第79話 お茶を飲みながら

お昼は、近くにあるジーク義兄様オススメの店にしたが、流石都会だけあってレベルが高かった。


「美味しかったですね〜」


いつも通りお代わりをして、お腹いっぱいという様子のアイリス。


「本当にそうでしたね。また来ましょうか」


そして、そこまで食べてはないけど、初めての外食を満喫したご様子のレイナ。


「あ、でも、エルダート様達は国に戻られてしまうのですよね……私はいつ頃そちらに行けばよろしいでしょうか?」


ふと、そんなことを尋ねてくるレイナ。


既にウチの国に来る気満々なのは、有り難いが……


「うーん、いきなりは止めた方がいいかな。レイナは向こうの環境に慣れてないし。しばらくは俺がこっちに遊びに来るよ」

「でも、長く会えないのは寂しいです……」


あれ?


あ、そっか、転移魔法のこと話してないのか。


「えっとね、レイナ。俺は空間魔法が使えるんだ。だから、いつでも来られるよ」

「本当ですか?なら、良かったです」


ホッとしたように表情が明るくなるレイナ。


そこまで、好かれてると思うと悪くない。


にしても、どうするかな……アイリスは何だかんだて、シンフォニアで生まれたし、亜人なのであの環境でも大丈夫なのだが、レイナはそこまで身体強くもないし、シンフォニアでの生活は中々大変そうだしなぁ……うむ、どこか、いい感じの場所に家を建てたいが……とりあえずは、ダルテシア王国に屋敷でも買っておこうかな?


成人までは、とりあえずシンフォニアとダルテシアを行ったりきたりでそこまで必要はなさそうだけど、そのうち両国と……あと、海辺にも家が欲しいところ。


そう考えて、地図を思い出していると、ふとシンフォニア王国において一応、海辺に面している無人の土地があることを思い出す。


距離的にも、物理的にもまだ到達してない名前だけのシンフォニア王国の領土。


ふむ……とりあえず、候補としておこう。


人が集まるかは微妙なラインだし、物流なんかも不安ではあるが、近くには大きな山もあったはず。


謎の地形と環境だが、魔法というものがある時点でその辺の常識にも変化はあるのだろう。


果てしない荒野に荒れ狂う魔物たちの住まう砂漠と、山頂に雪が積もってるようなくらいの高さの山と、そこに住む獰猛な野生動物と魔物たちの楽園。


どっちからの侵入もかなり難しいが、確か山側の方はなんとか越えられれば街が近くにあったはず。


ダメでも、別荘の候補くらいにしておけばいいし、現地を見てから決めよう。


でも、その前にガチな海辺の国にも行けるようにしておきたいかな。


とりあえずの課題は、成人後に3人で住める屋敷の確保と、別荘地の確保、転移先を増やすことと、婚約者2人との仲を深めること……この辺がメインかな?


あとは、使用人とかは人材も欲しいし、やらないといけないことも多いので、色々と頑張らないと。


「殿下、この後はどうします?」


今後のことを少し考えつつ、食後のお茶を楽しんでいると、会話に花を咲かせる女性陣とは別にそんなことを尋ねてくるトール。


「まあ、午後も買い物とかショッピングがメインかな?あとは、屋台巡りと……そうそう、演劇とかも良さそうだね」

「演劇……見たことないですけど面白いんですか?」

「人によるかな」


芝居というのは、好き嫌いが分かれるし、役者の力量や脚本でも大きく変わるので、一概に肯定は出来ない。


「ただ、大国だし、噂によると面白いものも多いらしいよ」


その辺は、下手な小国よりは人材も潤っているのか、評判は悪くないらしい。


「そうなんですか。ところで……」


チラッと、視線を楽しそうなレイナに向けてから再びこちらを見るトール。


その視線が語っている。


ダルテシアの滞在を済ませたらどうするのかと。


「その辺は、おいおいかな。ただ、トールには頑張ってもらう予定だけど」

「はぁ……まあ、いいですけど」


今話して聞かせることでもないし、まずは現地調査とか、他にもシンフォニア国内を軽くみて回っておきたいし、ダルテシア王国に拠点を構える場合も想定しておかないと。


でも、出来れば水辺とか海辺がいいかなぁ……オアシスとは別れがたいが、自室であるあの部屋以上の特等席はないし、レイナを無理に連れて行っても可哀想だしね。


俺がずっと、魔法でサポートすればその辺は問題ないが、不足の自体の時の備えも欲しい。


そんな訳で、とりあえず保留としておいて、後々決めよう。


「エルダート様、このお菓子美味しいですね」

「エル様!これも美味しいですよ!」


今はとりあえず、こうして美味しそうに食後のデザートを食べる婚約者達を見て癒されるとしよう。


「アイリスさん、口元ついてますよ」

「そうですか?あ、本当だ……」

「拭きますから、じっとしててくださいね」

「ありがとうございます!」


なんというか、姉妹のようで微笑ましい。


純正の癒し系美少女と、うさ耳癒し系美少女のやり取りを見て和む俺。


その隣では、現実に引き戻されたトールが妥協してクレアに「あーん」をさせられていたが……うん、羨まけしからんな。


俺も今度やってもらおう。











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