第248話 リーネ効果
リーネが来てから、一週間ほど。
すっかり屋敷に馴染んだ様子のリーネだけど、大人しそうに見えて中々好奇心旺盛なご様子。
今も、我が家自慢の池に飛び込もうとした所を、メイドの一人が掴まえていた。
確か、あのメイドさんは、俺を神か何かのように敬う連中の一人で、バルバンに密かに好意を寄せているメイドさんだったかな?
バルバンはスラムの頃からそうだったらしいけど、かなりモテるらしい。
まあ、当の本人は亡くなった嫁さん一筋なので、相手にすることもしないらしいけど、そんな鉄壁バルバンが一番心を許してそうなのがそのメイドさんであった。
リーネの件で更に仲良くなったようだけど……演技でリーネと仲良くしてる訳ではないようだし、根っからの子供好きなのだろう。
そういう意味でもバルバンとはお似合いな気もするけど、余計なお世話はしない。
トールになら遠慮なくするけど、亡くなった奥さんを想い続けるバルバンの想いを邪魔する気はない。
一途でいいと思うし、そこまで想えるのは純粋に尊敬できる。
そんなバルバンをそのメイドさんが落とせるのかは定かじゃないけど、バルバンの心を解きほぐして支えられるのなら俺から何か言うこともないだろう。
「リーネ、あそこは我らが神の神聖な場所なので入ってはダメですよ」
「かみさまの?」
「そうです、だから他の場所で遊びましょうね」
「はーい」
……うん、素直で良い子なのはいい事だよね。
それはそうと、リーネに俺の事を神様と言うのはやめてくれない?
最近ガチでリーネが俺の事を『かみさま』と呼びはじめたから。
「……殿下、僕も神様扱いしましょうか?」
「はっはっは。そんなことしたら、うっかり奥さんたちに『ハイパー子供が出来やすくなる薬』を渡しちゃうかも」
なお、『子供が出来やすくなる薬』と『スーパー子供が出来やすくなる薬』は既に存在がバレてトールの嫁たちに渡っているのだが、それはそれ。
植物の精霊のリーファのお陰で、色々と天然の素材で作れるので非常に助かってます。
『いえいえ。それほどでも』
満更じゃなさそうだけど、俺も本音なのできちんと気持ちは伝えておく。
『将来、エルさんが必要になるものでもありますしね』
無理に使う気はないけど、成人してレイナたちが気にするようなら気休め程度ではお世話になるかもしれない。
「それにしても、あのメイドさんに懐いたけど、嫁さん達は大丈夫そう?」
「……以前にも増して好戦的と言えば分かりますか?」
うん、大体察した。
当初はクレア達が世話する予定だったけど、予想外にあのメイドさんに懐いたので、たまに相手をする程度になっているトールの嫁たち。
それはそれとして、子供というのは可愛い。
お腹にトールの子を宿しているクレアはこれから産まれてくる我が子のことをより一層考えるようになった程度だけど、ケイト達は無論それ以上に影響を受けていた。
クレアに代わり、夜の主戦力になっているケイトを筆頭に子供欲しい欲が高まってるようだ。
控えめなピッケでさえ、リーネの影響を受けてトールに控えめな誘いをした程だ。
流石にシールはあと数年は我慢してもらうけど、それでも子供を見て自分のときを今か今かと待ちわびてるようにトールに視線を向けていた。
「んで?ピッケに癒されたの?」
「自分でもびっくりするくらい、求めてしまいました……クレアやケイトの時と少し違うんですが、何故でしょう……?」
それはね、あの二人ほどピッケが積極的じゃないからだろうね。
それにしても分かっていたけど、やっぱりピッケとも寝たのか。
「結婚式前に子供できたりして」
「ははは」
乾いた笑みを浮かべるトール。
あり得ると直感してるのだろう。
まあ、それでも責任取れるし問題ないのだろうけど。
「かみさま!」
そうしてトール話していると、メイドさんに連れられてリーネが駆け寄ってくる。
「リーネ、そろそろおやつだから手を洗ってくるように」
「はーい!」
元気な返事だ。
子供らしくて大変よろしい。
おやつの時は俺の部屋によく来るけど、きっと一番良いものが俺の元に来ると分かってるのだろう。
しかし、こうして接してるとやっぱり子供とは可愛いものだとしみじみ思う。
フリードの件でそれはよく知ってるつもりだったけど、女の子も悪くない。
男の子と女の子、それぞれに違った良さがあるけど、可愛いという共通点もある。
子供というのは不思議なものだ。
俺の婚約者たちも、リーネを見て俺に将来の子供の話をしてくるくらいだ。
これでもかなり自分の中では色々考えているつもりだったけど、婚約者たちの方が未来の子供のことを考えているようだ。
まあ、その前に結婚式とかあるんだけど、それにしても息子だったらトールに鍛えてもらうというのは少し過酷では?
フレデリカ姉様の方がきっと分かりやすく教えてくれると思うんだ。
まあ、トールはウッキウキで参戦してくるだろうけど、無茶はさせないように。
そんな事を思いながらリーネとおやつを楽しむのだった。
しかしアイリスほどでは無いけど、美味しそうに食べるなぁ。
いい事だ。
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