第167話 砂糖たっぷりの甘々

何だかんだと、ダブルデートという名のお忍びはあっという間に時間が過ぎて、現在俺たちは俺のダルテシア王国の屋敷へと戻ってきていた。


あまりハプニングとかも起こらず、アクセル義兄様とレインはデートを満喫出来たようだし、俺とアイーシャもそこそこ楽しめたので悪くはなかった。


アクセル義兄様は庶民的なものも好きらしく、順応が早いので、こういう所でもスペックの違いを実感したが、まあ、それはそれ。


今更周囲の凄い人達に差を見せつけられても、俺は俺でそれらを糧に目標を目指すだけだしね。


そして、屋敷に戻ってきた現在。


俺の屋敷で夕飯まで一休みすると、客間に行ったアクセル義兄様とレインを見送った後。


その後ろ姿が遠ざかると、本日のMVPのうさ耳イケメン騎士様が何ともげっそりした表情で俺に問いかけてきた。


「……殿下、あの方は本当に人間なのでしょう?」


ふむ、大分お疲れのようだな。


「大丈夫、それは普段俺がお前に思ってることだから 」

「僕は亜人なのでノーカンです」

「いや、亜人も人じゃん」

「それもそうですね」


ここまでおかしな事を言うとは、連日の疲れが出たかな?


まあ、動かない屋敷内なら俺も魔法で守れるし、ここは植物の精霊のリーファの領域内なので俺の魔法が突破されても何とかなるだろう。


『ふふふ、その時は任せてください』


自信満々に胸を張るリーファ。


非常に心強い存在だが、安心して話せるので本当に頼りになるよ。


「それで、トールは珍しくお疲れ気味なのかな?」

「……殿下、想像してみてください。護衛中、ずっと、人間の限界を越えた甘い2人きりの空間を永遠と見せつけられる気持ちを」


……ふむ、それは新手の拷問にも使えるかもな。


「しかも、何故かそれを見てると昨夜のあれこれを思い出してしまって……殿下、これが疲れというものなのでしょうか?」

「うん、お疲れ様」


ここで、昨日の帝国の皇帝陛下との戦いをカウントしない辺りがトールのトールたる所以なのかもしれないなぁ。


それにしても、やはりトールは自分の嫁たちとのイチャイチャと重ねていたか。


今、俺が離れれば確実に攫われそうなくらい、虎視眈々とトールを狙う嫁達の姿がちょくちょく見える。


このメンタルのトールを放置したら……面白くはなりそうだが、流石に哀れか。


「明日は休みをあげるよ」

「……いえ、是非ともお供させてください」


即決する程にトールには未来が見えてしまったのだろう。


嫁たちとのイチャイチャはトールとしては嬉しくない訳がないが、それでも好きだからこそトール的には刺激が強いのだろう。


俺もこのくらい初心でありたかったものだよ……まあ、このレベルを初心と呼ぶのかは不明だが。


「あー、そっちの方が良いかなぁ……一日で回復出来る?」

「必ずや」

「ならよし」


明日はトールを連れて、実家であるシンフォニア王国に戻るとしようかな。


そこで少しゆっくりすれば、トールも元に戻るだろう。


父様も俺に何か用事があるとか言ってた気がするし丁度いいかも。


「ふふ、お二人は本当に仲がよろしいのですね」


そうしてトールといつものやり取りをしていると、気配を消して話を聞いていたアイーシャが何とも微笑ましそうにそんな事を言った。


「まあ、俺の騎士だしね」

「それ以上に仲のよろしい親友って感じですよ」

「否定はしないかな。とりあえず俺はもう少ししたらレイナ達の元に戻るから、先に事情説明しといて貰える?」

「ええ、勿論です」


本当に頼りになるなぁ。


そんな事を思っていると、ふと立ち止まったアイーシャが俺の元まで来ると耳元でそっと囁いた。


「今日は楽しかったですよ。今度は本当に2人きりで回りましょうね……殿下」


ウィンク付きでそんな事を言って、去っていくアイーシャさん。


やれやれ、何とも自由だなぁ。


「殿下、本当にまだ婚約者じゃないんですよね?」

「ん?アイーシャのこと?」


そんな事を思っていると、トールがまたしても変なことを言い出す。


「というか、その予定は今のところないけどね」

「……なるほど、これが人間限界を越えたイチャイチャのスタートラインなのかもしれませんね」

「よく分からいけど、俺はアクセル義兄様ほど凄くはないから」


あの、レイン溺愛ガチ勢にはどれを取っても届くはずもなく、魔法くらいしかアクセル義兄様より上のものはないだろう。


「というか、少し回復したなら俺行くよ?」

「いえ、あと1分……いえ、30秒でいいので、ここに居てください」

「はいはい、了解だよ」


俺としても、夕飯までに婚約者達に色々と話しておきたいこともあるのだが、俺が離れてからトールがどうなるのは分かっているので本日の功労者として些細な願いは聞いておく。


それにしても、初心でそこまで恋愛ごとに興味の薄いトールにはハーレムは大変そうだなぁ……クレアの溺愛でもいっぱいいっぱいのようだし。


まあ、モテる男の宿命だろうし、俺に出来ることは少ないので黙って見守ろう。


しかし、アイーシャと出掛けるのも悪くないな。


一緒に居て疲れないので、婚約者達と出掛けた時けらいは落ち着いていた。


トール?


トールはいつも一緒だし、あれはそういうのでは無いので基準にはならない。


まあ、それでも頑張ってあのアクセル義兄様のイチャイチャ空間を見守ったのは素直に感謝しておかないとな。


「トール、お疲れ」

「……ええ、どうも」


今は休むといいよ……今夜も大変だろうしねぇ。















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