第221話 亜人の村巡り

イドル達と少し話してから、俺とアイリスは二人で村を回ることにした。


案内をしてくれるという話もあったけど、せっかくの二人きりの機会だしデートを楽しみたいと言えば野暮なことを言うイドルではなかった。


それに、イドルとしても妊娠が分かったお嫁さんと一緒に居たいだろうし、その辺は流石はケイトの兄と言うべきなのかもしれない。


それにしても、この時期に妊娠か……クレアも丁度先日子供を宿したし、そのうちベビーラッシュが頻発しそうで楽しみだなぁ。


まあ、俺の場合はその前に結婚式けどね。


婚約者達のためにも最高のものにするために、準備は頑張るとして、今はせっかくの機会を楽しもうかな。


外に出ると、軽く地面が揺れるような振動があり、かなり遠くの方から土煙や謎の戦闘音が聞こえてくるけど、荒事に慣れている住人が多いのか気にした様子がなかったのには少し驚いた。


ケモ耳パラダイスかと思えば、少し方向性が変われば修羅の国になりそうというのが亜人の凄いところなのかもしれない。


「えへへ、やっぱりエル様似合ってます」


そんなアホなことを考えていると、ペアルックとして着けたうさ耳カチューシャにご機嫌な様子のアイリスさん。


着けなくても問題ないだろうけど、ペアルックを喜ぶのなら数少ない需要にお答えするのも婚約者の役目であろうと思う俺はおかしいだろうか?


まあ、おかしくてもアイリスが嬉しそうだしいいけど。


「アイリスの方が可愛いけどね。ナチュラルに似合ってるし」

「むぅ、エル様の方が似合ってますよ〜」


照れ照れで言うのだから凄く可愛い。


「それで、ケイトの家族とは仲良くやれそう?」

「はい、皆さん良い人達で良かったです。それに、お兄ちゃんの選んだ人はやっぱり間違ってなかったって思いました」


まあ、奴が選んだというよりも押し切られたと言うべきなのだろうが、奴の場合は押し切られる相手の選択肢が悪いことがないのだから不思議なものだ。


「そうかもね」

「……でも、私もエル様に選んで貰えて間違いじゃなかったって思われるようにしたいなぁ……なんて……えへへ……」


……あの、アイリスさんや、それを言うのは狡くないですか?


とはいえ、その点に関しては俺としては一言言いたくもある。


「アイリス、俺はアイリスを選んだこと間違いなんて思わないよ。アイリスが大切で、大好きで、愛してるから婚約者になって貰ったんだからさ」

「エル様……」

「頼りない婚約者だけど、これからも傍に居てほしい」

「頼りなくなんてないです!エル様はいつだってカッコよくて、優しくて……私はそんなエル様のお傍にずっと居ます!」

「ありがとう、アイリス」


そう言ってから優しく頭を撫でると、嬉しそうにうさ耳が動くので尚愛おしくなる。


アイリスだけじゃなく、レイナも、セリィも、そして、アイーシャだって素敵な女の子だ。


皆魅力的で、俺なんかには勿体ないとさえ思えるけど、誰にも渡したくない。


だからこそ、そんな彼女達に釣り合うような男に俺はなりたいと思うのだから、我ながら前向きになったものだ。


アイリスと会ってからかれこれ数年。


日々美しくなっていくアイリスを見て、その変わらぬ笑みに安心して俺は今日も元気にやれてる。


だからこそ、彼女に惚れられるようにもっとカッコよくなりたいものだ。


うん、頑張ろう。


「おやまあ、ラブラブでいいですねー」


そんな風にアイリスとじゃれあってると、微笑ましそうに声をかけてくるご老人が。


そういえば、ここは外だったなぁと思い出すと、周囲からの微笑ましそうな視線がかなり多いことに気がつく。


アイリスも忘れてたのか、「はぅ……」と、恥ずかしそうに俺の胸に飛び込んでくるので、余計に温かい視線が増えていくけど、まあ仕方ない。


人目を気にせずイチャイチャしたのは確かだし、怒られなかっただけ温情だと思わねば。


アイリスが落ち着くのを待ってから、のんびりと亜人の村の観光をしようかと思いつつ、アイリスをよしよししているけど、にしても見渡す限り亜人ばっかりというのはやはり凄い光景だなぁと思った。


老若男女問わずケモ耳があるのだけど、これだけ居ればケモ耳がミスマッチな御仁も居てもおかしくないはずなのに、確認できる範囲では皆それぞれ整った容姿で、しかもそれぞれの雰囲気に合ってるのだから凄まじいものだ。


まあ、うちの癒し系うさ耳美少女アイリスさんに勝てる逸材は居ないだろうけどね。


そんな事を思っていると、また遠くで何かが爆ぜたような音が聞こえてくる。


何をしたらそんな音が出るのやら、相変わらず規格外な男だけど、楽しそうなのは遠くからでもよく分かるので邪魔はしない。


何故に挨拶に来てそうなってるのかと問われれば、トールだからとしか答えようがないけど、似た気質が義父にもあるようだし、やはり正しく惹かれあったのだろうなぁとしみじみ思った。


何にしても、とりあえずはもう少しアイリスをもふもふ……ごほん!よしよししておこう。


満更でもないアイリスさんマジ可愛いです。














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