第262話 ジーク義兄様のお礼

バリトン子爵の屋敷をあとにして、ジーク義兄様の屋敷に転移すると、甥のフリードが近くにいたので少し戯れる。


転移門ができる前から、屋敷が隣ということもあってレフィーア姉様やフリードとはよく会ってる気がするけど、子供の成長の速さには驚かされる。


俺もこんな風に成長……いや、俺がこの歳の頃はこんなに賢くはなかったよな。


次期公爵家当主というのもあるけど、優秀で可愛い甥は叔父さん自慢です。


フリードと戯れてから、ジーク義兄様の執務室に向かうと、そこでは待ってたようにジーク義兄様とレフィーア姉様がお茶を用意して寛いでいた。


……うん、ていうか、待ってたよね。


座るようにレフィーア姉様が隣の席を刺してるし。


フリードと戯れてるのを使用人から聞いて待っててくれたのかな?


だとしたら遅くなって申し訳ない。


「今回はすまなかったね、エル」

「いえ、お役に立てなら良かったです」


座り心地よいソファーに座って、良い香りの紅茶を一口。


あ、これ美味しい。


クッキーも俺の好きなやつだし、流石レフィーア姉様セレクション。


「さて、疲れてるところ悪いけど一応報告を聞いてもいいかな?」

「勿論です」


とはいえ、そこまで取り立てて何をしたという訳でもないので、昨日水を大量に生成したことと、今日の精霊魔法による回復によって、水不足の解消は完了したということを手短に話す。


それと、火の精霊のフレアのことも。


秘密という訳ではないし、家族になら話しても問題ないので、リーファの時と同じようなノリで話してみると、ジーク義兄様はかなり驚いたようで感心したような表情をされた。


「精霊が見えて、会えたってだけでも凄いのに、火の精霊にも気に入られたんだね」

「ふふん、私の自慢の弟だからね」

「そうだね、驚く方がおかしいかもしれないね」


何故かドヤ顔のレフィーア姉様に優しい笑みを向けるジーク義兄様。


夫婦円満なようで喜ばしい。


「何にしても大事になる前に収めてくれて助かったよ。バリトン子爵の領地が荒れると他所からいらないちょっかいが来るだろうし」


周辺国全てが仲良しという訳にもいかないようだ。


ジーク義兄様達も大変そうだし、出来ることはお手伝いする所存。


「有難いけど、エルに頼りっぱなしというのも兄としての沽券に関わりそうだ。まあ、私よりもマルクスくんの方がそれはありそうだけど」

「マルクスは真面目過ぎるからねー」

「君の弟は良い子ばかりだからね」

「あら?私は良い子じゃないのかしら?」

「素敵な私の妻だからね」

「ふふ、そっかー、なら仕方ないわねー」


本当にラブラブだなぁ。


俺が結婚するまでに甥や姪がまた増えそうだし楽しみにしておこう。


シスコンとしては姉のラブをどう見た方が正解なのかは分からないけど、この幸せそうなレフィーア姉様の様子を見れば喜ばしい限り。


本当に良い人に巡り会えたものだと思う。


それは他の姉様やマルクス兄様にも言えるか。


特にマルクス兄様はアマリリス義姉様と出会えて心底良かったと思う。


頑張りすぎる人だから、アマリリス義姉様のような人にこそ支えて欲しかったしね。


「あ、そういえばお土産あるので後で食べてください」

「わざわざありがとう。バリトン子爵の領地の特産品かな?」

「見てのお楽しみです」

「エルがそう言うってことは……甘いものね!」


何故バレた。


流石レフィーア姉様というべきか。


「内緒です。フリードも気に入ると思いますよ」

「エルの持ってくるものはハズレがないから楽しみだよ。そういえば面白いものを作ってるみたいだね」


何のことか少し考えてから、あれの事かと思い当たって頷く。


「完成したらご招待しますので」

「楽しみにしてるよ。あ、そういえばエルに今回のことのお礼もちゃんとしないとね」

「いえ、勝手にやっただけですから」


本当に水を大量に生み出してヒャッハー!してから、精霊魔法を使ってはっちゃけて、火の精霊のフレアとも会えたのでむしろプラスしかない。


……崇められたのはノーカンで。


うん、きっとすぐに皆目が覚めてくれるよ。


……多分。


「実はもう用意しちゃっててね。受け取って貰えたら嬉しいんだけど……どうかな?」


断る前に既に用意してくれる辺り、俺の性格をよく理解してるなぁと思う。


「分かりました。遠慮なく受け取ります」

「うんうん。じゃあこれを」


そう言って渡されたのは古い本。


文字が今のものじゃないな……これは、古代亜人文字のやつっぽい。


俺の素の実力だと、簡単にしか読めないこの文字だけど、リーファとの繋がりを介すことで全て読むことができるのは良いね。


ありがとう、リーファ。


『いえいえ』

『ボクも読めるんだけどー』


分かってるよ。頼らせてもらうね。


『どんどん頼ってよ!にっしっしー』


チート過ぎるけど二人の精霊に側にいて貰えるのは心強い。


これからも仲良くしたいものだ。


「読めるみたいだね」

「ええ、内容も興味があります。ありがとうございます、ジーク義兄様」

「うんうん。実はエルが欲しがってた獲物をエルの屋敷に送ったんだけど……それも是非受け取って欲しいかな」


本当にジーク義兄様らしいけど、嬉しいので遠慮なく貰います。


その後、ジーク義兄様とレフィーア姉様と軽く話してから屋敷に戻ってのんびりするけど、やっぱり我が家が一番だね。


頑張った甲斐があるよ。

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