第61話 アストレア公爵
「奥様、そろそろ……」
盛り上がっているレフィーア姉様に、控えめながらも声をかける執事さん。
多分、アストレア公爵への挨拶もしとかないとという進言のようなものだろうと予想できる。
「あ、そうね。じゃあ、グリス。エルを旦那様の元に案内してくれる?」
「畏まりした」
「エル、旦那様と話終わったら息子に会ってねー」
「わかりました」
ヒラヒラと手を振りながら、去っていくレフィーア姉様。
相変わらずフリーダムで何より。
そんな姉様に苦笑しながらも、俺は執事さんの案内でアストレア公爵の居る部屋へと案内される。
「旦那様、エルダート殿下をお連れしました」
そう呼びかけると、直ぐに返事がかえってくる。
そうして部屋に入ると、前に見た時から変わってない、金髪のイケメンさんがそこには居た。
その人こそ、このダルテシア王国において、最古参であり名門公爵家と名高い、アストレア公爵家の現当主、ジーク・アストレア公爵その人であった。
「ようこそおいで下さいました。殿下」
キリッとした顔立ちを穏やかにして、そう声をかけてくるアストレア公爵。
義家族とはいえ、俺は一応他国の王子でもあるので言葉遣いは丁寧だった。
普段ならそれもそんなに気にしないけど……
「あの、前みたいに普通に話して頂けると……あと、呼び方もエルで構いませんよ?」
「それもそうだね。じゃあ、エルよく来てくれた」
公の場でもないし、義理とはいえ家族なのですんなりとフランクになるアストレア公爵。
この柔軟さは見習いたいところだ。
「アストレア公爵も……」
「エル、義理とはいえ君は私の弟なんだから、義兄として呼んで欲しいかな」
「では、ジーク義兄様。義兄様もお変わりないようで何よりです」
不思議と話しやすくて、慕いたくなる。
そんな魅力があるのが、アストレア公爵……いや、ジーク義兄様という人なのだろう。
イケメンというのは、何かしら人を惹きつける魅力を持つのだろうか?
うーむ、俺には遠い世界だ。
「子供が生まれたと聞きました。おめでとうございます」
「ありがとう、レフィーアに似て可愛い子だし、あの子が居ればアストレア公爵家も安泰かな」
貴族家の長男というのは、やはりそれだけ重要な立ち位置なので、色々大変そうだが……まあ、レフィーア姉様とジーク義兄様の子供ならきっと大丈夫だろう。
俺だったら多分、弟が出来たら譲るかもだけど……うん、俺には荷が重いしね。
「それにしても、大きくなったね。確か今は6歳くらいだったかな?前に会ったのが2年前くらいだから時が経つのは早いものだ」
レフィーア姉様が嫁ぐ頃に会ったのだが、その時と比べれば確かに育っているのかもしれない。
子供の俺としては実感は薄いけど。
「それで、手紙にあったけど……転移の魔法まで使えるようになったというのは本当かな?」
「ええ、一応」
「それは凄いね。流石レフィーアの弟という感じだが……うんうん、自慢の義弟で私も鼻が高いよ」
驚きつつも、嬉しそうに微笑むジーク義兄様。
言葉の端々にレフィーア姉様への愛情が感じられて、弟してはそちらの方が嬉しかったりする。
まあ、レフィーア姉様とジーク義兄様は互いにガチでラブってるので心配はしてなかったが……この様子から夫婦円満なのは伝わるので安心する。
「でも、本当に義父上達を連れて来れるのかい?ダルテシア王国からシンフォニア王国までの距離はかなりあるけど」
「ええ、往復程度ならそんなに魔力も使いませんし問題ないですよ」
空間魔法である転移は、確かにかなり魔力を使うけど、水と氷魔法でストックを作りまくるために上げた魔力量は伊達ではない。
往復程度なら欠伸をしてても余裕でこなせる自信はある。
「確か、水と氷の魔法も得意と言っていたね。その年でそれだけの魔法が使えるとは凄いね」
感心したような頷くジーク義兄様。
「さて、じゃあ、義父上殿達を連れてきて欲しいんだけど……その前に、可愛い甥に会うかい?」
「ええ、是非とも」
きっと家族を連れてきたら、母様や姉様達に独占されるだろうし、連れてくる前に俺も初めて出来た甥の顔をゆっくり見たいので即答する。
「よし、じゃあ案内するね」
「ジーク義兄様がですか?」
てっきり、机の上の書類の山があるので執事さんにまた案内して貰うのかと思っていたが、ジーク義兄様が案内してくれるらしい。
「私も可愛い息子の顔が見たくてね。仕事は後でも出来るが、せっかく来てくれた義弟の世話も義兄の役目だからね」
そうしてぱちりとウインクするジーク義兄様。
何いまの。
普通にイケメンで凄い。
多分、俺が女の子だったら今のだけでジーク義兄様にときめいていたかもしれない。
まあ、実際の俺は男なのでその仕草が様になるジーク義兄様が普通に羨ましくもあるのだが……ウインクって、イケメンと美少女にのみ許される特権だと俺は思うんだ。
美形全般は割としっくりくるし、魅力的になるのに中途半端かそれ以下は腹が立つのは何故だろう?
つまり俺には縁がないのだが……まあ、それそれ。
そのうち、女の子を魅了出来るようになりたいものだが……うん、好きな子限定でいいかな。
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