程から視界に入った時に俺に反応してる気がする。


「……抱いてみる?」

「いいんですか?」

「……エルは抱き方分かるからいいよ。この子もエルに興味津々だし」


そう言われたので遠慮なく姪を抱っこする。


フリードの時も思ってたけど、やっぱり子供は凄く可愛い。


「あうあー……きゃっきゃ」


じーっと俺を見てから、楽しげに笑うリルカ。


それだけで俺も心を持ってかれそうになる。


あかん……姪が可愛すぎる。


「……ふふ、お母さんに似てエルが大好きみたい」

「嬉しいです」

「……でも、フォージーに見られたら嫉妬されそう」

「気をつけます」


初のわが子で、それが娘なら親バカな父親ならきっとあれこれと思うこともあるはず。


普段は穏やかな人だからこそ、気をつけないとね。


まあ、それはそれとして、姪のリルカが凄く可愛いので、ちょいちょい様子は見に来たいかな。


「……そういえば、騎士くんもお父さんになるんだってね」


そうして姪と触れ合っていると、トールを見てふとそんな事を言うリリアンヌ姉様。


「……おめでとう、頑張ってね」

「ありがとうございます、リリアンヌ様」


……そういえば、この二人が話してるのを見るのはかなりレアかもしれない。


フレデリカ姉様やレフィーア姉様ほどアグレッシブじゃないから、接する機会が少ないのかもしれない。


それもリリアンヌ姉様の良いところだけどね。


「父様達はもう来ましたか?」

「……後でくるって。先にお母様とレフィーア姉さんが来た。あれ、便利だね」


転移門をこの家にも設置したのだけど、早速役に立ったようだ。


良かった、良かった。


「う〜」


そんな風に話しつつ、リルカを抱っこしていると、少しぐずるリルカ。


おしめかな?それとも母乳の時間?


「……眠いみたい」


どちらでもなかったけど、リリアンヌ姉様はリルカを受け取るとぐずるリルカを優しく落ち着かせて眠らせてしまった。


母親とは凄いものだ。


「お邪魔にならないよう、また来ますね」

「……うん、お土産も楽しみにしてる」

「絶賛執筆中なのでおまかせを」

「……楽しみ」


作家ではなかったんだんだけどなぁ……まあ、リリアンヌ姉様やその旦那さんが気に入ってくれてるし頑張るけど。


絵本もリルカ用に色々描いてみてるけど、商品にしてるのは半分もないかもしれない。


フリード用にも色々用意はしてたけど、フリードは何でも喜んでくれるからなぁ……本当に可愛い甥だ。


「……そうそう、フォージーも会いたがってたからそっちもよろしく」

「了解です」


そういえば、最近あまり会えてなかったな。


転移門の設置の時に会ったけど、あまり話す時間もなかったし、また時間を作るとしよう。


可愛い姪も増えたし、リリアンヌ姉様に会いに来る楽しみがまた増えたと喜びつつ、今はぐっすりと寝始めたリルカの邪魔をしないように退散することに。


それにしても、あっという間にリリアンヌ姉様もお母さんになったなぁ。


気がついたらそうなってたから、フレデリカ姉様もそうなるのだろうか?


想像つくようなつかないような。


きっと、あっという間にそうなるだろうし、女性とは凄いものだ。


赤ちゃんのうちに可愛がるのもいいけど、大きくなって話せるようになって遊ぶのも楽しみ。


その頃にはトールの子もそれなりになってるだろうけど、俺も結婚してる頃かな?


先の楽しみが多くてやる気がますます出てくるけど、のんびりと自分のペースも守りつつ頑張ろう。


なお、後日、レフィーア姉様がフリードを連れてきて兄妹のような微笑ましいやり取りもあったそうな。


くっ、見損ねた。


まあ、今度見れるのを楽しみにしておこう。

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