第283話 プール

海のある街をきちんと攻略してない中、俺は中途半端に海を知ってしまった。


シンフォニア王国の未開地で、海と山と砂漠に囲まれた文字通りカオスな場所を見つけたけど、まだまだ屋敷などは作れてない。


少しづつ人の出入りできるルートを開拓するのと、山方面は俺がトンネルをそのうち掘ることになりそうだけど、それはそれとして俺はきちんと海のある街は攻略しておきたい。


とはいえ、そのためにはもう少し時間が必要。


何かと忙しい時期でもあるし、もう少しで勉強の方は一段落するから時間も取りやすくなる。


さて、そんな中で俺はついに屋敷を貰ってからずっと作っていたものが完成したのではしゃいでいた。


「殿下、これがプールですか?」


思わず奇妙な踊りをしそうになっている俺とは対象的に冷静にそう尋ねてくるトール。


そう、屋敷にプールを作っちゃいました!


金持ちの所業だけど、水資源は比較的豊富な場所だし、折角ならと頑張ってみた結果我が家にプールが出来た。


拘りに拘り抜いた結果室内プールと屋外のプール、そして何故かウォータースライダーも作っちゃいましたよ!


いやぁ、頑張ったなぁ。


「しかし、こんな物なくても殿下は海を見つけたんですからそちらで遊んでは?」

「トールよ、貴様は何も分かってないのだな」

「殿下の変な拘りを気にしてたらキリがないですから」


全く、無粋なやつめ。


この素晴らしさが分からないとは。


『トール殿。こうした物は家にあるだけでステータスになるのですよ』

「おお、ラムネはよく分かってくれてるなぁ」

『当然のことです』


俺とラムネが握手をすると、トールはため息混じりに言った。


「それで、こんな大きくて広いもの作ってどうするんですか?」

「泳ぐに決まってるだろ?」

「泳げるんですか?」

「昔は風呂で練習したものよ」

「迷惑なので止めてください」


今でもしてるように思ってるのならそれこそ心外だ。


そういうのは子供のうちだけの特権なのできちんとその辺は配慮している。


それに、していた時にもきちんと一人の時間を選んでやっていたさ。


まあ、俺の場合一人で入っていると何故か高確率で姉様か母様が乱入してくるので少し大変だったけど……前世の知識で何とか練習を重ねてみた。


まずは水に顔をつけるところから始まり、バタ足の練習を壁に掴まって行い、姉様に引っ張って貰ってクロールの練習やバタ足のタイミングと息継ぎもマスターした。


最終的に、クロールらしきもの、平泳ぎらしきもの、背泳ぎらしきもの、更にバタフライらしきものまでマスターした俺は前世で習い事として水泳をやってたら授業でちょっと自慢できるくらいのレベルではあったと思う。


誇れるかどうかは別にしても、泳げるようになるとやはり楽しい。


前世では水に触れることすら出来なかったのだから凄い恵まれてると思う。


「そういえば、トールとアイリスは泳ぐの上手かったよね」

「ええ、魚を取るために練習したので」


あれは確か、シンフォニア王国から姉様に会いにダルテシア王国に向かっていた時のこと。


川で魚を取るためにトールが素潜りを練習していたのはよく覚えいる。


というか、トールの場合初めから本能で泳ぎ方を知ってるように潜ってたよね。


深い川でしばらく浮いてこなくて死んだのかと思ったけど、何匹か魚を捕まえて戻ってきた時には驚いたものだ。


「いえ、殿下は驚いてませんでしたよ。というか、僕のことなんて気にせずにアイリスとイチャイチャしてましたよね?」


そんな事は……あるのだが、まあ、それでアイリスも魚を捕まえるためにメイド服を脱いで素潜りしたのだけは何故かよく覚えていた。


別に子供の頃だし、ドキドキするようなことはないはずなのだが、とりあえずアイリスには人前では絶対に脱がないようにきちんと言った俺は偉いと思う。


幸い、その時の護衛達も俺が睨む前に皆別方向に視線をやってたし、問題ないはず。


ロリコンも居なかったし、良かった良かった。


「それにしても、泳ぐだけならもう少し小さくても良かったのでは?あの謎の高さの建造は何なんですか?」

「ウォータースライダーという素敵な発明品さ」


前世ではモニター越しにしか見たことがなかったけど、作りたくなったのがウォータースライダーだ。


きちんと安全性を確認しつつ作ったのでそれなりに時間はかかったけどかなり良い出来だと思う。


水面への着地もきちんと考慮しており、安全に楽しめるはず。


「あとは水着の完成を待つばかりだな」

「あの下着のようなものを本当に着せるのですか?」

「誰にも見せないし、婚約者達は俺が独占するから、トールも遠慮せずに嫁たちを独占するといい」


この世界で、プールを持つような貴族はほとんど居ない。


水着という文化もなく、また人前で肌を晒すの自体あまり推奨されてないので紛れもなく俺だけで独占するためにこうしてわざわざ外から見えないようにしたのだが、まあ、それはそれとしてトールも嫁たちと楽しむといい。


クレアは……まあ、出産後にトールが大変になりそうだけど、トールの問題なので俺は知らない。


バルバンやレオニダスも所用で少し出てもらってるから、帰ってきたら家族で楽しむといいと誘ってみよう。


プールの完成よりも少し遅れてるけど、婚約者達への可愛い水着もきちんと準備してるので完成が楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る