第188話 レフィーア姉様はいつも元気
「入るわよー」
さて、そろそろレフィーア姉様の元へとジーク義兄様が言った瞬間に、ジーク義兄様の執務室のドアが開き、レフィーア姉様が入室してくる。
大きくなってきたお腹には、フリードの弟か妹が居るのだろうけど、にしても、女性とは凄いよね。
子供を作り出しちゃうなんて、神様なんじゃないかと思うけど、夫婦の愛の形として生まれるのが最も大事なんだろうと思う。
まあ、俺の前世は望まれない形だったけど……今世は少なくとも望まれているので気にしない。
そう、あれは前世なので今世を楽しまないと。
「レフィーア姉様、こんにちは」
「いらっしゃい、エル!元気そうねー!」
嬉しそうに抱きついてくるレフィーア姉様だけど、甥のフリードの前なので少し恥ずかしい気持ちもなくはない。
まあ、拒むことはしないけど。
家族からの愛を拒むなんて選択肢はないし、多少フリードにそういう姿を見せても幻滅するような光景でもないはずだしね。
それにしても、レフィーア姉様は本当に毎年綺麗になってる気がする。
母様やフレデリカ姉様、リリアンヌ姉様もそうだけど、ウチの女性陣は毎年のように美しさに磨きをかけてるけど、もしかしてそういう精霊の加護でも貰ってるのだろうか?
『多分、それはないと思いますよ。確かに美を司る精霊も居ますけどね』
『そうなんだ。リーファが綺麗なのもそれが理由だったり?』
『いえ、私は植物の精霊ですから、これは元々ですね。それにしても……ふふ、私の姿はエルさんには綺麗に映っていたのですね』
どこか嬉しそうにそんな事を言うリーファ。
心の中での会話にも慣れてきたので、外に漏らすことはないけど、にしてもレフィーア姉様に抱きつかれつつリーファと話す俺は中々に客観的に見たらシュールに写ってそうだよね。
『まあね、大人の女性って感じで素敵だと思うよ。それに、こうして話してても楽しいしリーファは魅力的な精霊さんだよね』
『エルさんは本当に口説くのがお上手ですね。私も本気になってしまいそうです』
……何に本気になるのだろうか?
『お世辞じゃなくてただの本心だけどね』
『ええ、勿論分かってますよ』
年々、リーファとの契約と加護の繋がりが深くなることで、昔よりもお互いに深く繋がっているので、ダイレクトに気持ちが伝わってくるからか、リーファが嬉しそうなのはよく分かった。
「あっ!なんか今ラブを感じたよ!」
そうして、抱きつかれつつ、リーファと話していると抱きついていたレフィーア姉様が突然声を上げてそんな事を言い出す。
……もしかして口に出てたのだろうか?
いや、でもジーク義兄様やフリードはキョトンとしてるし、レフィーア姉様の様子からしてリーファに気づいた感じではなかった。
じゃあ、一体なんだろう?
「レフィーア、どうかしたのかい?」
「今ね、エルからラブの気配が漂ってきたの!」
「……ええっと、そうなの?」
「おじさんラブ?」
よく分からないけど、とりあえずレフィーア姉様の言葉に疑うことなく信じるジーク義兄様と、同じく首を傾げて尋ねてくるフリード。
凄いね、レフィーア姉様の謎のセンサーにも驚いたけど、ジーク義兄様の疑う様子が微塵もないのが流石と言えた。
年々、ラブラブ度合いが高まってるとは知ってたけど、一人のシスコンとして姉の幸せに心から嬉しく思いつつも、とりあえずお土産のお菓子を勧めることにする。
「へー、これとかフレデリカが好きそうね」
「店主曰く、常連だそうですよ。ダンテ義兄様とよくデートに来るとか」
微笑ましいカップルだったとの報告も受けているので伝えるとやんちゃな妹の幸せそうな様子に微笑むレフィーア姉様。
「フレデリカったら、意外とやるわね。でも、デートかぁ……ジーク、今度連れてってよ」
「落ち着いたらね」
忙しいジーク義兄様だけど、仕事を理由にはするのではなく、本心からレフィーア姉様の体調が落ち着くまで待とうという気遣いが紳士で素敵だ。
妻を慮れる夫に俺もなりたいものだ。
「約束よ。フリードも今度家族でお出掛けもいいわね」
「うん!おじさんも一緒にいい?」
「勿論よ。レイナちゃん達も一緒がいいわね」
そして、しれっと俺たちの参加も決定するけど、姉家族からのお誘いを断るなんて真似はする訳もなく、頷いておく。
予定としてはまだまだ先のことだろうし、レイナ達も断ることはないだろうけど帰ったら話すとしようかな。
その前にレフィーア姉様が三人に伝える未来も見えるけど……通信の魔道具の利便性の高さは凄まじいものだ。
俺はお仕事用にタクシーするために使ってる頻度の方が多いけど、レフィーア姉様のようにコミュ力が高いと利用頻度も多いようだし、まだまだ高価で貴重なものだけどもう少し広く広まればいいよね。
まあ、その先に更なる俺の労働が見えなくもないけど……家族のためなら多少の苦労は喜んで引き受けよう。
ただ、婚約者達とのんびりする時間は欲しいのでそこだけはちゃんとしないとね。
前世に比べて欲深くなったものだけど、この位なら問題ないよね?
好きなものに遠慮や譲歩をしないもの人生を楽しむコツと誰かが言ってたのを思い出しつつ俺もお菓子をつまむのだった。
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