第197話 祖父母とお風呂
「この歳になると、昼の風呂も悪くないのぅ」
「ええ、エルちゃんのアドバイスで大浴場を作り替えて正解だったわね」
お昼を食べてから、俺は祖父母と一緒に俺が提案して大改造した見晴らしの良い大浴場に入っていた。
……うん、いきなりご飯の後にお風呂に入ってることについてのツッコミはあるだろうけど、俺だって何故にこんな展開になってるのか疑問があるので仕方ない。
何となく、前に提案(お風呂について熱く語って、色々と改造案を出した)したお風呂の様子を聞いてみたら、「じゃあ、今から入るかのぅ」と祖父が言い、「あら、いいわね」と祖母が頷き、気がつけば俺は二人に連れられてお風呂に入っていた。
それにしても、自分で提案しておいて何だけど、本当に素晴らしいお風呂に仕上げたものだ。
大パノラマからの絶景も素晴らしいけど、外からは見えないようにあれこれ手を加えたので、そちらにかなりリソースを割いたけど、それでも大浴場やサウナなんかも、俺が前に話した通りに改造しており、控えめに言っても最高のお風呂と言っても差支えはないだろう。
まあ、これでも祖父母向けにしたので、俺の理想とは若干方向性が違うものもあるけど、それでもお風呂とはやはり素晴らしいものだとしみじみ思う。
「エルダートよ、後でサウナに入るぞ」
「分かりました」
聞くところによると、祖父はサウナが大好きらしい。
サウナで汗を流した後にシャワーを浴びて汗を落としてから、水風呂に入る――この黄金のルーティンにどっぷりハマったらしいが、気持ちはよく分かる。
堂々と汗をかけて、それを流してサッパリしてからの水風呂……いいよね。
「無理させちゃダメですからね」
「分かっておるよ。しかし、たまには孫と風呂というのも悪くないのぅ」
「そうですね。他の子は皆大きくなりましたから、次は曾孫かしらね」
「じゃのぅ。エルダートの子供が出来るまでは長生きしたいものだ」
というか、俺の年齢でも一緒にお風呂はどうなのだろうかと思わなくもないけど、俺としては家族から愛情を向けられればそれに答えないなんて選択肢は無いので、その辺は諦めて受け入れていた。
うん、愛されてるっていいことだよね。
「あ、お祖母様。髪の毛洗うなら俺がやります」
「そう?じゃあ、お願いしましょうか」
「エルダートよ」
「はい。お祖父様はお背中をお流しします」
「うむ」
満足そうな祖父に頷いてから、洗面台の前に座った祖母の髪を洗う。
「お祖母様の髪は綺麗ですね」
「ふふ、ありがとうエルちゃん。でも、エルちゃんも私と同じ肌色と髪だから綺麗なのよ?」
いやいや、流石に祖母のような美しさはないですって。
祖母は髪も肌も本当に真っ白で、自分と共通点も多いけど、自分の髪の毛や肌が同じ歳の頃に保たれてる自信はないので、本当に祖母は凄い。
まあ、女性陣は皆凄いんだけど……婚約者たちも綺麗に歳を重ねそうで、老後にも楽しみが多くて有難いです。
「ありがとう、エルちゃん。洗うの上手だけど、好きな子達にもしてあげてるのかしら?」
からかうようにそんな事を言う祖母。
早くそうしたいものだなぁ……
「そういった事は成人後と決めてますので」
「うむ、それでこそ男じゃぞ、エルダートよ」
軽く流そうとしたら、俺の言葉に関心を受けたように実に嬉しそうに頷く祖父。
「私は気にしなくても良いと思うのだけどね」
「そうなのかもしれませんが、好きな人相手だと、心の準備もありますので」
「エルちゃんったら、乙女なところがあって可愛いわねぇ」
これが乙女に入るとは乙女とは如何に?
「お祖父様、お背中お流ししますね」
「頼んだぞ」
祖母の髪を丁寧に洗ってから、祖父の背中を洗うけど……にしても、祖父筋肉凄いな。
この年でこの体つきとは、俺もこうなれれば良いけど、運動しても全然筋肉がつかないので、今のところ絶望的なのが残念なところ。
「お祖父様は逞しくてカッコイイですね」
「でしょう。私もこの素敵な腕によく抱かれてるのよ」
「それはエルダートに言わんでも……それに、腕の中でないと寝れんと言うから」
「ええ、そうですね。いつもありがとうございます」
凄いな、何十年も夫婦をしていても冷めることの無いこのラブラブ感……きっと、父様や母様もそうなるだろうけど、それにしても歳を重ねても冷めないこのイチャイチャラブラブな感じは本当に参考になるので、俺も婚約者たちとそうなれるように、カッコイイ自分を目指したいものだ。
祖父や父様は比較的鍛えていて体つきもよく、逞しいけど、マルクス兄様も結構スラッとしていてカッコイイので、目標は遥か高みではあるけど……努力あるのみかな?
でも、せめてもう少し背丈は欲しいかもなぁ……あとは、普通に筋肉ももっと欲しいかも。
マッチョレベルまで欲しいとは言わないから、最低限カッコイイレベルで良いので逞しい自分になりたいものだ。
俺の婚約者たちが、見た目だけで判断することがないというのは分かっているけど、それでも好かれる自分でありたいとは思うからこそ、頑張ろうとも思える。
目標が遥か彼方だろうと、諦めずに前向いていこう。
そんな事を思いながら祖父母に孝行をするけど、ちょくちょく祖父母がイチャイチャするのが実に微笑ましくて良かったです。
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