第15話 報告

「ふむ、なるほど……」

「へぇー、亜人かぁ……」


帰ってから、父様とマルクス兄様に俺が孤児院から亜人の兄妹……トールとアイリスを引き取ったと報告すると、大層驚いたような表情をされた。


まあ、亜人の子供が人間の街に居ること自体稀な事だからだろう。


「事情は分かった。それで、その2人をどうするつもりだ?」

「2人とも俺の側で仕えて貰おうかと」


既に住み込みのために部屋を用意して、今は軽く研修というか、俺のお世話をしてもらう予定のアイリスには軽い仕事から覚えてもらっていた。


まあ、流石に子供にガチの労働をさせるほど俺も鬼畜ではない。


トールの方は、俺の護衛騎士のグリスに指導を任せようと思ったのだが……何やら話を聞きつけたらしい騎士団長に気に入られたようで色々と稽古を付けて貰ってるようだ。


ちなみに、アイリスは俺と同い年の6歳で、トールは11歳だそうだ。


肉体的にも成長期だし、亜人は人間よりも遥かに身体能力が高いので、トールの方はそのうちフレデリカ姉様や騎士団長の次元に到達してもそこまで、不思議はないだろう。


俺は無理だから、適度に運動するくらいに留めるけど。


いや、だって、魔法も使わずに瞬間移動したみたいな速度で動くなんて、俺には無理だからね?


それだったら、水魔法を布教する方が、楽しいしね。


「ふむ、まあ、エルの元に居る方が良いか」

「エル、その子達大丈夫なんだよね?」

「ええ、大丈夫ですよ、マルクス兄様」


今の確認は、アイリスやトールが亜人側のスパイでは?という疑念への答えだ。


人間を憎む亜人は多いらしいし、他の国ではその手の事件も無くはないと聞いたことがあった。


ただ、アイリスやトールに関してはその可能性は低いと俺は見てる。


「そっか、なら、エルに任せるね」

「ありがとうございます」


どちらにせよ、俺のように自由な第2王子の元の方が下手な所に居るよりも安全だと判断したのか、そうすんなりと受け入れてくれるマルクス兄様。


色々見据えてそうで、流石です。


「ときに、エル。孤児院の院長はどうだった?」

「良い人でしたよ。父様のことべた褒めでした」

「うむ……そう、大したことはしてないのだが、何故か好かれててな」


愛人ですか?と、聞きそうになったが止めておいた。


一夫多妻の世界だし、愛人を囲う貴族も多いそうだが、父様は母様一筋なので妻は本妻の母様1人だけだからだ。


それに、孤児院の院長先生からは父様への崇拝のような崇める感情が強めに感じれたので、愛人とかではないだろう。


「何にしても、私もまだまだのようだ。もう少し頼れる王を目指すとしよう」

「いえ、既に十分かと……」


件の院長先生の心酔具合も結構なものだが、兵士や民の様子からも父様は国王としてかなり尊敬されている。


次期国王であるマルクス兄様も、その才と容姿で既に地盤を固めてるし、本当に俺は彼らと同じ血を受け継いでるのか疑問になるレベルだ。


まあ、父様と母様のことだし俺が不義による子供という可能性は無いだろうけど、そう思うくらいにはスペック差を感じてもおかしくなかった。


「それで、初めてのお出掛けはどうだったの?」


この話は俺には任せて終わりとして、そもそもの目的であったお忍びのお出掛けに関して聞いてくるマルクス兄様。


「ええ、楽しかったですよ。街の人達も良い人達ばかりで」

「それなら良かったよ」

「あと、フレデリカ姉様お気に入りらしき店を何件か発見しました」

「フレデリカは自由だからねぇ……」


勝手に出掛けても、フレデリカ姉様の場合既にかなり強いので余程の事がないと危なくはないし、街に居る騎士も優秀なのでそこまで心配はないようだ。


まあ、それにしては、出入りっぽい店の数が多く感じたが……言わないでおくか。


「あと、お土産も買ってきました」

「そうなんだ、ありがとう。エルは空間魔法使えるから買い物にはうってつけだね」


父様とマルクス兄様用のお土産を空間魔法で別空間から取り出すと、嬉しそうに受け取って貰えた。


そういえば、こうして出掛けて家族にお土産渡したの初めてかもしれない。


修学旅行とかも、アレルギーの関係で行けなかったし、そもそも家庭環境もかなり荒んでたからなぁ……うん、今世はやっぱり凄くいい。


そうして、俺は報告を終えると、忙しそうな父様やマルクス兄様にエールを送りつつ部屋を跡にする。


お仕事お疲れ様です。



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