第78話 王都観光

「あ!エル様エル様!あれ美味しそうです!」


元気にはしゃぐのは、我らが癒しのうさ耳美少女アイリスさん。


相変わらず、食べ物となると瞳がキラキラするが……


「おお、いいね買おうか。ただ、あんまり離れると迷子になるから気をつけてね」

「はーい!」

「ふふ、アイリスさんは食べるのが好きなんですね」


そして、初めての外出にテンション高めながらも、比較的落ち着いて俺と共にアイリスを見守るのはレイナである。


うさ耳美少女と、車椅子美少女、どちらも混み合う活気に溢れた王都では目立つことこの上ないが、白髪の子供の俺も割と目立ってるので、今更だろう。


トールやクレアの護衛もあるし、俺も感知魔法を常に使ってるので危険には敏感になっているが……隠れるように気配を消して護衛してくれてる見知らぬ騎士さんたちはレイナの父親のダルテシア王国の国王陛下による手の者だろうか?


まあ、王族の外出だし、念の為なのだろうが……気配の断ち方がそこらの騎士よりも何倍も達者で、尚且つ只者でない様子なことから割と本気なのが伺えた。


過保護だなぁ……まあ、でも、可愛い娘だし仕方ないだろう。


「レイナも食べるよね?」

「うーん、食べ切るのは難しいかと……」


それもそうか。


少食なレイナが、露天の店とか回るのも厳しいだろう。


「じゃあ、俺と少し分ける?一口とかなら大丈夫でしょ?」

「はい、それなら」


そうして、とりあえずアイリスの好き食べ物関係の露天を回るが……お代わりとかを買うほどに食べまくるいつもの大食い美少女アイリスさんとは対象的に、その小さい口で上品に食べるレイナは、儚くもどこか保護欲のそそられる様子が凄かった。


元気に食べる子であるアイリスも良いが、こうして上品に食べるレイナもいいね。


「トール、宿屋に連れ込まれてないで早く来なってばー」


少し遅れて、クレアに引きずられてご休憩所に寄りそうになってるトールにも一応声をかけておく。


「いや!助けてくださいよ!」

「って、言うてもいつものことだし……」


ここ最近、トールとクレアの恋の駆け引きも中々日常と化してきたが、その全てに口を出してもキリがないので、放置している。


本気で拒むなら、トールの場合他にもやりようはあるしね。


まあ、クレアも結構化け物じみてはいるけど、スペックで言えば日々進化してるトールに軍配が上がるだろう。


「お、あれはマジックかな?」


ふと、近くに人の集まりがあるので気になって確認すると、何やらマジック……奇術とも言うらしい、手品をやってる人が居て、それを皆で見る。


魔法を使ったものなら、何度か見たことがあったが、流石は大国であるダルテシア王国の王都でやるだけあって、魔法の形跡が一切ない完璧なマジックを披露していてびっくりした。


凄いな、種も仕掛けも全く分からない。


こういうのは、確かに流行りそうだ。


そんなことを思ってから、服屋などにも買い物巡りをすることに。


王族であり、あまり出歩けないレイナはオーダーメイドが基本であったが、車椅子で動けるようになって、普通の服も見れるようになった。


アイリスの方は、メイド服がお気に入りらしく、仕事服でもあるので、その姿が多いが、どうせならとルドルフ伯爵の領地では何件か服屋を巡ったものだ。


まあ、食い気の方が強いし、そこまで時間を取らなかったが今回はクレアも含めた3人であれこれと楽しそうに服を見る。


俺も時たま混ざって、オススメを議論したりするが、その辺のセンスは向こうの方がやはり上なので話に入れないトールの方に居ることにする。


「はぁ……」

「お疲れだな、色男」

「殿下はお元気そうで何よりです」


なんとも疲労感たっぷりの我が騎士トール。


まあ、爵位とか婚約で最初は戸惑ったけど、レイナもアイリスもいい子なので特に苦労もない。


爵位に関しては、目立って上がれば少しづつ面倒事も増えそうだが、今ところはそこまででもない。


「でも、レイナ様楽しそうですね」

「まあ、初めてのお出掛けだし、友人とのこういうやり取りも無かっただろうからね」


その辺の事情を考えるともう少し早く出えていたら良かったかもだが……その当時に確実に治せる自信があるかと問われると微妙だ。


まあ、結果が全てってね。


考えても仕方ないし。


「それで、クレアとの進展はどうなのよ?」

「見ての通り……としか」


だろうね。


まあ、聞いてみただけだけど。


「にしても……女性の買い物って長いですね……」


かれこれ、3時間ほど。


俺は時折混ざっているのでそうでもないが、トール的には買い物で三時間待たされるというに慣れてないからか、クレアとのやり取りよりも疲れていた。


「まだまだ序の口だと思うけどね」


俺としては、より良い品を選ぶ楽しさは分からなくないし、服に関してはあれこれと選ぶのも楽しいと思うのだが、待たされる服などに興味の薄い男側の気持ちもわかるので半分同意しつつも、この先の地獄を指し示すことにする。


「トールの場合は、そのうちクレアとか他にも嫁が出来れば、着せ替え人形みたいに遊ばれる未来が見えるね」

「怖いこと言わないでくださいよ……」


素材のいいトールだ。


何を着ても似合うので、議論も盛り上がるだろう。


そして、さぞや色んな格好をさせられて疲労するトール……ドンマイとしか言葉が出ないな。


そんな感じで、服屋でかなり時間を費やすが……まあ、アイリスがお腹空いた頃にようやくお昼に迎えて、トールは心底ホッとしていた。


甘いなトールは。


まだ午後もあるんだし、油断しない方がいいだろうが……まあ、それはそれ。


というか、本当にアイリスはよく食べるねぇ……うん、そういうとこも好きだけど。


レイナも色々見れて満足そうで良かった。


クレアは……服からトールに戻ったみたい。


そんな感じで皆が満足する中、トールが大変そうだが、それもイメケンの宿命なので密かに応援しておく。













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