第226話 デートの予約は
トールをケイト付きでケイト実家へと置いてくると、転移の魔法で一瞬で屋敷へと戻る。
明日迎えに行く予定ではあるけど、屋敷にはバンバンも居るし、必要ならいつでも呼び出せるのでその辺は気にせずにのんびり義実家を楽しんでくるといいと本人には言っておいた。
まあ、離れた反動で翌日戻ったらクレアがトールに超絶甘えるだろうから、その辺は大変だろうけど……これもモテる男の宿命だろうし、仕方ない。
それに、下手に好きにやらせたら修羅の住人になって戻って来なさそうなトールには多少のラブコメパートは必要不可欠だし、あるべきだろうと思う。
なお、クレアへの事情説明は割とすんなりと済んでそこは流石トールの正妻の地位に居る女というべきだろうか。
不気味な程に静かなのも、明日からはまた自分のターンと分かっているからだろうが、それにしても本当にトールは奥さんたちに愛されてるものだねぇ。
うんうん、夫婦円満は何よりだよ。
「なるほど、わかりました。では、私達も後日伺うのを楽しみにしてますね」
夕飯の時間に、本日の報告も兼ねて色々と話す中、ケイト母からのお呼ばれについても話すと、そうすんなりと頷いてくれるレイナ。
こういう時、すぐに理解してくれるレイナは非常に助かるというもの。
「……あと、デートも所望する」
「アイリスさんも楽しめたようですし、私達も楽しみにしていいんですよね、殿下?」
本日も帰ってきて早々に甘えるように、甘噛みしてきたセリィと、本日も当たり前のように一緒に夕飯を取るアイーシャからの積極的な申し出が。
まあ、元よりそのつもりだったけど……この二人らしいというか、こっち方面だと控えめなアイリスやレイナとは対象的な二人らしいよね。
そういう所が可愛いと思える俺も、そこそこ毒されてるのだろうか?
まあ、悪いことじゃないか。
「分かってるよ。予定を空けて、それぞれとデートもちゃんと考えてるから、楽しみにしててよ」
その言葉の反応も三者三様。
レイナは嬉しそうに微笑み、セリィはグッとガッツポーズ、そしてアイーシャは蠱惑的な笑みを浮かべる。
「アイリスもね」
「私もいいんですか?」
「今日のはプチデートだからね」
あくまで偶然の産物なので、出来ることなら皆と一緒に個別のデートもしようと言うと、アイリスは嬉しそうにしてから、伺うように他の婚約者達に視線を向けた。
「……大丈夫。その分、デートでは主に甘えるから」
「そうですね。量より質とも言いますし」
……あの、それはデートとかで使う単語ではないような……まあいいか。
「私もチャンスがあれば、エルダート様に連れ出して貰うので、気にしなくて大丈夫ですよ」
「レイナ様……ありがとうございます!」
相変わらず仲良しな様子のうちの婚約者に思わず笑みが浮かぶけど、それにしてもレイナからそんな言葉が出てくるとは少しびっくりした。
連れ出すか……確かに、頑張りすぎてるようにも思えるし、それは考えてもいいかもしれない。
婚約者達は、皆俺の婚約者として相応しいように日頃から頑張ってくれている。
俺からしたら、俺には勿体ないくらい(でも誰にも譲りたくはないのは当然)の婚約者なのだけど、それでも彼女達は現状で満足せずに日々己を高めて、頑張ってくれている。
そんな彼女達に報いるのは当然として、そんな彼女達のストレスを解消して、無理をしてるようならそっとブレーキを踏むもの俺の務めだろう。
勿論、予定をキャンセルする事になった場合はそちらへのフォローも考えないとだけど、周りに迷惑がかからないように少し強引でも外に連れ出したり、安らいで貰うのは悪くない。
とりあえずは俺自身ももっとカッコ良い男になって、婚約者達をメロメロに出来るような、うちの家族のような心から尊敬できるようなそんな素敵な理想像を目指しつつ、婚約者達へのフォローも忘れないようしよう。
「それにしても、今夜のハンバーグはいつもより更に美味しいね」
「そ、そうでしょうか?」
「うん、きっと作った人が違うから……かな?」
そう言うと、少し恥ずかしそうにしつつもはにかむレイナ。
俺の前に出ているハンバーグ。
一見、普通のものに見えるけど、これを作ったのがレイナなのはすぐに分かった。
味わって食べていたし、会話の流れ的にも後回しになったけど、婚約者の手作りというだけでいつもの倍は美味しく感じられるというもの。
それにしても、忙しいはずなのに空いてる時間に料理も習うレイナは凄いなぁ。
前々から俺も教えてるし、アイリスにも教えてるけど、車椅子での移動のレイナの負担は更に大きいはず。
それでも頑張ってくれる彼女には感謝しかないよね。
「明日は私が作りますね!」
「うん、期待してるよ」
アイリスも気づいていたようで、やる気満々という様子なので楽しみにしておく。
亜人の村からのお土産もあるし、俺も近いうちに厨房に立ってそうだけどそれはそれとして、やっぱり婚約者の手作りは楽しみだ。
なお、セリィとアイーシャはその流れに続くことがなかったのは察してもらえると助かる。
人間、向き不向き、好き嫌いがあるから仕方ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます