第157話 美人さん率の高さ
「アマリリス、元気そうで何よりですよ」
「お母様、お久しぶりです!」
嬉しそうに母親に抱きつくアマリリス義姉様。
その母親である、帝国の皇帝陛下の正妻……つまり皇紀様は、アマリリス義姉様が大人になって更に美人に妖艶になったような凄まじい美人さんであった。
母娘揃って美人さんなのは、ウチやダルテシア王国だけではないんだね。
「マルクスさんも、お元気そうですね」
「お久しぶりです、皇紀様」
「義母と呼んでください。義理とはいえ家族なのですから」
そして、フランクさも兼ね備えているとか凄いな。
帝国という大国の皇紀としての器の大きさを垣間見た気がしつつも、俺へと視線が向いたので挨拶をしておく。
「お久しぶりでございます。エルダートと申します」
「アマリリスとマルクスさんの式典以来になりますね。お元気そうで何よりです」
ニッコリと微笑む皇紀様。
アマリリス義姉様の笑みに似ているからか、不思議な安心感を感じるが、遺伝とは凄まじいものだと思わされる。
ウチの母様も美人さんだけど、皇紀様は母様と別方向の美人さんなので、目の保養には良さそうだ。
「旦那様とアマリリスから話は伺ってましたが、流石マルクスさんの弟ですね。アマリリスを連れてきて下さりありがとうございます」
「いえ、少しでもお役に立てたなら幸いです」
というか、俺はいつも通りタクシーをやってるだけなので、あまり気を使わなくてもいいのだが……でも、マルクス兄様の株が少しでも上がるならやり甲斐を感じられるので良かったよ。
「マルクスさん、向こうで娘は上手くやれてますか?」
「はい、私の妻として立派に支えてくれています」
「それは良かった。でも、甘えん坊な所もあるので、なるべく可愛がってあげてくださいね」
「もう、お母様。マルクスの前でそんな事言わないでよ」
ムスッとした表情のアマリリス義姉様。
いつもは見れない新鮮な表情だが、マルクス兄様は見慣れているのか微笑ましそうにしていた。
皇紀様も慣れているのか、くすりと微笑んでアマリリス義姉様の頭を優しく撫でると言った。
「ふふ、ごめんなさいね。でも、素敵な旦那様に恵まれたみたいで安心したわ」
「……うん、マルクスは最高の旦那様。それにね、エルちゃんみたいな義弟も出来て私楽しくやれてるよ」
そう思えて貰えてるなら良かった。
マルクス兄様も同じ気持ちなのか、心做しかいつもより嬉しそうな表情を浮かべていたが、何気にアマリリス義姉様に惚れられただけではなく、自身もまたいつしかアマリリス義姉様に惹かれていたのだろうというのが分かって、弟としては何とも喜ばしく思う。
「アマリリス、まだ時間は大丈夫かしら?マルクスさん達も一緒にお茶にしましょう」
「うん!」
嬉しそうに頷くアマリリス義姉様と、軽く頷くマルクス兄様。
それはいいんだけど……えっと、俺も混ざるの?
「あの、私も宜しいのですか?」
「ええ、色々お話聞かせて貰えますか?」
「エルちゃん、お母様を驚かせるお菓子お願いね!」
「エル、いいかな?」
やんわりとだが、否定させない感じの皇紀様、母親を驚かせたいので、お菓子を用意してくれというアマリリス義姉様、そして苦笑気味に、かつ少し申し訳なさそうに俺を誘うマルクス兄様。
……逃げれそうもないし、タイミング逃したかもなぁ。
アクセル義兄様なんて、ここに来る途中に上手いことレインと離脱してたし、帰る時に回収しに来いといという伝言まで貰っているので、あの人は本当に抜け目がないと思う。
いや、別に混ざるのが嫌とかではないけど、眩しい人たちを見過ぎて少し目が疲れてきているので、もう少し眩しくない所で目を休めたいというか……美形は確かに目の保養には良いのだが、見過ぎると目が疲れるのでそろそろ見慣れた美形だけの空間に戻りたいのかもしれない。
アイリス、レイナ、セリィは婚約者で一緒に住んでて、その美少女具合というか眩しさも慣れてるし、トールはイケメンでも慣れてるので特にフラッシュは感じないのだが、やはりほぼほぼ初対面のイケメンや美人さんは長く見るべきではないというのが、今日俺が得た教訓なのかもしれないなぁと密かに思った。
「分かりました。では、用意しますね」
そうして、場違い感はあれど、軽く皇紀様とお茶をしてから、再びタクシーとして、シンフォニア王国にマルクス兄様とアマリリス義姉様を帰して、ついでにまだ滞在予定のあるアクセル義兄様とレインをダルテシア王国の王城へと送り届けるのであった。
なお、出したお菓子についてだが、あまり巷で出回ってない系のお菓子を作ったことにより、皇紀様は大変に気に入られてしまったようで、色々あってレシピを売ってしまったのだが……まあ、別にまだカードはあるし、隠す必要もないのでいいかなぁと、楽観的になれるのは、我ながら中々神経が太くなったのではないかと思う所存。
「エル、明日はエスコートよろしくね」
……そして、まだ俺には安息は訪れないと知ったのはアクセル義兄様を届けた際に何気なく発せられたその言葉であった。
あー、そういえばアマリリス義姉様を会わせる用事だけでなく、アクセル義兄様に城下を案内する約束をしてたんだよなぁ……アイーシャに声だけ掛けておかねば。
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