第44話 ユイへの頼み

「お前……わしに何をするんだ!」


 怪我は、かすり傷程度のように見える。

 カイルはユイを見て、合図を出す。

 すると、ユイはマネースキーに近づくと治療を始めた。

 どうして、ユイは治療を始めたのだろうか。


 

 話は、カイルとユイが玉座に向かう頃に戻る。


「ユイさん、1つお願いがあります。」


「何だろう。私に出来ることかしら?」


「まずは、話し合いをします。当然、そこで解決できれば問題はありません。ただ、相手はマネースキー王です。素直に応じるとは思えません。」


「そこが、心配だわ。」


「だから、ユイさんに手伝って貰いたいのです。僕らが話し合いを終えて、その場から逃げるとしても、最終的には捕まってしまうと思うので、僕がマネースキー王と戦います。」


「戦いを手伝うの? 私には、無理よ!」


 カイルの言葉を聞いて、ユイは戦うことを拒否をした。


「もちろん、ユイさんをマネースキーと戦わせるつもりはありません。」


「では、何をすれば良いの?」


「マネースキー王の治療をお願いしたいのです。これまで、納得することが出来ないこともありました。だからといって、それ以上のことをしてはいけないと思っています。隙を作る為の攻撃だけで、留めておきたいのです!」


「治療をするのは、医者として受け入れるわ。ただ、その後の作戦は何かあるのかしら?」


「成功するかは分かりませんが、考えがあります。」


「……良いわよ。手伝うわ。」


 ユイは少し考えて、返事をした。

 カイルのことを信用してくれているようだ。



 そして、現在に至る。


「お前、なぜわしを治療をした!」


「彼に頼まれたからですよ。」


 ユイはカイルのいる方を向いて、理由を話をした。

 治療をしていても、マネースキーは声を荒げている。


「僕達と同じ経験をして頂きます。悪く思わないで下さい。タイロン来てくれるかな?」


「分かった。」


 カイルは忠告をすると、タイロンを呼び寄せる。


「これから、マネースキー王を連れ出そうと思う。後ろから、逃げ出さないように見張ってくれないかな?」


「良いだろう。」


 タイロンとのやり取りを終える。

 ミーナとユイもついてきてくれるように、頼んだ。

 そして、マネースキー王には自分の足で歩くように指示を出した。


「なぜ、わしがお前の言うことを聞かねばならない! ふざけるな!」


 強い口調で話していたが、護衛の人達への攻撃を見たからであろうか、タイロンが後ろにつくと黙り込んで歩き始めた。


 階段を下って、リッチ城を後にする。

 少し歩くと、牢獄についた。

 カイルとタイロンが捕まってしまった場所だ。


「着きました。ここです。」


「馬鹿な奴らだ。自ら戻ってくるとは。」


 この状況でも、カイル達を見下している。

 牢獄の奥まで来ると、ようやく状況を理解したようだ。


「牢屋の中に入ってください。」


「何をしているのか、分かっているのか! わしは、この国の国王だぞ!」


「それは、僕達の言葉ですよ、マネースキー様。ここに来るまでに、兵士達はあなたを止めてくれましたか? 少なくとも、兵士達はあなたが連れ出されていることに気付いていながらも、黙っていたように僕には見えましたけれど……」


 それは、リッチ王国全体のマネースキー王への評価でもあった。

 ユイが牢屋の鍵を開けた。

 マネースキー王はカイル達を睨みながら、牢屋に入った。


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