第62話 甥の可愛さ
「あら、ジーク。お仕事大丈夫なの?」
「うん、問題ないよ」
ジーク義兄様に案内されて、甥の居る部屋に入ると、レフィーア姉様がおり、ジーク義兄様に気がつくと嬉しそうに抱きついた。
そんなレフィーア姉様を受け止めて優しく微笑むジーク義兄様。
……凄い俺が場違い感半端ないのは気のせいだろうか?
それにしても、知っていてもやはり2人のラブラブな様子を見てると弟としては微笑ましいものだ。
大切な姉が、ちゃんと愛されてる……うん、シスコンの俺としてはそれさえ知れれば十分だ。
「おっと、エルにフリードを会わせるんだった」
「そうだったわ!ごめんね、エル」
しばらくイチャイチャしている2人を見守っていると、目的を思い出したように現実に戻ってくる2人。
「いえ、お2人が幸せそうで嬉しいです」
そう本心を告げると、何故か2人に頭を撫でられる。
……何故かは知らないが、アイリスとトールの前でやるのは止めて欲しい。
なんか、恥ずかしいし。
でも、子供扱いはそんなに嫌いじゃないので黙って受け入れる。
「さて、じゃあ、エル。この子が私とレフィーアの自慢の息子の、フリードだ」
そうして紹介されたのは、ジーク義兄様と同じ金髪とレフィーア姉様のような褐色のどちらかといえばレフィーア姉様よりの男の子であった。
「おお!可愛いですねぇー」
「でしょ!」
めっちゃ、ドヤ顔のレフィーア姉様。
ジーク義兄様も心做しか誇らしげだ。
その様子から既にめちゃくちゃ愛されてることが分かるが……確かに、愛し合う二人の間に生まれた愛の結晶である子供……可愛くないわけないよね。
まあ、前世の俺は例外だろうけど。
前世の両親からしたら、俺は生まれて来なければ良かった存在らしいし。
今世は望まれたので、前世のことは忘れたいが……やっぱり、気にしてしまう俺は器が小さいのかもしれない。
「エルも抱っこしてみる?」
「ええ、是非に」
レフィーア姉様から赤ちゃんを受け取ると、持ち方にも少し気を使う。
孤児院で赤ちゃんは何度か抱っこしたが……やっぱり子供は可愛いものだ。
我が子が出来たら、俺も溺愛するかもしれない。
アイリスとの子供とか特に可愛いに決まって……って、何で俺はナチュラルにアイリスとの子供を思い浮かべたのやら。
うーむ、子供の前にまずは相手を探さないとなぁ……
「あーう」
そんなことを思っていると、その子……フリードが俺の頬に手を伸ばしてきてご機嫌に笑った。
……うん、可愛い。
なんだろ……こう、無邪気さを詰め込んだような、無垢な笑みで思わず頬が緩む感じ。
アイリスの無邪気さも中々だが、あちらは最近大人っぽさも兼ね備えた、油断すると見蕩れそうなそんな感じなので、こちらとはまた違った魅力がある。
これが子供の愛らしさか……なるほど、全国の叔父や叔母が甥や姪を可愛がる気持ちが分かってしまう。
「ふふ、フリードもエルのこと気に入ったみたいね〜」
「そうなんですか?」
「うん!だって、凄くご機嫌なんだもん」
母親の言葉だし多分そうなのだろう。
「うーん、なんというか、義弟が息子を抱いてるのを見ると中々微笑ましいね」
「わかるわ!」
……そう?
まあ、子供が赤ちゃんを愛でてるとそう見えるのかもしれないが……何れはそれを見る側になりたいものだ。
そうして、しばらくフリードと戯れていると、眠くなったのかぐずりだすフリード。
そんなフリードをレフィーア姉様に預けると、あっさりと寝かしつけてしまった。
凄いな、てっきり乳母さんに任せてるのかと思っていたが……
そんな俺の疑問に気づいたのか、ジーク義兄様は微笑みながら言った。
「乳母に任せることもあるけど、レフィーアが出来る限りは自分で面倒見たいって言っててね」
「姉様らしいですね」
乳母の仕事を取るのはあれだが、それでも我が子の世話をしたいレフィーア姉様の気持ちは分かる。
俺もそうしてみたいが……あまりやり過ぎると母親と乳母の仕事の横取りになるので悩ましい。
前世ほど、柔軟ではないので、その辺は気をつけないとな。
「どうしましょう?もう少ししたら父様達を連れてきますか?」
「そうだね、じゃあ、少しお茶でもしてからゆってり連れてきてくれるかい?私も少しだけ仕事を片付けるとするよ」
眠っている息子を優しく撫でると、そう言ってジーク義兄様は仕事に戻った。
何とも忙しそうだが、最古参の名門公爵家の当主なので、色々と仕事も山積みなのだろう。
その姿を見てると、マルクス兄様のあの社畜オーラを思い出すが……こちらは、どちらかといえば、父様タイプのようなので、そこまで心配は要らないかな?
何気に、ジーク義兄様は人を動かすのも得意そうだし、無理はしないだろう。
レフィーア姉様とジーク義兄様の子供であるフリードも、2人に似れば間違いなく立派な当主になるだろう。
俺には遠い世界の話だが……まあ、何かあったら甥の手助けはしたいかな。
初めての甥というのは、それだけ可愛いし、何よりあの笑顔を直で見るとねぇ……情が湧くのも自然であった。
うん、その辺も計算してるのなら、ジーク義兄様も策士だね。
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