第257話 麗しの水の精霊さん(イメージ補正あり)
「ところで、フレア。先程水の精霊の代理と言ってましたが……」
「あー、うん、リーファの想像だよ。恥ずかしがってね〜」
「相変わらずのようですね」
「だね〜」
たははと笑うフレアと、仕方ないと笑うリーファ。
俺から離れる様子なくそう話すのは、もしかしなくてもここには来てない水の精霊ご本人のことだろう。
「すみません、エルさん。本当なら水の精霊本人が来るべきなんでしょうけど……その、少し人見知りというか、恥ずかしがり屋でして」
「いや〜、ボクでもたまに会ってくれないからね〜。凄く良い子なんだけどね〜。エルくんならそのうち会えると思うから、その時は優しくしてあげてね」
「勿論」
水の精霊ということは、水を司っている精霊ということ。
つまり実質俺にとっては神、あるいはアイドルなどの意味合いの推しに辺ることになる。
神聖で崇拝するまだ見ぬ水の精霊様……凄く楽しみだ。
俺なんかを崇めるくらいなら絶対その精霊さんを崇めるべきだよ。
あと、リーファとかフレアみたいな他の精霊さんでもおk。
「心做しかエルくんがボクらよりもあの子に興味津々に思える」
「エルさんにとっては、水というものが特別ですからね」
「そうなの?」
「繋がりから探れば分かりますよ」
「それもそうか。じゃあ失礼して……あー、なるほど、転生者なんだね〜。ふむふむ、へー……」
あっさりと前世のことを把握されてしまったけど、まあ、フレアなら問題ないだろう。
リーファの様子を見ても、こうして繋がりを介してもその心根の良さが伝わってくるし。
「なるほどね〜、エルくんもなかなか大変な経験してきたんだね〜、でもこういう転生者は珍しいかも」
「そうなの?」
「うん、生前の心残りとかを次の生で満喫する人は割といるけどね〜。ボクが知って人だと、魔物になりたいって言って本当に魔物になって、世界を救った人も居たねー」
……うぅんと、魔物になって世界を救ったってどういう事かな?
深く考えない方がいいかも。
「水の精霊さんはこの近くには居ないんだよね?」
「うん、でもそう遠くでもないよ〜。あの子は昔から恥ずかしがり屋だったけど、ムッツリでもあったからね〜、いてっ」
リーファが軽くデコピンをして、フレアを黙らせた。
「誤解を招く言い方をしないように」
「事実じゃん〜」
傍目から見ると、しっかり者の姉と少し生意気な妹の組み合わせにも見える。
まあ、言葉にはしないけど。
というか、伝わってそうだし。
それだけ繋がりというのは強いものだからね。
「エルさん、水の精霊のことですが、あの子は自身はきっとエルさんに凄く感謝してると思うんです」
「そうそう、近くにいたボクが保証するよ」
「ただ、だからこそ恩人のエルさんに会うのに照れてしまってるのだと思います」
「顔も見れないくらい真っ赤だったね〜。あれは恋する乙女の顔と断言するよ」
「ということです」
どういう事かはさておき、嫌われてないのなら良かった。
「嫌うわけないよ〜。無自覚な精霊タラシだな〜」
……いや、何故そうなる?
「時期が来たら、ボクかリーファが中継して会わせることになると思うけど……案外、エルくんがあの子の元にふらりと入り込むのが先かもね〜」
「それも有り得ますね」
そんな簡単にエンカウント出来るものではなさそうだけど、まあ、楽しみにしておこう。
「ちなみにエルくんはリーファみたいなお姉さんタイプが好き?もしそうなら、ボクもそうするけど」
「リーファは確かに魅力的だけど、フレアはフレアでそのままでいいと思うよ」
成長したフレアは確かに美人さんだろうけど、この姿の方がしっくりくる。
「そ、そうかな?うん、ならこのままにするね」
「私もそうします」
少し照れたのかはにかむフレアと、静かに微笑むリーファ。
聞いてはいたけど、姿を自在に変えることまで出来るのだから精霊とは凄いものだ。
「あ!そういえば預かり物があるんだった!」
ふと、思い出したのかフレアが何かを取り出して渡してきた。
これは……水筒だろうか?
しかも氷で出来た特別なものだと分かる。
中身もあるけど、外側は冷気を纏って溶ける様子のない見事な氷性の水筒で、中身も入ってるようだ。
「エルくんなら気に入ってくれるかもって、言ってたよ〜」
氷の水筒自体が、素晴らしい品だけどそれ以上に中身を確認して腰が砕けそうになった。
透明度が完璧な澄んだ不純物の一切ない完璧な水。
一口飲むとその変化する味わいに思わず涙が出てくるような美味しい水。
これが……水の精霊様の力か……
「うーん、分かってたけどちょっと複雑」
「エルさんらしいですけどね」
あ、いや、二人の力も凄いと思うよ勿論。
ただ、俺が水フリークなだけだから、気にしないようにして貰えると助かる。
空間魔法の亜空間に保存しなくても、どうやらこの氷の水筒は精霊魔法の応用で作られた特殊なもののようで溶けることはないらしい。
それでも、こんな素晴らしいものは大切に保管してゆっくりと味わいたい。
素晴らしい贈り物に感謝しつつ、まだ見ぬ麗しの水の精霊様にいつか会いたいものだとしみじみ思うのだった。
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