第237話 シールの仲間入り

「聞いてるか分からないけど、トールには今三人の妻がいる」

「知ってます。末席に加われるように頑張ります」


やる気は十分なようだ。


「トールは真面目だから、未成年の今の君を妻に迎えることはしない。それも分かるかな?」

「はい、勿論です」


普通なら未成年との結婚しないなんて、当たり前といえば当たり前だけど、その辺が破綻している貴族も居るそうだ。


むしろ未成年が良いという変態も居るらしいが、俺の知る限りではシンフォニアとダルテシアにはそういう輩は居なかった。


父様と義父様の影響だろうか?


何にしても頼もしい限りだ。


シールは痩せているけど容姿は悪くないし、むしろそういう変態に売られなかったのが奇跡と言えるかもしれない。


「だからこれは提案だ。トールの妻候補としてあと三年……我慢出来るかな?」

「何年でも待ちます。トール様のお傍に居れるなら」

「よろしい。じゃあこの屋敷で暮らすといい。仕事はそうだな……トールの奥さんの一人が妊娠したからお世話をしつつ、色々とトールの妻になる心構えを聞くといい」

「精一杯励みます」


うむうむ。


そうして話をつけてから、クレアたちにシールを紹介する。


ピッケは祖父母の屋敷だし、後日になるか……まあ、きっと大丈夫だろう。


意外と面倒見の良いクレアに、フレンドリーなケイト、そしてトールの癒し枠のピッケの三人にプラスでシールが入る。


四人か……増えるなぁ。


流石はうさ耳イケメン騎士様。


「殿下、即答はどうなんでしょうか?」

「俺に振るとこうなるのは分かってたでしょ?」

「ええ、まあ……即答はされるとは思いませんでしたが」


そもそも、トールは気になる相手じゃないとこうしてきちんと向き合おうとはしない。


ただの憧れ、一時の気の迷いには慣れてきってるし、更に言えば自分への好意だけなく、妻たちと仲良くできるかも考えており、ついでに俺に害をなさないという条件もあるようだが、それら全てをくぐり抜けたシールには資格があると思う。


「早速クレア達にも馴染みそうだし良かったじゃん。年下の可愛い奥さんも欲しいでしょ?」

「その言い方はどうなんでしょう」

「トール的にも、あの子に気になるものがあるから連れてきたんでしょ?」

「ええ。何となくですが」


なら、シールが年頃になって気持ちが変わらないならトールが娶ればいい。


嫌じゃないし、受け入れられるならそれでいいと思う。


「初恋を奪った罪は大きいよね」

「その言い方はズルくないですか?」

「事実だし」

「それだと、殿下はアイリス達からも初恋奪ってますよね?」

「責任取るし問題なし」


それでもアイリス達の初恋と考えると不思議と嬉しい気持ちなるの俺はチョロいのだろうか?


それにしても、実に楽しそうにクレア達と語ってるな。


トールの話でこれだけ盛り上がれて、仲良くなれるなら心配は無用と言えるだろう。


「とりあえず、諸々の件は承知したけど、あんまり派手にやり過ぎるなよ」

「その辺はダルテシア国王とジーク様次第かと。この国の民ではなくても、あのような悪逆非道は許せないでしょうし、何よりも殿下を狙ったことがお2人を更に燃えさせたことでしょうし」


義父様もジーク義兄様も優しいからなぁ。


レフィーア姉様や甥のフリードには俺が狙われていたらしいというのは言わない方がいいな。


無用な心配かけちゃうし、俺自身は別に何も無かったし何とも思ってなくても優しい家族に気苦労はかけたくないしね。


「じゃあ、明日はピッケに報告頑張ってね」

「楽しそうですね」

「そりゃ、親友の幸せは俺の幸せってね」

「いえ、『面白くなってきた』と、顔にバッチリ書いてますから」


何故にバレたのやら。


どちらにせよ、トールが選んだ相手のようだし、屋敷にも馴染めそうなので俺としては悪いことではないと思う。


アイリス達とも歳が近く仲良くなれそうだし、何よりもトールへ向けてる愛情は本物だ。


きっとトールを慕う年下妻ポジションとして申し分なく育つだろうし、トールにしても幅広い年齢層の妻が居た方がきっと良い。


俺?これ以上は増えなくていいかなぁ。


アイリス、レイナ、セリィに……アイーシャ。


慕ってくれる素敵な女の子が四人もいて、俺もその子たちを心から慕っている。


これ以上は求めないよね。


トールと違って俺は素でモテるわけでもないし、その辺は大丈夫なはず。


「きっと、あと三年でトールが惚れる女の子になると俺は思うよ」

「そうなれば凄いですね」

「信じてないだろ?女の子は化けるから気をつけてないと直ぐに食べれるぞ」

「食べ……いやいや、シールはそんな事はしないですよ……うん、大丈夫なはずです……」


クレア達のようになると俺は予想しているが、そんな予感がトールにも湧いたのか若干どうしようという顔をしていた。


まあ、絶対トールはそのシールを受け止めるだろうなぁ。


俺の元に連れてきた時点で決まっていたその運命だが、三年後成長したシールがトールの四人目の妻としてきちんと嫁ぐのは語るまでもないだろう。


今の俺からだともう少し先の話だけど、必然なので驚きはないと言ってよく、そしてトールに向けられる重い愛が増えるのもまた必然。


愛されてるうさ耳イケメン騎士様に敬礼。

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