第183話 情報源(レフィーア姉様)

家族に無事を伝えてから、屋敷に戻ると早速嫁たちに連れていかれるトール。


そのいつも通りの光景を見送ると、珍しいことに婚約者3人とアイーシャも玄関で俺の帰りを待っていたようで、出迎えてくれる。


いつもは帰りの時刻がまちまちなので、俺から会いに行きたいという気持ちを尊重してなるたけ出迎えは自室という風潮なのだけど、俺の姿を見てホッとしてしてる3人を見て何となく察してしまう。


「エルダート様、お帰りなさいませ。ご無事のようで良かったです」

「エル様、お怪我はありませんか?」

「……主、明日はそいつらの所に連れてって」


心底ホッとしたという感じのレイナに、俺の全身を見て心配そうな表情を浮かべるアイリス、そして、俺の無事に喜びつつも襲った連中が許せないのかそんな事を言うセリィと三者三様だけど、予想通りというか、俺が向こうで襲われた情報は既に婚約者に伝わっていたようだ。


いや、予想してたとはいえ早くない?


家族に無事を報告して多少時間があったとはいえ、そこそこ距離があるのにこの伝達速度は異常だが……はてさて、どこから聞いたのやら。


「心配かけてごめんね。俺は大丈夫だよ。トールも居たしね」


一番殺気立ってそうなセリィを上手いこと撫でて落ち着かせると、安心するように三人に微笑んでみせる。


というか、トールが一人で倒したので俺は特に何もされてないのだが、襲われたと聞いてここまで心配してくれるというのは……なんというか、凄く胸が温かくなる思いだ。


「にしても、誰から聞いたの?」


俺の言葉に安堵した様子を浮かべるので、それにホッとしつつも俺はこの様子を見守っていたアイーシャに尋ねると、アイーシャはくすりと微笑んで答えてくれる。


「レフィーア様から伺いました。通信の魔道具は便利ですね」


なるほど、レフィーア姉様から聞いたのか……無事は伝わってそうだけど、後日念の為顔を出すべきかもしれないな。


「そっか、道理で伝わるのが早いわけだよね。というか、アイーシャにレフィーア姉様を紹介したっけ?」

「屋敷に遊びに来られた時に、ご挨拶しました」


レフィーア姉様が嫁いだ、アストレア公爵家はダルテシア王国の俺の屋敷の隣なので、割と暇な時にレフィーア姉様が遊びに来て、婚約者達と親睦を深めていることは知っていたけど、どうやら俺の留守中に遊びに来たレフィーア姉様と仲良くなったようだ。


アイーシャってば、目立つのは苦手なようだけど、基本のコミュ力は高いよね。


その辺は俺も見習いたい所だ。


「そうだ、お土産買ってきたから後で渡すね」

「ありがとうございます」

「アイリス、食べ物もあるから一緒に食べよう」

「は、はい……」


俺の言葉に一安心しつつも、過保護に俺の様子を観察していたアイリスに微笑むと恥ずかしそうに頷くアイリス。


婚約者の中で、一番心配性なのは実はアイリスなのかもしれないと俺は思った。


セリィは言うまでもなく、比較的おおらかというか、落ち着きがあるし、レイナも流石は王女様というか肝が据わってる上に信頼の表れか正妻としての貫禄で落ち着いてるので俺が大丈夫といえば信じてくれるけど、この中で一番長い付き合いのアイリスは俺の事を信頼しつつも心配は心配なのかソワソワと様子を見てくれているようで、実に有難い。


過保護過ぎると言われそうだけど、アイリスがそれだけ俺のことを想ってくれているのは嬉しいので、俺は俺に出来ること……安心させるように振る舞うことが大事だと思うのでそうあろうとする。


「お義父様やお義母様達はお元気でしたか?」

「まあね。今度また連れてくるよ。あ、でも、皆で向こうに行くのもありかな」

「エルダート様、それは……」


俺の言葉に少し申し訳なさそうな表情のレイナ。


向こう……即ち、俺の故郷のシンフォニア王国の気候は、レイナには中々に過酷なので向こうに連れていく場合は俺が魔法によりレイナの周囲を適温に保って連れていくことになるのだが、それが申し訳ないのだろう。


俺からすればそこまで大変でもないけど、レイナとしては迷惑をかけたくなくてのそんな様子に微笑むと俺は頷く。


「大丈夫。無理はしないから。それにレイナを連れてくくらい訳ないよ」

「ありがとうございます、エルダート様」

「婚約者だもの。当然だよ」


レイナの凄いところは、こうして遠慮しつつも俺の固い意思を即座に理解して嬉しそうに微笑んでくれる所かもしれない。


レイナとアイリス……癒し系美少女にうさ耳癒し系美少女と可愛い二人の様子に満足しつつも、三人目の婚約者のセリィのフォローも忘れることは無い。


まだまだ、俺が襲われたこと……というか、俺を襲った連中に思うところがありそうなセリィのその優しさだけど、そんな奴らにセリィが興味を向ける必要はないと俺はセリィの頭を撫でて落ち着かせる。


後でいつもより多めに血を与えるとより効果的かも。


やはり造血魔法は偉大だなぁと思いながら、帰ってきたことを実感して婚約者達との時を過ごす。


なお、そこに違和感なく入っているアイーシャに関しては語るまでもないかもしれないな。










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