第47話 田舎の診療所のような

 ユイの治療をタイロンが受け入れた上で、話は続く。

 タイロンは、2人のこれからの行動が気になっているようだ。


「俺が治療を受けている間、2人はどうするのだ?」


「私は、リッチ王国に残ります。一時的とはいえ、国王が捕まったままの状態でここを離れるというのは心配ですし。」


 ミーナ自身も王国に関係がある立場であることから、少しでも役に立ちたいと考えているようだ。

 そして、リッチ王国が良い方向に変わるきっかけになれば良いとも思っているようだ。


「2人が残るのであれば、僕も残るよ。」


 カイルも答えた。

 タイロンも2人の気持ちを理解したのか、それ以上の言葉は無かった。


「じゃあ、タイロンを治療する場所まで運ぶから手伝ってくれるかしら?」


 やはり、設備の整った部屋で診察をしてもらうのが良いのだろう。


「はい。僕がタイロンに肩を貸すから、ミーナはタイロンの武器を持ってくれるかな?」


「分かりました。預かっておきますね!」


 ミーナは元気な声で返事をした。

 普段はタイロンが持っていたので気付かなかったが、斧はいつも以上に大きくて、とても重いように見えた。


「ミーナ大丈夫? 重くない?」


 カイルはミーナを気遣う。


「これくらいの重さなら、大丈夫ですよ! それよりも、ユイさん早くタイロンを診てあげてください!」


「分かったわ。私についてきて、案内するわ!」


 カイル達についてくるように伝えると、ユイはリッチ城がある方向へと歩き始めた。

 リッチ城に近づいていく。

 もしかしたら、城で診察をするのではないかと思った。

 

 だが、ユイは城に行くまでに立ち止まった。

 どうやら、目的地にたどり着いたようだ。

 その場所は城からとても近い所にあった。


 大きな病院のようなイメージを持っていたが、実際には田舎の診療所のようなものであった。


「着いたわよ。中に入って!」


「失礼します。」


 カイル達は戸惑った様子であったが、ユイの指示に従う。

 そして中に入ると、小さな部屋に机とベッドが置かれていた。


「タイロンをそこにあるベッドに寝かせてくれるかしら?」


「分かりました。」


 タイロンはカイルの手助けもありながら横になった。


「ありがとう。じゃあ、改めて診察するわね!」


 ユイは机の上に置いてあった資料などを片付けた後、タイロンに近づきながら反応を示した。

 カイルとユイは、傍にあった椅子に腰かけて待つことにした。


 診察の時間は、あっという間に過ぎていった。触診などを行った結果、怪我の程度が詳しく分かった。

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