第45話 ハーレムパーティー

「お兄さん達大丈夫?」


地面に着地すると、俺はそう軽く声をかける。


「あの魔法は君なのか?何にしても、助かった。感謝する」


少しは警戒されるかと思ったが、ハーレムパーティーのリーダーらしき男性にそう素直に感謝される。


なるほど、性格もイケメンなのかもしれない。


全くもって、俺はイケメンと縁があり過ぎる気もするが……今更勝てるとも思わないのでスルーしておこう。


「たまたまだし、気にしなくていいよ。それより怪我人は居るかな?」

「ああ、仲間の1人が少しね」


チラッと視線を向けると、前衛で戦っていた剣士の女性と後衛の魔法使いの女性がそれぞれ怪我をしていた。


「治療してもいいかな?」

「治癒魔法まで使えるのか?だったら、頼めないだろうか?」

「分かったよ」


許可を貰ってから、俺はその女性2人に光の治癒の魔法をかける。


「すっご……」

「む、無詠唱で光の治癒って……」


魔法に心得のある人からは驚愕の視線を向けられるが、見事に美人さんばかりで何か負けた気になる。


「よし、これでどうかな?」

「わぁ……本当に治った……えっと、ありがとうね」

「ありがとうございます」



治療は直ぐに終わり、そう尋ねると剣士と魔法使いの女性は驚きながらもお礼を言ってきた。


「仲間の治療感謝する」

「気にしなくていいよ。それより聞きたいんだけど……」


チラッと視線を水球の中のゴブリン達に向けてから俺は尋ねる。


「この辺ではゴブリンやオークが共闘して、おまけに遠距離攻撃まで出来るほどに鍛えてるのが普通だったりする?」

「いや、俺達も初めてだ」

「ふむ……」


見たところ、かなり上位の冒険者に見える。


そんな彼らが知らないとなると……何か裏で色々と蠢いてるような気配もするが、それは彼らに任せるとしよう。


「じゃあ、俺はそろそろ」

「お待ちを」


アイリスの乗ってる馬車がもう時期着きそうなので離れようとすると、冒険者達が守っていた馬車から1人の商人らしき男性が降りてきて俺の前に膝まづいた。


突然のことに困惑する俺と、冒険者達だったが次の台詞で納得する。


「この度は助けて頂き本当にありがとうございました。シンフォニア王国の第2王子、エルダート・シンフォニア様とお見受け致しますが」

「あれ?俺の事知ってるの?」

「姿絵でお見受けしたことがございます。それと、殿下のことはレフィーア様より伺ったことが」

「そっか、なるほどね」


この商人は多分こちらの方面ではかなり大きな商会の人なのだろう。


レフィーア姉様が嫁いだのはダルテシア王国において最古参の名門であるアストレア公爵家。


前にレフィーア姉様が嫁ぐ時に俺の絵を持って行ったから、それを見れるほどに信頼はされてるのだろう。


俺が納得していると、冒険者のハーレムパーティーさん達はかなり動揺していたが、他国の王子だし、今更不敬とかで咎めることはないよと、軽く頷くと納得したように頭を下げた。


「殿下は、この後お急ぎでしょうか?この度のお礼をさせて頂きたいのですが……」

「いや、気にしなくていいよ。それより、このゴブリンとオーク任せていいかな?素材とかは貰ってくれていいから」

「よろしいのですか?」


思わずといった様子で聞いてくるハーレムパーティーのリーダーの男性。


冒険者からしたら、素材のドロップなんて奪い合いでもおかしくないし、疑問になるのは分からなくはない。


「まあ、別に要らないしね。手間賃として受け取ってよ」


そう言うと、また頭を下げてお礼を言われる。


「えっと……」

「申し遅れました。私、ヤグラク商会の会長をしております、ニッケルと申します」


ヤグラク商会……聞いたことはあるな。


確かかなり大きな商会だったはず……まあ、レフィーア姉様のことを知ってる時点でそれは分かってはいたが。


「うん、よろしくニッケル。それで、ニッケルの商会の本部は……」

「ダルテシア王国の王都にございます」

「そっか、じゃあ、また遊びに行くよ。俺はこれからレフィーア姉様に会い行くところでね」

「なるほど……分かりました。その時には是非ともお礼をさせて頂きたく」


わざわざ遠いシンフォニア王国からダルテシア王国まで姉に会い行くと言えば、今は誘うのを遠慮するだろうと思ってそう言うと律儀にそんなことを言われてしまう。


本当にお礼とかは別にいいんだけど……まあ、商人としては受けた恩というのは大切なものなのだろう。


特に大商会の会長ともなると、面子などもあるし、商人の貸し借りは慎重にというのが常識と前に知り合いの商人が言ってたのを思い出す。


少し買い物した時に割り引いて貰えればいいかなぁくらいの感覚でいよう。


そうして、少しすると馬車が到着したので、魔法を解除してゴブリンとオークの後始末を頼むと俺はアイリスの乗ってる馬車に戻ってこの場をあとにするのであった。


そういえば、ハーレムパーティーの人の名前は聞きそびれたなぁ……まあ、会うことがあるかは分からないけど、ハーレムパーティーの日常というのには興味があるし今度会ったら聞いてみるか。










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