第44話 有用な魔法の使い方

「ん?」

「どうかしましたか?」


アイリスと2人で話していると、ふと感知魔法に複数の反応を感知した。


それと同時に、馬車が止まり警戒態勢になる。


どうやら、トールが気づいたようで馬車をノックして入ってくる。


「殿下、気づいてるとは思いますが……」

「うん、魔物だね。それもかなりの数」

「やはり気づいていましたか」

「あと、人間も居るね。馬車……商人かな?それと護衛の冒険者といった所かな?」

「そこまで分かるんですか」


まあ、魔法での感知なのでそれくらいはね。


トールの方も沢山の魔物と人間の存在は感知してたようだ。


……というか、素でそんな感知出来るトールがおかしい気もする。


うん、イケメンは何でもありということにして、この場はスルーしておこう。


「どうします?迂回しても良いとは思いますが……」

「うーん、あんまり関わりたくはないけど、劣勢っぽいし、少し加勢しておこうか。気になることもあるし」

「了解です。じゃあ、僕が……」

「いや、面倒だし俺が魔法で片付けるよ」


心配そうなアイリスに微笑んでから、馬車から出て魔法で浮遊して行く。


トールや護衛の騎士さん達は優秀だし任せてもいいんだけど……馬車に乗ってたから軽い運動がしたいので、自分でやることにする。


「おお、やってるなぁ……」


空からだと、色々と見えるが、やはり商人らしき馬車が数台あり、それを守るように戦ってる冒険者が5人ほど居た。


男が1人で他は女性だけど……これが、俗に言うハーレムパーティーというやつなのかな?


なんとも羨まけしからんが、ハーレムパーティーのリーダーらしき男性は中々にイケメンだし、仕方ないとも言えた。


この世界はイケメンの比率が高すぎると思うんだ。


そんなアホなことを考えつつも状況の把握を優先する。


負傷してる人も居るようで、押されてるし、このまま放置するとまず間違いなく全滅だろう。


何しろ、弱いとはいえゴブリンとオークがかなりの数がおり、前衛後衛とまるで訓練したかのように別れて動いていた。


というか、弓を持ってるゴブリンとか初めて見た気がする。


遠距離攻撃で魔法使いを引き付けて、数で押す戦法か……んー、なんか魔物の行動にしては統率され過ぎてるけど、俺の感知範囲には他には反応はないし、一気に片付けてから考えよう。


さて、そうなるとどうやって倒すか……ふむ、あれを試してみるか。


思い立ったら即実行、俺は少しだけ魔力を込めてからルートを決めて、魔法を発動させる。


「『ウォータースライダー』」


激流のような水が、流れるようにゴブリンやオークを捉えていき、そしてそれは一箇所に収束して空中に大きな水のプールが完成する。


我ながら見事な水球だが、見てると泳ぎたくなる。


この魔法は、前世で見たプールにあるウォータースライダーを参考に開発してみた。


決して、俺が遊ぶために作った訳ではなく、別にこれで擬似的にもウォータースライダーをやろうとした訳じゃないからね。


まあ、それは置いていて。


初めて実践で使った割には中々の出来だ。


敵を水で拘束して攫っていき、やがてプールに落ちるようにする。


俺の魔力の込められた水は、ある程度魔力操作に長けてないと抜け出せないし、ゴブリンやオークなんかは人間と同じように、息が出来なれけば窒息して死ぬのは当然のこと。


呼吸の必要のない魔物はただ捉えることしか出来ないので、足止めか対人間用を想定していたが、このくらいの強さの魔物ならかなり魔力を抑えて使えると分かっていい収穫になった。


それに、沢山の敵を一箇所に集めることが出来て、仮に窒息で倒せなくても凍らせればいいので、俺の得意パターンに持っていきやすいのだ。


水や氷の槍を精製して串刺しにしてもいいし、その場合は真っ赤なプールの完成だ。


素材の回収も楽なので沢山の魔物を狩る時には便利に使えそうでほくそ笑む。


「これは……」

「一体何が……」


そんな俺とは異なり、冒険者達は突然の出来事に困惑しているようだ。


魔法使いの女性とハーレムパーティーのリーダーらしき男性は俺の方に視線を向けてかなりびっくりしてるご様子だが……降りて話す前にゴブリンとオークを確認しておこう。


そうして、しばらく水球を眺めていると次第にゴブリンやオークは抵抗弱くなり動かなくなる。


まあ、俺の魔力の篭った水だから普通よりもずっと早く限界を迎えてるのだか……にしても、これは本当に便利だな。


呼吸をする生き物なら、傷つけることなく余裕で倒せる。


多対一には持ってこいだね。


一体一なら、顔面に小さい水球貼り付けるのもありかも。


「んー、そろそろかな?」


感知魔法では、全ての魔物の反応が消えていた。


水球の中に俺の感知をかいくぐれる程の魔物は居ないだろうし、まず間違いなく絶命してるだろう。


周囲に他に反応はないし、ひとまずは終わりでいいかな。


後ろからは、俺の乗っていた馬車が追いかけてくる反応があるだけだし、とりあえずは馬車の人達の安全確認と治療が先か。


そう思いながら、俺はゆっくりと地上に降りて行くのであった。


にしても、この浮遊の魔法は中々楽しいなぁ。











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