第196話 祖父母のイチャイチャ
ここ最近はそこそこ目まぐるしい事態も起こったので、久しぶりに会うと積もる話も沢山あるので、あれこれと話してると良い時間になってくる。
折角なので、お昼を一緒にと、食堂に移動してからも会話を楽しみつつピッケの作った料理を堪能していると、祖父が不意に尋ねてくる。
「そういえば、お前の新しい婚約者候補の……アイーシャと言ったか?実家からワシら宛に手紙が来とったの」
「そうなんですか?」
「ええ、プログレム伯爵とご子息からの手紙ね。アルバスの所にも届いてたそうね」
……恐るべし、プログレム伯爵。
いや、プログレム伯爵というよりも、俺とアイーシャの関係に外堀を埋めてくるのは、多分跡継ぎのカリオンだろう。
あの時はそんな素振りはあまり無かったのだが……可愛い妹の将来のために俺との関係を是非とも築いて欲しかったのかもしれない。
「エルダートはお前にそっくりだから、本当にモテるのぅ。髪も肌も、顔立ちもお前に本当によく似てる」
「いえ、あなたにも似てますよ。エルちゃんの優しくてしっかりしてる所なんかはよく似てるわ」
そう言ってから見つめあって微笑み合う祖父母。
お互いに褒め合いつつも、謙虚になり過ぎずに無言の肯定ができるこの距離感……熟年の夫婦らしくて凄く良いと思います。
というか、相変わらず祖父母はラブラブだよなぁ……うちの父様と母様もラブラブだけど、そちらよりも長い付き合いだからか、その距離感は実に余裕を感じさせるものであった。
こういう所も尊敬できるのだけど、それにしても相変わらず孫がいてもイチャイチャできるメンタルも見習いたいところ。
「でも、エルちゃんは髪色と肌色は本当に私の血が強いわよね。他の子は皆あなたの血を継いだアルバス似なのに」
「そうじゃな、しかしエルダートはお前によく似てるからのぅ。顔立ちだけでなく、人を惹きつけるその魅力ものぅ」
チラリと視線をトールに向けてから、俺の頭を撫でて微笑む祖父。
「シンフォニアの未来をワシはお前の父のアルバスに託した。そのアルバスはマルクスに託すのだろうが、ワシとしてはエルダートがシンフォニアの発展に貢献してくれたこと……祖父としてこれ以上ないくらいに誇りに思っておる」
「ええ、エルちゃんは小さいのに頑張ってて偉いわ」
「……ありがとうございます」
褒められるのは嬉しいけど、そんなに大したことはしてないし、俺はまだまだなので何とも言えない気持ちにもなる。
まあ、褒められるのは凄く嬉しいから、喜の感情が強いけど、やっぱり俺の目指すべき目標には全然届いてないので精進あるのみ。
「それにしても、ピッケの料理は相変わらず美味しいですね」
何だかこれ以上褒められるのもあれなので、少し急でも話を変えると、祖父母は気にせずにそれに付き合ってくれた。
「ピッケはお料理が凄く上手だからね」
「そうじゃな、エルダートの考案した料理も直ぐに覚えるし、頼りになる侍女じゃよ」
その言葉にはピッケへの絶対的な信頼が伺えて、その信頼に答えるように軽く頷くピッケ。
「エルちゃんもトールくんのこと凄く信頼してるわよね」
「まあ、俺の騎士ですから」
祖父母とピッケとは違う形にはなるけど、確かにトールを信頼してるかと問われれば頷く他ないだろう。
信頼と呼ぶのは何となくしっくり来ないけど、トールなら絶対大丈夫という確信ならあるからだ。
出会った頃からのものだけど、俺の騎士は最強だと胸を張ることは出来ると思う。
そういう意味では信頼はあってるようで少しだけ違うような……うーん、言葉って難しい。
「そういえば、リリアンヌ姉様の子供ももう時期だそうですよ」
「リリアンヌが子供か……ワシらも歳を取ったものだ」
「ふふ、そうですね」
「曾孫とももっと会いたいものだが、エルダートよ、無理のない範囲で連れて行ってくれるかのぅ?」
「ええ、勿論ですよ」
曾孫という言葉に違和感のある二人のだけど、隠居したことで、肩の荷が降りたのか、自由に過ごせてているようだし、少し羨ましくもなる。
まあ、頑張ったあとでの老後なのだろうし、俺もそんな素敵な老後を過ごしたいものだが……その前に婚約者達と結婚して、家庭を作らないとな。
そちらも凄く楽しみなので、早く成人したいものだが、今の婚約者という関係も凄く楽しいので、迷う気持ちもなくはない。
トールよ、お前なら俺の悩み分かるよな?
そんな気持ちで視線を送ると、ヤツはそれを読み取ったように呆れたような表情を浮かべる。
『アホなことを考えてないで、他にも報告することもあるのでは?』
視線でそんな事を言ってるのが伝わる時点で異常な以心伝心なのだが、それにも一理あるので、とりあえず先日会ったレフィーア姉様の息子のフリードの話もするけど、孫も曾孫も可愛いのか、祖父母はその話に実に満足げだったので良かった。
俺も隠居して、孫や曾孫の話を聞いて微笑む祖父母になれるだろうか……うん、頑張ってなろうと決心をしつつ、やはり美味しいピッケの料理に満足しながらお昼を平らげた。
アイリスもピッケの料理は好きだろうし、やはり今度は婚約者も連れてこないとね。
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