第12話 ケモ耳娘
「わぁ……凄いですねぇ」
思わず盛れたようなメルの声。
一体その体のどこにそんなに入るのかと思わされるくらいに料理を平らげていく女の子。
見た目的には俺と同じくらいのように見えるけど……しかし、美味しそうに食べるなぁ。
チラリと見えた顔は、なかなか可愛らしかったが、それよりもフードのテッペンが食べる度に振動してるのが気になった。
多分、亜人だから何かの動物の耳なのだろうが……はてさて、どんなものなのか興味深いものだ。
「ふぅ……」
水を飲んで、とりあえず落ち着いたようで満足そうに息をする女の子。
「お気に召したかな?」
「あ……」
途中から、完全に俺たちの存在を忘れていたのだろう、その子は俺の言葉にハッとしてから、フードを深く被って頷いた。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
「あの……私、アイリスっていいます……」
「俺は、エルダート。エルって呼んでくれればいいよ」
何か言いたそうな2人を制してそう名乗っておく。
偽名じゃないし、問題ないだろう。
「えっと……聞きたいことって?」
「うん?いや、大した事じゃないよ。孤児院での生活どう?」
そう聞くと、その子……アイリスは少しだけ間を開けてから、ポツリと答えた。
「……あんまり、楽しくない。私もお兄ちゃんもその……皆と違うから……院長先生は居ても良いって言うけど……」
「そっか」
「それに……私もお兄ちゃんも沢山食べないと死んじゃうから……」
亜人の中でも力のある種族は、その分燃費も悪いらしい。
アイリスの話からして、兄も亜人なのだろうが、先程の食いっぷりからして、孤児院で預かるにはかなりギリギリの予算に思えてしまう。
その辺も分かってるから、この子達なりに遠慮しつつも、他で食べられるものを探していたりしたのかもしれないなぁと、想像できた。
「そっか、お兄さんに会いたいんだけど、孤児院に連れてってくれない?」
「えっと……」
「心配しなくても、何もしないよ。ただ、提案があるだけだから」
「提案?」
「うん、嫌なら別に断ってくれてもいいから。どう?」
そう聞くと、アイリスは少し迷ってからこくりと頷いた。
「じゃあ、決まりだね」
「あの……さっきのお願いっていうのは……」
ん?ああ、そういえば食べさせる前に話とお願いを頼んだんだっけ。
「いや、フードを下の素顔を見せて欲しいなって。嫌だったら別にいいけど」
「でも……その……私、耳が……」
「気にしないよ。でも、無理強いしないから少しでも前向きに考えてくれたら嬉しいかな」
そう答えると、アイリスはキョロキョロと周りを見てからそっと――フードから素顔を晒した。
兎の耳だろうか?物凄くもふもふしてそうなそれも然ることながら、白い耳にピッタリな水色の髪が綺麗な美少女がそこには居た。
「可愛い……」
「え……?」
あ、つい、声に出してしまったが……まあ、いいか。
本音だし。
「あの……気味悪いと思ったり……」
「しないって。むしろ可愛くて良いと思う。嫌じゃなかったら耳触ってもいい?」
後々になって思うとかなりのセクハラ発言だが、アイリスは少し驚きつつもこくりと頷いたので俺はモフりたい衝動に任せてアイリスの柔らかいうさ耳をもふもふすることにした。
上質な手触り……手入れはそこまでガッツリしてないであろうにこれは本当に原石と言えるかもしれない。
「あぅ……」
むぅ、うちのベッドよりも良い素材で、いつまでも触ってたい良さがあった。
「あの……殿下、その辺で……」
「え?」
少し夢中になってたようで、メルの言葉に現実に戻ると顔を真っ赤にして恥じらうアイリスがそこには居た。
あぁ、確かにやり過ぎたかなぁ……
「ごめんごめん、嫌じゃなかった?」
「いえ……」
「そっか、じゃあ、孤児院に行くとしようか」
誤魔化すようにそう答えるが、亜人とは恐ろしい種族だ……よもや水教徒の俺を一時でも、もふもふの虜にさせるとは……
恥じらう乙女顔のアイリスも可愛らしいが、照れるように耳が垂れ下がってるのもなんか萌える。
やはりケモ耳が正義なのか……
そんなことを思いながら、少し高めのお会計を済ませて店を出るのであった。
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