第45話 比べる
マネースキー王は騒いだり、大きな声を発することもなく、静かに牢屋に入った。
今までの関わり方を考えると、意外に感じた。
カイルの言葉がよほど効いたようだ。
カイル自身も、マネースキー王を傷つけるための言葉ではなく、現状を知って欲しいという願いから出た言葉であった。
「そこのお前、ミーナといったな。」
牢屋に入って、口を開いた。
先ほど名を名乗ったのにも関わらず、名前の確認をするように話しかけてきた。
「はい。何かありましたか?」
マネースキーは、ミーナに声をかけた。
ミーナも返事をする。
今さら、何の用があるというのだろうか。
「アルメスク王国はどんな所だ?」
ミーナにアルメスク王国のことについて、質問をした。
突然、他の王国のことを知りたがるとは、どのような意味があるのだろうか。
「経済面でリッチ王国と比べてしまうと、大きな差があるかもしれません。けれども、アルメスク王国は人々が前を向いて日々を過ごすことの出来る場所だと私は思います!」
ミーナは冷静に、アルメスク王国とリッチ王国との比較をする。
そして、人々がどう思っているのかも合わせて話した。
「なるほどな。わしは、どこで間違えたのだろうな……昔は、リッチ王国の者達のことを考えていたのだがな。いつしか、豊かさを求めて誠実さを失っていたかもしれないな。何をすべきかということも大事だが、何を思っているのかを理解するのも大事なのだな。」
ミーナと立場が似ていても、自分とは考え方が違うことを思い知ったマネースキー王。
昔は国民に寄り添えていたみたいだ。
だが、気付くのが遅かった。
「マネースキー王様が、理解を示してくださって嬉しく思います。しかし、先ほども申し上げましたが、これまでに多くの迷惑をかけてきたのは事実です。従って、王国審査会に報告させていただきます。」
ミーナは、王国に関わる人間としての態度を示した。
「分かっておる! どんな処分が下されても、受け入れるつもりだ」
やはり、何か話し合いのようなものが行われるようだ。
「僕は王国審査会について分からないから、どういったものなのか、聞いても良いかな?」
カイルは、ミーナに尋ねる。
タイロンやユイも分かっていないのか、興味のある反応を示した。
「勝手に話を進めてしまい、申し訳ありません。今から、お話しましょう。」
「助かるよ。」
カイル達に話していなかったことを、ミーナは謝った。
そして、王国審査会についての話をする。
「私に関係のあるアルメスク王国や、このリッチ王国など多くの王国は政府に加盟しています。しかし問題が起きてしまった際には、王国審査機構という組織が問題についての話し合いをします。その会議が王国審査会です。適切な手順を踏んだ後に、処罰が下されることになります。」
カイル達に説明をした、ミーナ。
問題の話し合いは、頻繁に行われているのだろうか。
王国の人間であれば、誰でも知っていることなのであろうか。
「話してくれてありがとう。」
これより詳しい話は、マネースキー王がいる前なので控えておく。
疑問に感じたことを、後で聞いてみようとカイルは思った。
「とりあえず、ここから離れて話をしないかしら?」
ユイは、カイル達に伝えた。
重要なことを聞かれない為にも、その方が良いだろう。
マネースキー王が逃げ出さないように、牢屋の鍵が開いていないことを確認すると、牢獄を後にした。
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