第214話 目的地付近到着

途中の休憩を挟んでから、再び魔法を使ってアイリスを抱いて空を飛ぶ俺。


隣では相変わらず脳筋なはずなのに実に優雅に空を駆けるトールの姿があるが、抱きついているケイトの幸せそうな表情と相まってただのラブラブカップルであった。


「おおー!あれがケモ耳の楽園かー!」


そうして進むことしばらく……ようやく亜人の村が見えてくると俺は思わずテンションが上がってきてしまう。


「殿下、くれぐれもそのテンションは今だけにしてくださいね」

「そうは言うけどさー、ケモ耳の楽園だよ?トールだってケモ耳好きでしょ?」

「いえ、特には」

「そんな……!」


トールの返答にショックを受けるケイト。


「あ、いや、勿論ケイトのことは大切だよ。ただ、僕はそういう一部分でしか見てないというか……」

「私のこと好き?」

「うん、好きだよ」

「うへへ……トールくーん!私も大好き!」


……結局イチャイチャに戻るのか。


というか、トールよ。


それだと俺が一部分でしか人を評価してないみたいに感じちゃうでしょうが。


「お兄ちゃんとケイトさんはラブラブですね」


そんな兄の様子を微笑ましそうに見ている我が婚約者のアイリスさんは、少し考えてから上目遣いで俺に尋ねた。


「その……エル様は、私以外の女の子の耳とかしっぽにも……触りたいと思いますか……?」


……上目遣いとその言葉は反則では?


思わずそんな言葉が出そうにはなるけど、実に優しい笑みを浮かべて俺は答えた。


「触りたいと思うのはアイリスだけだよ。アイリスは俺にとって特別な人だからね」

「じゃあ、これだけはレイナ様達にはない私だけのエル様の物ですね」

「そうだね」


なんて答えてはみたけど、我ながら今日はアイリスが積極的過ぎてドキドキが止まらなかったりもしていた。


二人きり+他の婚約者とアイーシャからのアドバイスもあるとはいえ、やっぱり好きな女の子にこうして積極的に攻められれるとかなりくるものがある。


セリィなんかは普段から積極的なスキンシップが多いのだけどそれでさえかなりドキドキするのに、普段穏やかで落ち着いているアイリスやレイナにそうして積極的になられると更に凄くて、トキメキが限界突破してしまう。


「ごほん……さて、殿下。あまり近くで降りるのもマズイですし少し離れた場所から歩きましょうか」


イチャイチャすることしばらく。


空気を蹴って空を駆けているはずなのに、何故か中空で止まっているように見えるトールがわざとらしく咳をしてからそう言った。


「俺とアイリスはともかく、トールはそのまま行った方がインパンクトあるんじゃない?」

「いえ、流石にそれは……」

「これから頂く娘さんを抱いて颯爽と現れる騎士……うん、これは売れるね」

「売らないでくださいよ。というか、売るって何ですか」


知らない方がいい事も世の中あるよ、トールくんや。


「あ、エル様。村に着く前に耳だけ付けないと」

「おっと、そうだった。ありがとう、アイリス」

「いえいえ」


腕の中で微笑むアイリス。


朝に試着をしてから、トールに渋い顔をされて一度取ったのだが、流石にそのまま入るのもアレだし地面に降りてから着けないとな。


「良かったね、アイリスちゃん。エルくんの可愛い姿見れて」

「ケイトさんのお陰です。ありがとうございます」

「もう、これから家族になるんだから、お義姉ちゃんって呼んでよー」

「分かりました、お義姉ちゃん」

「うむ、よしよし」


早速義姉風を吹かせるケイトだが、素直で優しいアイリスが直ぐに答えるのは凄く可愛い。


それにしてもクレアもそうだけど、アイリスには癖の強い義姉が多いものだ。


全て兄の魅力故なのだろうけど……


「何ですか殿下?」

「いや……ところでトール。村で新しいお嫁さん候補見つけたらちゃんと言うんだよ」

「殿下は僕のことなんだと思ってるんですか?」


え?天然イケメンたらしですが?


「違います」

「何も言ってないじゃん」

「顔に出てますよ」

「マジか」

「私には分からなかったかなぁ」

「私は分かりました」


首を傾げるケイトと少し誇らしげにドヤ顔をするアイリス。


長い付き合いのトールとアイリスにはバレるのは仕方ないかな。


まあ、それでも普段はかなり上手いこと表情を隠せてるはずだしそこは問題ないかな。


そんな事を言いつつゆっくりと安全に着地をすると、距離的にはそこそこ歩くくらいの距離に着地する事が出来たので一安心だ。


『リーファ、手伝ってくれてありがとう』

『私はほとんど何もしてませんよ。エルさんの力ですよ』

『お礼くらいは受け取って欲しいかな』

『では、そうしますね』


ふふふと、微笑むリーファに心の中でお礼を言うと、うさ耳を装着して準備を終える。


「えへへ……エル様可愛い……」


俺とお揃いが嬉しくて、そう微笑むアイリスが非常に尊いが、このままだとイチャイチャだけで無限に時間を使えてしまうので断腸の思いでアイリスと手をついないで歩き出す。


その些細な触れ合いさえイチャイチャに発展してしまうのだから恋とは恐ろしいものである。


まあ、何にしてもこういうのも悪くないよね。


そんな事を思ってアイリスと歩き出すと、トールも直ぐに追いついてくるけど……それにしても腕に抱きつかれて本当にラブラブですなぁ。











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