第2話 第2王子
膨大な砂漠の中にある国、シンフォニア王国。
そこが、俺が転生した国だった。
まあ、王国とは言うが、他の国に比べたらただの小国だろう。
他国との貿易もあり、砂漠とはいえそう不自由も無く暮らせてる。
膨大な砂漠の各地には古代文明の遺跡などもあるが、それらを調査する力は我が国には無いので持て余しているというのが現状だろう。
そのシンフォニア王国の王都にはオアシスがあり、その水が住民の命なのは間違いなかった。
そのオアシスが一望できる間取りにある自室で俺は今日ものんびりと朝を迎えていた。
ベッドから降りると、着替えて鏡の前で身だしなみを整える。
鏡に写るのは、この砂漠には不釣り合いな真っ白な肌と白髪の少年の姿。
エルダート・シンフォニア。
シンフォニア王国の第2王子というのが、俺が転生した現在の姿だ。
家族からの愛称はエルだ。
今年で6歳になるのだが、どれほど外にいても日焼けしないというのが、多分今世の俺の長所かもしれない。
まあ、そのうち日焼けもするだろうが、俺と祖母以外の全員が褐色の肌なので浮いてることは否定できない。
そんなことを考えていると、コンコンと扉がノックされる。
入ってきたのは、褐色の肌の黒髪のメイドさん。
俺のお世話係のメルだ。
「おはようございます、エルダート様。本日もお早いですね」
「おはよう、メル。毎朝ありがとうね」
「いえ、当然のことですから」
基本的に、金髪や茶髪がが多めのこの世界 (らしいと聞いた) だが、このシンフォニア王国は黒髪の比率が高いので日本と変わらずにどこか落ち着く雰囲気はある。
「それで、父様達はもう?」
「はい、皆さんお待ちです」
「そっか、じゃあ行こうか」
さっさと、朝食に向かうと、ダイニングでは既に我が家のメンバーが揃っていた。
国王である父と、王妃である母。
跡取りである第1王子のマルクス兄様と第2王女であるリリアンヌ姉様、第3王女であるフレデリカ姉様の5人が朝から揃っていた。
末っ子の俺が1番最後な訳だが、俺以外の家族は皆、ほぼ黒髪の褐色肌なので真っ白な俺がかなり浮いてるがそこは仕方ないだろう。
家族に朝の挨拶をしてから、席について食事を取る。
その前に、水で喉を潤すが、この1杯が堪らなく愛おしい。
お腹を壊さない程度の冷たさに氷魔法で温度を調節して飲むのが、コツだったりする。
水を飲んでも、アレルギー反応がおきないとは……素晴らしい。
本当に素晴らしい今世だとしみじみ思う。
「エルは、相変わらずお酒でも飲んでるように美味しそうに水を飲むね」
そんな俺の様子にくすりと笑うのがマルクス兄様。
黒髪褐色の超絶イケメンな兄は現在12歳なのだが、前世とは違い、15歳で成人とされるこの世界の性質柄なのか、物凄く大人びて見える。
そのイケメンっぷりで、幼い少女から少し熟れたマダムまで幅広くモテており、自慢の兄だったりする。
「マルクス兄様は、今日はお仕事あるんですか?」
「まあね、早く父上の負担を減らしてあげたいし」
なんとも、親孝行なことだ。
「気張らずとも良いぞ、マルクス。気持ちは嬉しいがな」
そんなマルクス兄様が歳を重ねて、渋さを身につけて、キリッとしたような感じで老いた容姿をしてるのが、父様だ。
名前は、アルバス・シンフォニア。
神様のような歳の重ねたような感じもいいけど、父様みたいな感じも密かに憧れたりする。
「エルは今日も魔法の練習かしら?」
「ええ、まあ」
「そう、無理しない程度に頑張りなさいね」
そんな風に微笑む母様だが、黒髪褐色の美人さんで物凄く大人の魅力があって綺麗な人なので、母親じゃなければ少しはドキッとしたかもしれない。
名前は、アイシャ・シンフォニア。
本当に5人の子持ちなのか不思議になる位に若々しい母親だ。
この世界は、一夫多妻の傾向が強く、王族や貴族の当主はそういう人が多いが、ウチは母様1人なので、尚凄いと思う。
「じゃあ、魔法の練習終わったら剣術の稽古しようよ!」
「いえ、流石にフレデリカ姉様の稽古に混ざるのは……」
「何よ嫌なの?」
「……喜んで付き合わせていただきます」
「よろしい!」
姉にNOと言える弟ではない俺は素直に頷いておく。
第3王女のフレデリカ姉様は、現在9歳なのだが、短いショートの黒髪の活発そうな印象の美少女だ。
そして、剣の才能に恵まれており、本人も無類の剣大好きっ子なので、こうしてよく稽古に付き合わされるのだ。
まあ、身体的スペックが圧倒的に違うので、俺が鍛えられるというのが正しいかもしれないが。
将来は騎士にでもなるのだろうか?
ちなみに、マルクス兄様の双子妹である、第2王女のリリアンヌ姉様は無口な本好きな人なので、これまたタイプの違う姉妹だったりする。
まあ、俺も読書とか好きだし、話は合うんだけどね。
婚約の話もあって、そのうち他国に嫁ぐのかもしれない。
尚、現在居ない第1王女のレフィーア姉様は既に成人して他国に嫁いでおり、この国には居ないのだ。
そんな感じの家族なのだが、前世よりも賑やかで楽しい家族なので、水アレルギーが無くてこれなら幸せすぎると思うくらいだ。
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