第48話 決して広くはない
「終わったわよ。」
「ユイさん、タイロンの怪我の具合は? 大丈夫なんですか?」
ミーナは心配した様子で、質問を繰り返した。
怪我をしているタイロンよりも不安な様子を浮かべていた。
「診察してみた結果、やっぱりあばらが折れていたわ。さっきお腹の辺りを気にしていたのが、当たったみたいね。」
「それで、治るのにどれくらいかかりそうなんだ?」
タイロンが冷静に言葉を返す。
あばらが折れているにもかかわらず、痛がる素振りを見せない。
「そうね。回復するスピードは人によるけど1か月、早くても3週間は必要だと思うわ。」
「タイロンはゆっくり休んでいてよ。その間、僕もミーナもリッチ王国にいるから!」
「迷惑をかけてすまない。少しでも早く治せるように休ませてもらう。」
タイロンは申し訳なさそうに話をしながらも、前向きな気持ちを持っているようであった。
ひとまずは一安心といった所だろうか。
「ユイさん、タイロンを助けて下さってありがとうございます!」
「僕からもお礼を言わせてください。ありがとうございました!」
ミーナとカイルは、感謝を告げた。
すぐに素直な言葉で伝えることが出来るのが2人の特徴である。
「大したことはしていないわ。それに、医者として当然のことをしたまでよ。気にしないで。」
ユイは素っ気ない言葉を放ったが、嫌な気持ちを抱いたというわけではなさそうだ。
表情も怒った感じではなく、穏やかに見えた。
「ところでユイさん、どうしてこの場所は……」
「そうね、驚いたわよね。広いとは決して言えないわね。ただそれには理由があってね。あの場所が関係しているの!」
カイルの質問に答えるユイ。
ユイの指差した先にはリッチ城が見えた。
「あれは、リッチ城ですよね? 何か問題でもあったのですか?」
「正確にはリッチ城にいる、マネースキー王がね。自分が体調を崩した際に、医者がすぐに駆けつけられるように近くに建てられたの。」
「そんな理由があったのですね。ですが、建物の大きさが小さいのはなぜですか?」
「私達の住んでいるのが、リッチ王国ではないからだわ。ホープ村の人間にそこまでの待遇は必要ないと判断したんだと思うわ。」
カイルとミーナは、ホープ村で村長から聞いたリッチ王国との話を思い出した。
「そんなことがあってはいけません。私はリッチ王国のやり方が許せません! 自分達を助けてくれる人に対して、感謝の気持ちを持つどころか、王国との関係性によって縛りつけるなんて!」
「私達と同じ立場で話を聞いてくれて、真剣に怒ってくれてありがとう!」
ミーナの言葉が重くのしかかる。
ユイはミーナに対して、感謝の気持ちを告げた。
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