第184話 愛の結晶
「え?クレアが?」
「はい、ご懐妊されたようですよ」
婚約者たちから、今日の報告を受けつつ食事をしていると、まさかの情報に思わず驚いて……うん、多分驚いてるとも。
いや、あれだけ毎晩楽しんでればすぐだろうとは思っていたので今更感も無くはないけど、まさかトールの日頃のリフレッシュのその日に妊娠が分かるとは……悪いことしたかな?
トールの回復とトールの嫁の妊娠、どちらが重要なのかは後者だろうし、連絡を貰っていたら途中でも連れ帰ったのになぁ。
決して、慌てふためく奴を見たいだけじゃないよ?
俺からしても、トールとクレアの子供は身内のようなものだし大切なのでそちらを優先するだけで、決してトールが父親になったことにどんな反応をするのか興味があるだけではないと断言しておく。
……ホントだよ?
「そっか、なら早めに産休に入って貰おうか」
「はい。そうおっしゃると思って、クレアさんには既に伝えてあります」
レイナは俺の考えが読めたのか、先んじてそう決めて、クレアに告げてくれたようだ。
割と、家の事にも俺はなるべく関わるようにしてるけど、俺の留守中は未来の正妻であるレイナが色々とやってくれてるので凄く頼りになる。
アイリスやセリィはその補佐をしてくれてるけど、この中でそういった事に最も向いてるのはレイナで、俺のそういった思考も読めてしまう凄まじく頼りなる婚約者でもあった。
「クレアさん、凄く喜んでました」
「……あと、少し残念そうでもあった」
想像通りの様子のようで何よりだ。
大方、トールとの子供が出来て嬉しい気持ちと、若干ながらもしばらくトールと夜のイチャイチャが減るのが少し思うところとあるのだろう。
これは、きっと出産後はその分が溜まって更に求められそうだけど……他人事なので俺はそれを笑って眺めおく。
奴は大変かもだが、これも愛されてるからこその大変さなので、俺が笑顔でエールをおくる。
がんば。
「アイリスにとっては甥か姪が出来ることになるのかな?」
奴の事はさておき、兄に子供が出来たアイリスにそう尋ねると嬉しそうに微笑んで言った。
「今から楽しみですね〜、私も叔母さんって呼ばれるんでしょうか?」
関係性的に間違ってないけど、響き的にこんな美少女に叔母と呼べるかは不明とも言えた。
うさ耳美少女アイリス叔母さん……何故だろう、個人的には悪くない響にも思えてしまう。
アイリスなら何でもイけるからこその思考なのだろうけど、叔母さんぶるアイリスは凄く可愛いと思う。
「……主、私達も早く成人して主の子供産みたい」
そんなアホなことを思っていると、凄まじく威力の高いセリフをサラッと言うセリィ。
あまりの台詞の破壊力に清楚系……というか、初心なアイリスとレイナは顔を赤くして黙り込んでしまうけど、どこか期待したような視線を見逃すことはない。
「そうだね。成人したら愛の結晶である子供にも恵まれたいものだね」
「……愛の結晶?」
「そう、好きな人との間に出来る子供だからね」
「……なるほど、私と主の愛の結晶は楽しみ。レイナ様とアイリスも主と愛の結晶を」
……あの、セリィさん。わざとやってませんよね?
思わずそんな事を聞きそうになるくらいに、照れる二人に無自覚に追い打ちをかけるセリィ。
俺としては二人の反応にニヤニヤしてしまいそえになるけど、ここでフォローしないという選択肢はないので優しく微笑むと俺は言った。
「でも、その前に結婚式も楽しみかな。三人のウェディングドレス姿は凄く楽しみだし、新婚生活とかも楽しそう」
三人のウェディングドレス姿とか絶対最高すぎると確信できるし、今から素材集めを頑張らないと。
最高の素材は自分で探した方が思い入れも出そうだし、その辺は空いてる時間に俺が頑張るとしよう。
「ウェディングドレス……新婚……はうぅ……れ、レイナ様、あの……」
「はい……分かってますアイリスさん……一緒に、エルダート様に相応しい女性になりましょう」
俺の言葉に二人で可愛い反応をしてから、照れつつもやる気満々なるので益々可愛いと思ってしまう。
その二人に続くように自然と輪に入っていくセリィと……そして、今日も一緒に夕食を取っていたアイーシャも自然に会話に混じるけど、マイペースなセリィはともかく、相変わらずアイーシャはコミュ力が高いよねぇ。
何にしても、俺との結婚や子供についてこうして前向きな様子を見ると俺も更に婚約者達にカッコイイと思われるような人間にならないといけないとやる気にもなる。
現状、惚れられるよりも俺が惚れ込んでるようなものだし、俺も父様やマルクス兄様のように……は難しいかもだけど、それくらい高みを目指しつつ、カッコイイ自分になりたいものだ。
周りの男性陣と比べるとあれだけど、世間一般で考えると容姿は普通のはずだし、直せることは心根とか気持ちの面なのでそちらを頑張ろう。
若干、というか、前世の性格が尾を引くかもだけど、それは個性なので直しつつも無理のない方向性を目指したいところ。
難しいけど、やれるだけ頑張らないといけないよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます