第230話 裏ルートの成果
ふっふっふ……ついにきたぞ!
そう叫びたくなる気持ちをぐっと堪えて俺は届いたそれらを眺める。
前々から存在は確認できており、少量なら手に入りそうだったそれを、何とか定期的に仕入れられないかと苦節することしばらく。
ようやく入手ルートを確保できて、大満足である。
「エル様、それってもしかして……」
「うん、お米だよ。醤油と味噌もあるし、ようやく手に入ったんだ」
勿体ぶらずにアイリスの疑問に答える。
そう、俺が求めていたのは米や、醤油、味噌といった和風なものであった。
パン食もかなり好きなんだけど、お米もたまには欲しかったので何とか定期的に仕入れられないかと苦心した結果、なんとか入手が可能となったのだ。
何度か少量入手して、味見として色々作ったことでアイリスはそれらを知っており、実に嬉しそうな表になる。
その笑顔が実に可愛い。
「今夜は俺が作るよ」
「では、お手伝いしますね」
「ありがとう。これから早速仕込みと実験に入るから、レイナ達にも教えておいて貰えるかな?」
「分かりました!」
実に嬉しそうにうさ耳をぴょこぴょこしつつ頷くアイリス。
そんな可愛い婚約者を見送ってから、食材と調味料と共に屋敷にある俺と婚約者専用の厨房へと向かうと、早速あれこれと試していく。
シンプルにおにぎりもいいけど、焼きおにぎりもかなり美味しいしかなり迷う。
まずは土鍋で普通にお米を炊くのもいいけど……醤油や味噌であれこれと作りたいものもあるしなぁ。
味噌汁は勿論、味噌の良さを知ってもらうために野菜に味噌をつけるのありだし、味噌田楽なんかも面白い。
醤油は色々作れるようになるけど、丼物の可能性が広がるし、アイリスやトールの事も考えるとお肉系が良さげかな?
「アイリスさん、お米というのはあの白いのですか?」
「はい!色んなものにあうんですよ!」
「確かに美味しかったですね」
「……主の手作りなのも大きい」
そんな事を考えいると、何故か婚約者全員が厨房に集まってくる。
それに便乗して、クレアとケイトも居るけど……クレアは悪阻とか大丈夫なのだろうか?
まあ、ダメならトールかケイトが止めてるはずだし気にしないでおこう。
「丁度いいや、良かったら試食にご協力お願いします」
まずはおにぎりと焼きおにぎりを出すと、あっという間に消えてしまう。
まあ、ほとんどアイリスなんだけど、他の皆はそれほど食べる訳でもないし、文句も出ないというもの。
それに、美味しそうに食べるアイリスは可愛いので俺得でもある。
「クレア、ケイト。トール用に作った焼きおにぎりがあるんだけど、差し入れに持っててくれるかな?」
「分かりました」
「うん、任せて!」
愛する夫に会いにいく口実を与えると実に嬉しそうに去っていくクレアとケイト。
本当にあのイケメンうさ耳は愛されてるねぇ。
「それにしても、殿下は本当に何でも出来るんですね」
「そうかな?」
「はい、素敵です」
……あの、アイーシャさん?さらっとそういう事言うのはどうなのでしょう?
「あ、エル様エル様。カレーも作りませんか?」
「それもありだね」
「エルダート様、あの……」
「うん、分かってる。あんまり辛くないやつね」
「ありがとうございます」
そこまで辛いものが得意ではないレイナのためにも、甘くち気味でいいだろうと、アイリスと一緒にカレーも作っていく。
「……主、餃子も欲しい」
「それも作っちゃおうか。食べ切れるかは分からないけど」
「大丈夫です。私が食べます」
そう言い切るアイリスさんマジで可愛いですね。
「……じゃあ、主は私が食べる」
「では、私もそうします」
「いや、何がそうなの?」
セリィはまあ、血を吸うのだろうと分かるけどアイーシャはどうやって俺を食べるのやら。
冗談だろうけど、どことなく考えてしまう。
「そういえば、今朝貰ったキュウリがあったような。レイナ食べる?」
「では、少しだけ。お味噌とあって美味しいですよね」
婚約者の中でも、最も野菜が好きなのが恐らくレイナであろう。
その次に何でも食べるアイリスで、その次がセリィ、そして最後にそこまで野菜が好きでないのがアイーシャの順番かな?
レイナはあまり食べる量は大きくないけど、野菜系の料理なんかは美味しそうに食べてくれる。
その他も好きだけど、もう少しオシャレな野菜料理も磨こうかな。
そんなレイナは勿論キュウリと味噌の組み合わせも好きなのでさり気なく勧めるけど、控えめに上品に食べるレイナは中々綺麗であった。
それで、美味しくて笑みを浮かべるので実に可愛い。
一人で試行錯誤するはずが、時間が出来た婚約者達全員に振る舞いつつのものになり当初とは少し違う予定にはなったけど、これはこれでいいね。
料理のお手伝いをしてくれつつ、美味しそうに試食してくれるアイリスに、珍しそうに色々と味見してくるアイーシャ、そしてちょくちょく俺に食べさせくるセリィと、それらを優しく見守りつつも、俺の邪魔をさせないようにしてくれてくれているレイナ。
四人がそれぞれ個性的で魅力的。
こういう時間はいいものだなぁと思いながら、その日の夜から和食のメニューが比較的気軽に出せるようになるのであった。
やっぱり米や味噌、醤油って素晴らしいよね。
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