「ショートショート」マスクしないOL2

ゆきじ

マスクをしないOL2

久しぶり、レイカよ。


 私にまた会えるなんて運がいいじゃない。私は副業としてモデルをやっているけど、実は超大手の会社で、OLをしているのよ。私って一年しか働いてないのに仕事ができる超美人OLで男性からも女性からも質問されて慕われているの。

 

 私ね、丁度、一週間ぐらい前に流行りウイルスのニグマンにかかったの。すぐ治ったし全然へっちゃら。ピンピンしているもん。入院した時のお医者さんがイケメンすぎて狙っているの。ニグマン後の定期健診もあるから、いいチャンスね。アピールはするけど、告白はしないわ。そのレベルじゃないからね。

因みにその医者の名前はサムっていうの。入院中サムに言われたわ。


「マスクをしなさい。マスクをしても美人だから。」って。部屋に来る度に、言われたけど流してきたわ。っていうかマスクをしてもしなくても私は美人よ。当然のことじゃない。そもそも、私マスクしているしね。どうしてかは後ほどね。

 

 そうしてようやく今日から仕事復帰。私がいなくて、仕事止まっていたのでは・・・。あー今日からまた忙しくなるのかしら。大変。

そんな中、私がいない間にとんでもない社内ルールができたの。

『仕事中はマスクを着用すること。』

どうやらニグマン対策らしい・・・。私は思わず崩れ落ちた・・・。

 仕方ないから直属の上司に軽く相談してみたけどダメだったわ。いつも助けているのに今私ピンチなのにダメだったわ。例外も無しみたい。本当に残念・・・。


 もぅこうなったら強行突破をするためにサムに相談してみることにした。サムは言った。

「今日は診察の日じゃないけどどうした。」

「すみません。ナースさんたち、席を外してもらってもいいですか。」

サムは黙りこみ、一分考えこんでから言った。

「まぁ、いいでしょう。今日最後の患者さんだ。話を聞こう。君たちはもうあがっていよ。」

ナースさんたちは一瞬困った顔をしたがすぐ立ち去った。


 「今日はどうした。」

「サム先生、私が入院しているときに何かあったら何でも相談してほしいとおっしゃっていたのは覚えていますか。」

「あぁ、覚えているよ。」

「サム先生が、医者になる前、天文学の道に進もうとしていたのは本当ですか。」

「あぁ、そうだ。本題は何だい。遊んでいる時間はないのだが・・・」

「違います。どうしても一つだけお願いがありまして・・・マスクをしてはいけないという診断書をどうしても書いて頂きたいのです。一度ニグマンになっているし、免疫もあるからマスクはいらないって」

サムは苦笑いをしていた。

「ニグマンは今も流行っているからマスクの義務は当たり前じゃないか。そんなことのために君に時間を割いている訳じゃない。」

レイカは泣きだした。サムは少し面倒くさそうな顔をした。

「レイカさん、すまない。何か理由があるのかい。」

「嘘みたいな本当の話で誰にも話したことがなかったのですが・・・私、本当は地球人じゃないです。」

「は?」

「私、二年前に宇宙旅行をしていて、途中で燃料がなくなって地球に墜落してしまい、その時は田んぼに運良く落ちたので、何とか無事だったの。なんとか歩けて外を散策することにしたら、皆私とおなじような外見でびっくりして」

「あ、そういえば、一時期田んぼに飛行船の跡発見って記事になっていたような。あの飛行船は君の物だったのね。そうしたら、飛行船は?」

「飛行船は折り畳み式なので」

「あの記事は、名神だと思っていたよ。とても興味深い。」

「あれ、私だったの。」

「それで?」

「サム先生から見えないと思うけど、透明な防護服と透明なマスクをしているの。そもそもマスクをしているから重ねてマスクをする必要はないの。この透明の防護服やマスクをしないといけない理由は、地球にあるかなり微細なZBを吸わないと、背中から羽が生えてしまうの。」※ZBは地球での酸素のようなもの。

「でも、君は三日間ここで入院していたじゃないか。その時はずっと監視体制だったが羽は生えていなかったじゃないか。」

「それは・・・、最大で、3日間までだったら、ZBを摂取しなくても絶えられるの。あの時もすごく貧血ぎみだったけどね。まぁ酸素マスクは少し穴が開いているからどうにかなったんだと思うけど・・・。酸素マスクは初めてだったからよくわからないわ。とにかく地球のガチのマスクだとZBが取り込めなくて立っていられないの。」

「本当にそうなのか。」

「本当なの。じゃ、仕方ない。試してみますか。本当はすごく嫌ですが・・・マスク貸してください。」


そして、10分後・・・

 

レイカは気失ってしまった。

「悪かったね、本当だったのか。診断書を書こう。その代わりにニグマン検診とは別にレイカさんの生態を知りたいから精密検査を定期的にやらせてほしい。」

「本当ですか。ありがとうございます。診断書を書いてくれるなら、検針でも検査でも何でもやってください。」

そして私は帰った。

 


 次の日、私は上司に診断書を提出して無事に受理された。(サムには大感謝ね♡)

 しかし・・・それから一ヵ月後

モデルの副業がバレてクビになった。あーあ。実は副業がダメな会社だったの。いつもはただのそっくりさんということで突き通していたのに、モデルの撮影現場にたまたま会社の偉い人が・・・。

 

  ショック


でも、私クラスならどこでも再就職できるし、ヘッドハンティングされた所も何社かある。逆に私がいなくなったら、皆が困ることぐらい目に見えているわ。あーかわいそう。

それは置いておいて、ま、サムについても私の正体を知ってしまったことだし腐れ縁ってとこね。あーあ。

 

今日はヘットハンティングされている会社へ面談に行ってくるの。勿論第一条件はマスクをしないことね。

じゃ準備できたから行くかー。きっと一発内定よ。


  じゃ今日も行ってきまーす。

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「ショートショート」マスクしないOL2 ゆきじ @yukiji-takaji

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